ミニトマト、CFプチぷよ、プチぷよ、宮城県、栗原市、渡辺採種場

衝撃のミニトマト!宮城生まれのCFプチぷよ~注目の新品種はこうして誕生した。No.005

更新日:2023/07/26

「10年に一度の逸材」と呼ばれ、瞬く間に市場を席巻した人気のぶどう、シャインマスカットのように、末永く愛されるヒット品種を―。次世代のスターを生み出そうと奮闘する、日本の農林水産の舞台裏を訪ねます。極薄皮のミニトマト「CFプチぷよ」は、その果皮の薄さゆえに絶品で、それゆえに流通しづらいという希少な存在。開発を担った種苗メーカー『株式会社 渡辺採種場』を訪ねて、宮城県へ。

ミニトマト、CFプチぷよ、プチぷよ、宮城県、栗原市、渡辺採種場
渡辺採種場が開発したミニトマト「CFプチぷよ」。超薄皮で光沢のある果実が特長

トマトが苦手という人にこそ
食べてほしい、衝撃のミニトマト

「CFプチぷよ」の衝撃を、食べたことのない人に伝えるのは至難です。皮と果肉の境界がないかのような、なめらかな歯ざわり。みずみずしい果肉。フルーツのように芳醇な甘酸っぱさ。言葉では言い尽くせない、未体験のおいしさなのです。

宮川憲一(みやかわけんいち)さんが渡辺採種場に入社したのは1980年代後半のこと。「Mr.浅野のけっさく」という中玉トマトの生みの親としても知られる、浅野喜久雄(あさのきくお)さんのチームに配属されます。

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現在は品種改良の責任者を務める宮川憲一さん

当時、チームは「よそにはない、特色ある新しいトマトを」という社命に取り組んでいましたが、薄皮という基本の方向は見えていたもののおいしさとはほど遠い状況。そこから宮川さんと浅野さんの長い二人三脚の日々が始まりました。

「本当に一歩ずつですよ。収穫量や耐病性といった指標もあるけれど、どっちか迷ったら必ずおいしさを優先しようって浅野さんと誓いました。新しいかけ合わせを試しては毎日毎日試食して」。納得の味に到達した2005年頃にデビュー。さらに改良を重ねて誕生したのがCFプチぷよです。

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存在感を感じさせないほど果皮が薄いので、噛んだ瞬間の食感が驚くほどなめらか。緑色や黄色の果実のシリーズ品種も存在

「とにかく繊細で栽培が難しい。薄皮でデリケートだから、日数のかかる市場を通した流通には不向き」と宮川さん。それでも高付加価値な野菜作りに挑む意欲的な生産者を中心に、徐々に作り手が増えてきました。意外にも家庭菜園での需要も伸びており、トマト嫌いの子どもがこれだけは喜んで食べるという反響に、手ごたえも感じています。

「実を言うと、トマトの土俵では戦っていません。さくらんぼやいちごのような別種の農作物と思ってもらえたら」。そう話す宮川さんの語り口には、静かな自信がにじんでいました。

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PICK UP! >> CFプチぷよ

「CFプチぷよ」は、宮城県栗原市にある渡辺採種場の瀬峰研究農場で長期にわたる研究の末に誕生した。「赤ちゃんのほっぺ」と形容されることもある薄皮で光沢のある果実と、フルーティーなおいしさが魅力。シリーズ品種には果実が緑色の「CFプチぷよ グリーン」と黄色の「CFプチぷよ イエロー」も。いずれも量販向きではないため、直売所や百貨店などで見かけたら幸運! 栽培に興味がある方は、お近くの種苗店までお問い合わせを。

SPECIFICATION

品種/CFプチぷよ
育成地/宮城県
出荷開始/2014年
交配/ ―

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【取材ノート】
摘みたてのCFプチぷよ。3色揃うといっそうカラフルでキュート! 「グリーン」はより野趣を感じる味わいで、「イエロー」はより甘みが際立った果実感あふれるおいしさ。宮川さんに聞くと、開発の当初から赤、緑、黄色の3色のトマトを作りたいという想いがあったそう。「緑色のトマトなんて食べられるの?ってびっくりされることが多いのですが、そのギャップもあってか、実際に食べていただくと赤や黄色と負けないくらい甘くておいしいことが好評みたいで。ホッとしています」と宮川さん。

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【取材ノート】
1922 年創業の株式会社 渡辺採種場は、白菜の品種育成をはじめ多数の実績をもつ種苗会社。今回訪れた宮城県栗原市にある瀬峰研究農場では、広大な圃場や温室ハウスの中で、さまざまな野菜の品種開発や栽培の研究が行われている。

PHOTO/SHINYA SASAKI
※メトロミニッツ2023年8月号「今日もどこかで第2のシャインマスカットが生まれている。」に加筆して転載

※記事は2023年7月26日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります