更年期・更年期障害のつらい症状をしずめる方法とは?|原因や対処・治療法を徹底解説【婦人科専門医監修】

更年期・更年期障害のつらい症状をしずめる方法とは?|原因や対処・治療法を徹底解説【婦人科専門医監修】

普段気にならないのにイライラする、頭にカーッと血がのぼる、食欲がなく胃もたれする、気分が落ち込む・・・。そんな、更年期・更年期障害のつらい症状に悩む人へ、兵庫県西宮市にある「直レディースクリニック」の院長・竹村 直也さんに聞いた、更年期・更年期障害の原因や対策をご紹介。

更新日:2021/12/16

更年期・更年期障害とは

更年期・更年期障害って?

更年期・更年期障害って?

女性のライフステージにおいて、閉経を迎える45歳くらいから55歳くらいまでの約10年間を「更年期」という。この時期は、女性ホルモンの減少により、ホルモンバランスが乱れ、心身ともに不調が引き起こりやすい。さらに、職場や家庭環境にも変化が出てきて、社会的なストレスがかかりやすいときでも。それによって引き起こる不調を「更年期症状」といい、仕事や日常生活に支障が出るような重い症状のことを「更年期障害」とよんでいる。

更年期・更年期障害の原因

更年期・更年期障害の原因

更年期症状は、卵巣の働きが衰え、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌が急激に減少することにより引き起こるもの。エストロゲンとは、女性らしい体作りを助ける女性ホルモンのひとつ。健康維持に重要な役割を果たしているだけでなく、女性の体に大きな影響を及ぼしている。これに加齢に伴う身体的変化、精神・心理的な要因、社会文化的な環境因子などが複合的に影響することにより、症状がでることがあると考えられていて、女性なら誰でも起こる可能性がある。

更年期・更年期障害のセルフチェック

更年期・更年期障害のセルフチェック

更年期障害は、早めに治療をすると負担なく乗り切ることができる。以下が、更年期によく見られる症状なので、違和感を感じたらセルフチェックを。つらいときは我慢せず、専門医に相談して。

・顔がほてる
・汗をかきやすい
・腰や手足が冷えやすい
・息切れ、動悸がする
・寝つきが悪い、または眠りが浅い
・怒りやすく、すぐイライラする
・くよくよしたり、憂うつになることがある
・頭痛、めまい、吐き気がよくある
・疲れやすい
・肩こり、腰痛、手足の痛みがある

代表的な更年期・更年期障害の症状

精神神経系の症状

精神神経系の症状

更年期障害として特に多いのが、メンタル面での症状。気分の落ち込み、イライラ感や不安感、物事に対する意欲の低下、うつ、物忘れ、不眠などが多く見られる。

精神神経系の症状の例

>イライラの症状
>眠気の症状
>だるさの症状

血管運動神経系の症状

血管運動神経系の症状

前触れもなく急に上半身が熱くなってのぼせたり、顔が赤面したり、汗がとまらなくなったり・・・ホットフラッシュ”とよばれる、血管の収縮や拡張に伴っておこるこれらの症状も更年期障害の代表的なもの。症状の出方に大小はありつつも、女性の6割近くが経験するというデータもある。

血管運動神経系の症状の例

>動悸・息切れの症状
>高血圧の症状

消化器系の症状

消化器系の症状

消化器系のトラブルも更年期障害の特徴のひとつ。腸の動きをコントロールするのは自律神経であり、エストロゲンの分泌の低下や、精神的ストレスや環境の変化で自律神経が乱れにより胃弱の状態になると、消化力が弱くなって、胃もたれが起きたり、急につわりのように吐き気をもよおすことも。また、腸のぜん動運動の調子が悪くなって、下痢や便秘が引き起こることもある。

消化器系の症状の例

>吐き気の症状

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(2021年9月 N=960 オズモール調べ)

更年期障害かも、と感じることはある?

約3分の1が更年期を実感。不安の声も

20~60代までの女性にアンケートを取ったところ、更年期障害かもと思っている人が27.4%、過去にあったと答えた人が9.1%と、約3分の1が更年期を実感しているという結果に。

まだ感じていないという人からは、「いつごろ、どんな症状でやってくるのか。急になるのか」「日常生活に支障が出ないか心配」など、不安の声も多数。

いつごろから更年期を自覚するようになった?

50歳前後で更年期を自覚する人が6割以上

「いつごろから更年期を自覚するようになった?」という質問で、最も多かったのは45~49歳。次いで50~54歳、40~44歳と、個人差が大きいよう。

また更年期障害の症状を仕方のないことととらえている人も多く、約半数は誰にも相談していないという結果に。
別の病気が隠れている可能性もあるので、気になる症状があったら、婦人科を受診して。

更年期障害でどのような症状を感じる?

ホットフラッシュに悩む人が多数

汗をかく、のぼせやほてりを感じるなど、いわゆるホットフラッシュの症状に悩む人が約半数。
「コントロールが出来ないし、条件が決まっているわけではないので場所やシチュエーションを選ばないので困る」など、人前で恥ずかしかったという声が多く寄せられた。
ほかにも動悸、頭痛・めまい、吐き気、高血圧など、さまざまな症状に悩んでいるよう。

更年期・更年期障害の対策や治療

ホルモン補充療法(HRT)

ホルモン補充療法(HRT)

加齢により低下した女性ホルモンを補う治療法を「ホルモン補充療法」という。ほてりやのぼせ、発汗など、自律神経の乱れが原因の不調などの改善に役立つ。錠剤、パッチ、ジェルと投与方法はさまざま。飲む、貼る、塗る、の中から、自分が快適に感じるものを選べるのがいい。ただし、以前にかかったことのある病気などにより、この治療法が適さない場合もある。

漢方

漢方

症状が比較的軽めだったり、他の病気などでホルモン補充療法が難しいときは漢方治療をすすめられることもある。めまいや頭痛、手足の冷えの改善に役立つ「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」、のぼせやホットフラッシュなどへの対処をサポートする「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」、不眠やイライラをやわらげる「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」などがあり、服用することで血液やリンパの流れなど体全体を整える効果が期待できる。更年期障害の診断がつけば健康保険が適用されるため、自分で選ばず医師に処方してもらおう。

プラセンタ療法

プラセンタ療法

更年期障害にはプラセンタも治療薬として使われている。美容目的の場合と異なり、更年期治療に使われるのは、健康な母体の胎盤から抽出されている安全性の高いプラセンタエキス“メルスモン”。45歳から60歳までの更年期障害に対して保険適応があり、2~3回の注射を継続することで体調改善が期待できる。ただし、人間の体の一部分から作られた医薬品なため、今後の献血はできなくなる。

食事療法

食事療法

バランスのいい食事も大切。特に、積極的にとりたい2大栄養素が「ビタミンE」と「イソフラボン」。ビタミンEはホルモンバランスを整える作用があり、大豆に含まれるイソフラボンやポリフェノールもエストロゲンに似た働きをしてホットフラッシュを改善することが知られている。食事生活のサポートとして、これらの成分をサプリメントで補うのもいい。ただし、イソフラボンは、長期間であったり、高用量とることにより子宮内膜増殖症発症の増加が認められるため注意が必要。

運動療法

運動療法

心身のバランスを保てるよう日常生活も工夫したい。ウォーキングや水泳、ヨガなど、適度に有酸素運動をとりいれると自律神経の調整や気分のリフレッシュになる。また、運動を継続することで体力や持久力がアップし、ストレスの発散や睡眠リズムが整うなど、心身ともにいい変化が見られる。

生活習慣の改善

生活習慣の改善

薬による治療と並行して、生活習慣の改善指導が行われることもある。また、更年期障害のなかには、不安やうつ状態、不眠などの心理的な問題が原因で症状を悪化させている場合もあるため、心のケアも積極的に行われる。メンタル症状が重いときは抗うつ薬や抗不安剤などの精神安定剤が有効。

更年期・更年期障害のQ&A

更年期はいつからはじまるのでしょうか?

早い人で40歳くらいから症状が見られる人もいますが、一般的には、閉経を迎える45歳くらいから始まる人が多いです。>詳しく見る

20代、30代でも更年期になりますか?

更年期に似た症状は若いうちから起こることも。「若年性更年期障害」「プレ更年期」と呼ばれることもありますが、卵巣機能そのものの低下ではなく、自律神経の乱れが原因のことが多いようです。>詳しく見る

「何科」を受診すればいいのでしょうか?

まずは婦人科、更年期外来や女性外来を受診しましょう。更年期症状には、他の病気が原因で起こる症状と似ているものも多くあります。つらいと感じている原因が更年期によるものなのか、専門医の診断を受けることが大切です。>セルフチェックをする

お話をお伺いしたのは、医師 竹村 直也さん

直レディースクリニック・院長、産婦人科専門医。神戸大学病院他で産婦人科専門医として勤務したのち、2020年に直レディースクリニックを開業。「患者さんの身近にあり寄り添い、安心できるクリニック」をモットーとしていて、患者さんからの信頼も厚い。

WRITING/KANO NUMATA、ILLUSTRATION/HARUKA OSHIMA

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※記事は2021年12月16日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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