現代人の9割が乱れているという自律神経。その整え方とは?
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現代人の9割が乱れているという自律神経。その整え方とは?

更新日:2021/12/15

眠れない、疲れが取れない、頭痛や腹痛、首こりや肩こり・・・こうした不調に悩んでいるなら、自律神経が関係しているかも。特に原因がはっきりしない不調は、自律神経の乱れを改善することでやわらぐ場合が多いのだそう。どうすれば自律神経を整えることができるのか、自律神経失調症に詳しいせたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司(くでけん・つかさ)さんに教えてもらおう。

自律神経が乱れやすくなる根本要因は骨格のゆがみ

自律神経が乱れやすくなる根本要因は骨格のゆがみ

呼吸や血液循環、胃腸の消化活動など、さまざまな内臓や諸器官の活動を自動的に調節している自律神経。心身を活発に活動させるときに優位に働く「交感神経」と、心身を休ませるときに優位に働く「副交感神経」というふたつの自律神経が、状況に応じてバランスよく切り替わることで健康が保たれている。

しかしそのふたつの自律神経のバランスが乱れてうまく切り替わらなくなると、疲労、不眠、頭痛、首や肩のこり、不安感など、さまざまな不調を招くことに。

「自律神経のバランスが乱れる主な原因はストレスです。現代人は仕事や人間関係による『精神的なストレス』に加え、パソコンやスマホの使用、生活の夜型化などによる『身体的なストレス』、異常気象による気圧差や寒暖差といった『環境的なストレス』など、さまざまな種類のストレスが重なっています。そのため、現代人の9割は自律神経が乱れていると考えられます」(久手堅さん)

こうしたストレスの影響だけでなく、そもそも自律神経のバランスが不安定になりやすい根本的な要因として「骨格のゆがみ」があるのだと、久手堅さん。自律神経は脊椎(背骨)の中の脊髄を通っているため、骨格がゆがむと脊椎も変形してしまい、その中を通る自律神経が圧迫されてしまうのだそう。また、骨格がゆがんで姿勢が悪くなると、肺も圧迫されて呼吸が浅くなり、自律神経の乱れにもつながるのだとか。

「現代人はスマホやパソコンを日常的に使用しており、長時間モニターをのぞき込むために骨格がゆがんでいる人がとても多いのです。自律神経の乱れを整えるには、骨格のゆがみを改善することがより根本的な対策となります」(久手堅さん)

立ち方や座り方を見直して骨格のゆがみを改善しよう

立ち方や座り方を見直して骨格のゆがみを改善しよう

骨格のゆがみを改善して自律神経を整えるために、まずは自分の立ち方をチェックしてみよう。壁に背を向けて、かかと、お尻、肩甲骨の3点を壁につけて立ったときに、壁に頭が無理なくつき、壁と腰の間に指1本分のすき間ができているかをチェックしてみて。この2点をクリアした姿勢は、骨盤がほぼ垂直に立っていて骨盤、肩、耳が垂直線上に並んでいる理想的な姿勢なのだそう。できるだけ毎日この立ち方チェックをすることで、理想的な姿勢を体と脳が覚えていき、姿勢が改善されやすくなる。

立ち方と同様に重要なのが、座り方。まず、前述の正しい立ち方で椅子の前に立ち、骨盤が立っている状態をキープするように両手を腰に添え、骨盤と肩と耳が垂直線上に並んだ状態でゆっくり座って。座ったときに、足首とひざの角度が床に対して90度で、両足は首幅~腰幅ぐらいに開き、あごを突き出さずに視線はまっすぐ前を向いているのが理想的な座り方。パソコン作業をするときは、この姿勢をキープして視線を正面に向けたまま作業できるように、机や椅子、パソコンの高さを調節して。

さらに、スマホはパソコン以上に骨格のゆがみを招きやすいため、スマホの持ち方も見直そう。手のひらの角度を親指が上、小指が下になる状態にしてスマホを持ち、その手の肘を90度に曲げ、反対の手のひらをスマホを持つ腕の脇に挟むと、骨格への負担が軽減されるのだとか。こうした日頃の姿勢の見直しが、自律神経を整える土台となるはず。

食事の取り方を変えると自律神経を整える大きな助けに

食事の取り方を変えると自律神経を整える大きな助けに

食事を取ると、消化吸収、代謝、排泄などのプロセスを経るけれど、これらはいずれも自律神経が深く関わっている。そのため、食事の取り方を変えることも自律神経を整えるうえでとても効果的なのだそう。そこで、自律神経を整えるために重視したい食事のポイントを、久手堅さんに教えてもらおう。

●一定の時間に腹八分目をゆったりと食べる
自律神経には、日中に交感神経が優位になり、夜は副交感神経が優位になるというリズムがある。しかし、食事時間が変則的になると、自律神経の活動も変則的になってリズムが乱れやすくなる。食事時間は一定にして、就寝3時間前までに夕食をすませよう。また、食べすぎは血糖値の急上昇と急降下を招いて自律神経の乱れにつながるので、腹八分目を心がけて。1口20回くらいかんでゆっくり食べると、腹八分目でも満足できるように。

●大量の糖質摂取や空腹時の糖質摂取を避ける
一度に大量の糖質を取ったり、空腹時にいきなり糖質を取ったりすると、血糖値が急上昇してしまう。すると、血糖値を下げるために副交感神経が働き、これを繰り返すと自律神経のバランスが乱れやすくなる。糖質を取りすぎないようにし、少量の食事をこまめに取るなどして空腹になりすぎないように気をつけよう。

そのほか、ビタミンやミネラルをしっかり取ることや、自律神経のバランスを整える「セロトニン(脳内物質)」を増やすバナナ、大豆製品、乳製品、ナッツ類、魚類などをよく取ること、発酵食品を取ることなども、自律神経を整える助けとなるのだとか。疲れにくい、不調になりにくい体作りのために、できることから少しずつ取り入れてみて。

教えてくれた人

久手堅司(くでけん・つかさ)さん

せたがや内科・神経内科クリニック院長。医学博士。日本内科学会・総合内科専門医、日本神経学会・神経内科専門医、日本頭痛学会・頭痛専門医、日本脳卒中学会・脳卒中専門医。東邦大学附属医療センター大森病院などでの臨床経験をへて、2013年にクリニックを開業。「自律神経失調症外来」「頭痛外来」「肩こり・首こり外来」などの特殊外来を立ち上げ、なかでも「気象病・天気病外来」「寒暖差疲労外来」は各種メディアで話題を呼んでいる。著書に『最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方』(クロスメディア・パブリッシング/インプレス)、監修に『面白いほどわかる自律神経の新常識』(宝島社)がある。

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WRITING/TOMOKO OTSUBO

※記事は2021年12月15日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります