静岡県立美術館

VOL.39_日本のどこか編_ローカリズム~編集長コラム【連載】

更新日:2024/03/20

30時間あったら行きたいところを静かに考えてみて気がついたこと。自分が大切にしているもののこと

静岡県立美術館

どこに行きたいかを考えるとき
どうしたいかを考えていた

 なんでもモノを作るときに、その表現が知らないところで誰かを傷つけたり貶めたりしていないか、いつも考えるようにしています。それでも浅はかな僕は、ときどき誰かを知らずに傷つけ、別の誰かを不快にしてしまったりしています。世の中にはたくさんの視点や視座があり、置かれている環境があります。だからこそ想像する力を忘れないように注意深く、今日も文章を書けたらと願っています。

「30時間あったらどこにいく?」という投げかけだって、たとえば若くて健康で元気な人と、足や身体が不自由な方や、ご病気で入院されている方とでは、言葉から受けるイメージは全く違っているはずです。かといって、全方位的な視点からなにかを作るというというのはとても難しいものです。これはなるべくたくさんの立場や状況を考えてモノを作っていたいと思う、という僕自身の独白であり、想像力を忘れないための自分への戒めの言葉です。

 30時間で「どこにいくか?」という企画ですが、これは30時間という誰にとっても平等な「時間」についての特集です。僕らはみな等しく、同じ時間の中に生きています。でも僕らはみな、違う価値観を持って生きている。言い換えれば、すれ違い続けている。遠くまで出かけてもスマホだけを見て写真ばかり撮って終わる人もいるし、部屋の中でだって心を遠くまで旅立たせてあげられる人もいる。願わくばこの特集の中の「誰かの30時間」が、あなたの心にも静かな旅を連れてきてくれることを祈ります。言葉や写真が、心を凪にしてくれることがある。すれ違う僕らが、つかのま手をつなぐこともできる。たとえ旅に出なくたって。

 その問いかけをした以上、僕も「30時間でどこに行きたいか?」しばらく考えました。とてもありがたいことですが、僕は日常的に日本のあちこちの街を訪ねながら仕事をしています。そのなかでまた行きたい場所もあるし、会いたい人もたくさんいます。30時間を考えることで、その場所や、その人がたちの顔が浮かびました。でも、僕はこの30時間で家族に会いに行きたいと思いました。

 大学時代一緒に住んでいた姉と、そのころ暮らしていた町で一緒に昼ごはんを食べたい。そしてそのまま実家まで新幹線で帰り、昔みたいにのんきに昼寝をして、夕飯は実家で母の作ったごはんを父と3人で食べたい。そして翌日は死んだおじいちゃんとおばあちゃんのお墓参りをして、幼少時代からずっと内向的だった僕のそばに居続けてくれたたくさんのネコたちが埋められている家の庭でぼんやりして、30時間おしまい。

 姉はいつも僕のことをかわいがってくれて、たった一人の弟である僕をいろいろな場所に連れて行ってくれました。この年まで大きなケガや病気をすることなく生きてこられたのは、丈夫に生んで健康に育ててくれた両親のおかげです。それから部屋でプラモデルに夢中になり、休みの日も家で漫画ばかり読んでいた僕のことを「誠は集中力がある」と、否定じゃなくて肯定してくれたおばあちゃんがいなかったら、僕はこんな風に曲がりなりにも自分を信じ、今のような仕事もできていなかったと思うのです。その家族に会いに行く時間に、僕は30時間を使いたい。「いつかいきたいところ」とか「次にいきたいところ」じゃなくて「30時間」としたことで、なんだか不思議と時間がいつもより大切に感じました。

 あなたの30時間のことも、よかったら僕たちに教えてください。あなたの「30時間あったらいきたいところ」のこと。

 できればこれからはこうして、みなさんとメトロミニッツを一緒に作っていけたらと思っています。そしてそのためにSNSを上手に使えたらなと考えています。僕らは下手くそだけど、みなさんとコミュニケーションがとりたいと思って、右のページみたいなことを考えました。ぜひみんなで一緒にメトロミニッツの「豊かな暮らしのヒントはローカルの『日常』にある」という価値観をシェアしていきませんか? あなたの街のことや、あなたの旅のことも、ぜひ聞かせてください。返事を書きます。

#30時間あったらどこにいく?

あなたの30時間をシェアしてください。
メトロミニッツ誌面でご紹介します!

※メトロミニッツ2024年4月号より転載 

※記事は2024年3月20日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります