VOICE OF CHEESE 日本のチーズ職人「百人百話」 Vol.6 中国エリア 日本チーズの“こえ”に出会う旅

更新日:2019/06/04

今、着実に盛り上がりを見せている日本のナチュラルチーズ。国内の工房数は10年前の倍近くに増加し、国際コンクールで入賞を果たすチーズが続々と現れています。生乳を発酵・熟成させて作るナチュラルチーズは、自然の力と職人の製造技術のたまもの。そして何より作り手の想いが込められていることが、美味しさの必須条件です。チーズが生まれる現場から、作り手の“こえ”をお届けする本連載。

VOICE 21 広島県・庄原市「乳ぃーずの物語。」國利知史さん

(画像左)「日本の酪農の礎を築いた地から地域に根差したチーズを発信。チーズ作りの概念を取り払ったユニークな商品を揃えています。」/「乳ぃーずの物語。」國利知史さん (画像右上)國利さんが手にするのは、出汁を加えた和風チーズ「朧月」。「クインディ」のシェフ・安藤曜磁さん も興味津々(画像右下)現在製造するチーズは13種。フレッシュからハードまで幅広い

明治33年、日本初の国営種牛牧場が作られた広島県庄原市。この地で、地元の誇りとなるチーズを―。そんな想いを胸に活躍する職人がいます。

國利知史さんは、生まれも育ちもここ庄原。大学卒業後にUターン就職したホテルで、観光客を案内できる周辺スポットが少ないことに直面したのが、チーズ作りのきっかけでした。

「当時は地元に自信が持てなくて。でも歴史を学んだら、日本の酪農の礎を築いた場所と知りました。ならば生乳の加工品を、とチーズについて調べるうち、ハマってしまったんです(笑)」

退職し北海道へ渡ったのが30歳の時。名門「共働学舎」などで研修して再び帰省、まだチーズ部門のなかった現在の会社に入社します。

「きちんと地域に還元できる商品を」と2年間試作を重ねながら準備し、2013年の工房設立後は、毎朝5時に近所の牧場へ搾りたての生乳を取りに行く日々。「でも、うちが使う生乳は、放牧牛でもジャージー牛でもない。牛の種類や飼育方法で特徴が出しにくい分、どれだけ独自性を出せるかを考えています」。

例えば、チェダータイプの「オールドナナツカ」は、大正時代に市内の「七塚原牧場」で作られていたチーズのレシピを譲り受け、復刻させたもの。地域に根差したストーリーは、食べやすく穏やかな味わいと相まって、食べ手の記憶に残ります。

引退した酪農家の設備を借り受け、自社牧場を持つのが直近の目標だと國利さん。天職にたどり着いた職人のチーズは、名実ともに地域を支える存在となっています。

(画像左) 焼くと美味しい「カチョカヴァロ」も人気商品(画像右上)「ジャパンチーズアワード」や海外のコンクールなどで、受賞歴多数。安藤シェフも「ミルク感と酸味のバランスがちょうどいい」と太鼓判(画像右下)「朧月」 950円/90gは、かつおやいわし、昆布、椎茸の出汁がほのかに香る新感覚のチーズ(左)製造時にできるホエーに漬 けた状態で販売する「モッツァレラ」723円/100g(右)

乳(ち)ぃーずの物語。

TEL.0824-72-2062
住所/広島県庄原市一木町533-4
SHOP/直売あり。その他、広島県・広島市「アバンセ三越店」、三次市「三次ワイナリー」などで販売

VOICE 22 広島県・三次市「三良坂フロマージュ」松原正典さん

(画像左)「チーズを作るには酪農を知ることが大切。目指すのは、家畜が幸せになる酪農です。」/「三良坂フロマージュ」松原正典さん(画像右上)のんびり暮らす牛や山羊。人気の高い山羊のチーズは3~11月の限定販売(画像右下)「フロマージュ・ド・みらさか」 1512円/90g

若い頃に研修した海外の大規模農園のやり方に違和感を覚えたという松原正典さん。行き着いたのは、自然の中に家畜を放す“山地(やまち)酪農”でした。

緩やかな山が連なる三良坂町の土地を7年かけ開墾した放牧地には、現在、約10頭のブラウンスイス牛と30頭の山羊が暮らします。チーズ職人である前に酪農家である松原さんの信条は、「自分の理想に合わせたチーズを作るより、今ある生乳でできる味を大切にする」こと。自由に草を食べ昼寝するストレスフリーな牛と山羊の生乳から、通年約40種の商品を作ります。

「ヨーロッパは地域ごとに名産チーズがある。三良坂にもそんなチーズを」と町名を冠したシリーズは、ほのかに香る柏の葉で包んだ白カビタイプ。フランスのコンクールで複数の賞を受賞し、国際的チーズ専門誌の表紙も飾りました。「いいチーズは、まず酪農から」。その信念を体現する味わいに、世界が注目しています。

(画像上)里山の景観に溶け込む工房(画像下)かごに入れて熟成させるハードチーズ「花 かご」(右)など、種類も豊富

三良坂(みらさか)フロマージュ

TEL.0824-44-2773
住所/広島県三次市三良坂町仁賀1617-1
SHOP/直売あり。その他、広島県・広島市「アバンセ三越店」などで販売。メールでの注文も可能

VOICE 23 島根県・雲南市 「木次乳業」川本英二さん

(画像左)「食べる人の健康を願う創業者の意志を受け継ぎ、誰にでも食べやすく安全性の高いチーズを。」/「木次乳業」川本英二さん(画像右上)現在は6~7種のチーズを製造(画像右下)「オールドゴーダチーズ」 3564円/200g

昭和53年に日本初のパスチャライズ牛乳を売り出したことで知られる「木次乳業」がナチュラルチーズを手掛けたのは、今から37年前。子どもからお年寄りまで食べられる良質なタンパク源をという考えからでした。

「現在99歳の創業者、佐藤忠吉からは『食べる人を選ぶチーズは作るな』と言われました。今もその想いは変わりません」と語るのは、製造リーダー・川本英二さん。

商品は、カマンベールなどの食べやすいチーズが揃います。しかし、その中に1つだけ強い風味チーズが。川本さんが念願の長期熟成タイプに挑戦した「オールドゴーダチーズ」です。

どっしりした旨みと余韻が素晴らしい1品は、2016年「ジャパンチーズアワード」で最優秀賞を受賞。が、「プロが審査員を務めるこうした賞も光栄ですが、一般の方に繰り返し選んでもらえることが一番嬉しい」と川本さん。日常に寄り添うチーズから、誠実な作り手の人柄が見えてきます。

(画像上)スタッフは6人。1日700~800ℓの生乳を仕込む大規模な施設だが、ほとんどの工程 を手作業で行う(画像下)主力商品の「木次パスチャライズ牛乳」

木次乳業

TEL.0854-42-0445
住所/島根県雲南市木次町東日登228-2
SHOP/直売あり。その他、島根県・出雲市「出雲空港」、松江市「島根県物産観光館」などで販売

VOICE 24 岡山県・真庭市「蒜山ラッテバンビーノ」 川合省吾さん

(画像左)「人の真似はしたくない。独学で作るここだけの味でお客さんに喜ばれるのが一番の幸せです。」/「蒜山ラッテバンビーノ」川合省吾さん(画像右上)牛舎には95頭のジャージー牛が(画像右下)「スティルトン」1468円/100g

大音量でロックが流れる工房から、着古した作業着で登場した川合省吾さん、御年64歳。酪農を営む家に生まれ、幼い頃からチーズ好きだった川合さん。

チーズ作りのキャリアは実に45年に及びますが、その内35年は準備期間だったというから驚きます。「誰かに教えてもらったことはないですね。本を読んで、取り寄せて食べて、作ってみる。失敗するのが面白いんだから」。

豪快に笑う川合さんですが、チーズに最適な生乳を求めて20年がかりでジャージー牛の改良に取り組み、理想の牛の飼料のため工房周辺の水田を牧草地に変えるなど、並々ならぬ情熱をチーズへ注いできました。

そんな職人気質が如実に表れるのが、自身が手掛けるチーズの美味しさ。例えば、イギリス原産のブルーチーズ「スティルトン」がベースのタイプは、濃厚ながらも上品で、ミルク感たっぷり。優しさを湛えた味わいに、遠方から通うファンがいるのも頷けます。

(画像上)1日約80ℓの生乳を1人で仕込む。常時約15種のチーズが揃うが、飽くなき探求心からレパートリーは数えきれない(画像下)牧歌的な高原に佇む工房

蒜山(ひるぜん)ラッテバンビーノ

TEL.0867-66-2658 
住所/岡山県真庭市蒜山富山根681-1
SHOP/直売あり。その他、岡山県・真庭市「ひるぜんワイナリー」、神奈川県・小田原市「鴨宮かのや酒店」などで販売

【東京でも4人のチーズが買えます!】SHOP|清澄白河「チーズのこえ」

今回紹介した4つの工房のチーズを東京で購入するなら、 日本で唯一の国産ナチュラルチーズ専門店「チーズのこえ」へ。チーズコンシェルジュが選んだ約40工房、年間 300種類以上のチーズを取り揃えています。

TEL.03-5875-8023
住所/東京都江東区平野1-7-7 第一近藤ビル1F
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休(2018年12月31日~2019年1月11日までお休み)

【終了しました】2019年2月23日(土)開催! 中国エリアのチーズを味わうディナーイベント

イベント名
共創料理 with クインディ
開催場所
クインディ(東京都渋谷区上原2-48-12 東洋代々木上原コーポ101)
開催日程
2019年2月23日(土)
開催時間
11:30~14:30(予定)
料金
3000円(ウェルカムドリンク、チーズ食べ比べ、全5皿のコース)
募集人数
30名(抽選) ※着席スタイル
メトロミニッツWEB「一流の料理人がいる名店案内」に加盟するレストランと、日本各地の生産者とのコラボレーションによるイベント「共創料理」。第6弾は取材陣とともにチーズ工房を訪れたイタリア料理店「クインディ」の安藤曜磁シェフが腕を振るいます。まずは「乳ぃーずの物語。」の國利さんのお話をお聞きしながら、ウェルカムドリンクとチーズの食べ比べを。その後、安藤シェフがそのチーズを使用して作る全5皿の特別コースが登場します。
メトロミニッツ「仕事のおやつ」特集

仕事のおやつ

デジタル雑誌
購入はこちらから

後援:独立行政法人 農畜産業振興機構「国産チーズ競争力強化支援対策事業」

Photo 松園多門 Text 唐澤理恵
※メトロミニッツ2019年2月号「仕事のおやつ」特集の記事転載
※本ページで記載の価格は全て「チーズのこえ」の販売価格となります
※掲載店舗や商品などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください

※記事は2019年6月4日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります