19世紀後半の、近代化と文化復興を経た都市に宿る光と影
スペイン、カタルーニャ自治州の州都バルセロナは、19世紀半ばに都市の拡張計画で街路が整備されるなど近代化が進み、1888年に万国博覧会も開催されて国際的な都市となった。
また、カタルーニャ独自の言語と文化の復興運動「ラナシェンサ(カタルーニャ語でルネッサンスの意味)」も、このころ盛んに。第1章「都市の拡張とバルセロナ万博」では、当時の様子がうかがえる作品を展示する。
19世紀の後半になると、富を得たブルジョワジー(中産階級)は、競って豪華な邸宅を建設。今もある名建築は、いずれも当時のものだとか。室内には贅沢な工芸品や甘美な絵画が飾られる一方で、生活格差に不満を持つ労働者階級は暴動を起こすなど、社会には光と影が混在。第2章「コスモポリスと光と影」には、当時の「光」であった作品が並ぶ。
パリへの憧れと新様式の誕生。ピカソが通う文化人カフェも
19世紀末になると、多くの芸術家がパリへの憧れを抱くように。バルセロナ出身の画家、ラモン・カザスとサンティアゴ・ルシニョルは、パリのモンマルトルで2年間の共同生活を送った後、ルシニョルがバルセロナ近郊で美術・音楽・演劇のジャンルを超える総合芸術をめざす「ムダルニズマ祭」を主宰する。
ムダルニズマはカタルーニャ語で「近代主義」の意味。バルセロナを中心に興ったこの芸術様式は、アール・ヌーヴォーや中世の様式からも影響を受けて、建築、文学、美術などへ広く波及。第3章「 パリへの憧憬とムダルニズマ」では、当時の様式を紹介する。
さらに、パリのカフェ「シャ・ノワール(黒猫)」からヒントを得た2人は、仲間とカフェ「四匹の猫(アルス・クアトラ・ガッツ)」を開く。第4章はこの「四匹の猫」が舞台に。
芸術家や知識人の溜まり場となった店は、やがてカタルーニャ文化の発信地となり、常連だった若き日のピカソはこの店で初の個展を開催する。
芸術の眼差しは地中海文明から前衛、そして内戦の悲しみへ
19世紀末にスペインの中央政府と対立したカタルーニャでは、民族性を重視する傾向が強くなる。芸術では、かつて繁栄した地中海文明に回帰する動き「ノウサンティズマ(1900年代主義)」が誕生。当時の芸術を、第5章「ノウサンティズマ―地中海へのまなざし」で紹介する。
1920年代以降は、ピカソに続いてミロやダリもパリに進出。やがて、シュルレアリスムの中心的存在となる。建築界でも前衛的な動きが活発に。
その後、1936年7月におきたスペイン内乱では、反乱軍とカタルーニャを含む人民戦線軍の戦いで、バスク地方のゲルニカが反乱軍から攻撃を受け、多くの犠牲が出た。この衝撃に、ピカソをはじめとする芸術家たちは立ち上がる。第6章「前衛美術の勃興、そして内戦へ」は、この時代の芸術と社会の動きに注目する。
1850年代から1930年代後半の約80年は、激動の時代だったけれど、カタルーニャ芸術が最も成熟した時期でもある。歴史に照らしながら、時系列でアート鑑賞を楽しもう。
展覧会オリジナルや輸入グッズでバルセロナを旅した気分に
展覧会限定のオリジナルグッズは、今回のためにバルセロナ在住のデザイナーに依頼してデザインされたものだとか。展覧会のタイトルや出品作家名と、20世紀初頭の建築「カザ・バッリョー」の組み合わせがスタイリッシュ。
「トートバッグ(白・黒)」(各2200円)や、裏と表で白黒反転の柄になっている「バルセロナフラワー柄 ミニノート」(550円)、「チケットフォルダー《カザ・バッリョー》」(495円)などがある。
また、今回の展覧会に特別協力しているカタルーニャ美術館のショップから輸入したグッズも販売。特徴的なのは、バルセロナを代表するトレンカディス柄(割れたタイルを組み合わせたもの)をあしらった小物たち。「キーリング」(660円)や「マグネット」(880円)などが揃う。
ガウディの作品群のひとつ「グエル公園」の人気オブジェを模した「グエル公園のトカゲ(ミニチュア)」(1650円)も、現地の気分を味わえるグッズ。展覧会の思い出とともに、バルセロナを旅した気分になれるかも。
イベントDATA
- イベント名
- 奇蹟の芸術都市バルセロナ ガウディ、ピカソ、ミロが愛したカタルーニャの熱気
- 開催場所
- 東京ステーションギャラリー
- 会期
- 2020/2/8(土)~4/5(日)
- 開館時間
- 10:00~18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 月曜日(2020/2/24、3/30は開館)、2/25(火)
- 入館料(前売)
- 一般 1300円(1100円) 高校・大学生 1100円(900円)
※中学生以下無料
※「東京駅周辺美術館学生無料ウィーク」2020/3/1(日)~3/15(日)は、受付にて本人の学生証提示で無料
- 問い合わせ
- 03-3212-2485
- ※ページ内画像の無断転載禁止
- ホームページ
- 奇蹟の芸術都市バルセロナ 公式ホームページ
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WRITING/ YOSHIDA (はちどり)