奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド  PC
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若冲や国芳の個性豊かな名作が集結!上野・東京都美術館の「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」

更新日:2019/01/07

2019年2月9日(土)から4月7日(日)まで、上野の東京都美術館では江戸時代の「奇想の絵画」の決定版とも言える展覧会「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」を開催。伊藤若冲をはじめ、岩佐又兵衛、狩野山雪、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の代表作を一堂に集めて、それぞれに個性的で奇想天外な江戸絵画の魅力を紹介する。豊かな発想で描かれた非日常の世界は、現代でも新鮮!

歌川国芳 《宮本武蔵の鯨退治》 大判錦絵三枚続 弘化4年(1847)頃 個人蔵

奇想の系譜展@東京都美術館 若冲
左/伊藤若冲 《紫陽花双鶏図》 絹本着色 一幅 139.4×85.1cm 米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション 右/伊藤若冲 《梔子雄鶏図》 絹本着色 一幅 85.8×43.1cm 個人蔵

書籍で再評価された岩佐又兵衛や一大ブームとなった若冲

展覧会は、1970年に出版された美術史家・辻惟雄氏の書籍「奇想の系譜」に基づくもので、それまであまり評価されていなかった江戸の絵師たちを再評価した本は、今でもロングセラーに。このなかで紹介された6名に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の厳選した作品ラインナップを楽しめる。

伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)は、写実と幻想を巧みに組み合わせて、精緻な花鳥画や自在な濃淡による水墨画など、多彩な作品を数多く遺した絵師。今回は、近年見い出されたという最晩年の初公開作品などもあるそうで、若冲ファンは見逃せない。

また、戦国武将の子として生まれた岩佐又兵衛(いわさまたべえ)も、この本によって再評価された絵師のひとり。その最高傑作と言われる重要文化財の絵巻《山中常盤物語絵巻》の第四巻、五巻や、初公開の屏風絵も展示される。

奇想の系譜展@東京都美術館 蕭白
曽我蕭白 《雪山童子図》 紙本着色 一幅 169.8×124.8cm 明和元年(1764)頃 三重・継松寺

鬼才・蕭白のインパクトと禅僧・白隠のグラフィックセンス

個性的な表現と言えば、18世紀の京都画壇で異彩を放った鬼才・曽我蕭白(そがしょうはく)もはずせない。中国の仙人や聖人など伝統的な故事を多く描いているけれど、独創的で狂気に満ちた作品は一度見れば忘れられないインパクトがある。重要文化財の《群仙図屏風》は、辻氏が「奇想の系譜」を執筆するきっかけのひとつでもあるとか。同時期に描かれた《 雪山童子(せっせんどうじ)図》も、群青と真紅の対比が生々しい。

蕭白や若冲など奇想の画家たちの起爆剤になったとされるのが、17世紀に生まれた禅僧・白隠慧鶴(はくいんえかく)。彼の書画は仏の教えを伝えるためのものながら、ユーモラスで軽妙な筆致や大胆な構図は、今見てもグラフィックのセンスにあふれている。

奇想の系譜展@東京都美術館 山雪
狩野山雪 《梅花遊禽図襖絵》 紙本金地着色 四面 各184.0×94.0cm 寛永8年(1631) 京都・天球院 重要文化財

芦雪の遊び心あふれる趣向や理知的な山雪の幾何学構図も

18世紀の京都画壇を代表する絵師・円山応挙に師事した長沢芦雪(ながさわろせつ)は、大胆な構図やクリエイティブな仕掛けで独自の画境を切り開いた才人。エンターテイメント性あふれる個性的な作品が多数遺る。例えば重要文化財の《白象黒牛図屏風》は、右隻の大きな白い象と黒い二羽のカラス、左隻の大きな黒い牛と白い仔犬が、それぞれに大小と白黒の対比を表した趣向が面白い。

江戸中期の京都画壇で「京狩野」派として活躍した狩野山雪(かのうさんせつ)は、伝統的なモチーフを扱いながら、垂直や水平、二等辺三角形を強調した理知的な幾何学的構図が特徴的。日本で最初の本格的な画家伝「本朝画史」の元になる資料を作った知性派でもある。

奇想の系譜展@東京都美術館 其一 
鈴木其一 《百鳥百獣図》 絹本着色 双幅 各138.0×70.7cm 天保14年(1843) 米国・キャサリン&トーマス・エドソンコレクション

同時代を生きた江戸琳派の其一と人気浮世絵師国芳

江戸琳派の元祖・酒井抱一の忠実な弟子であった鈴木其一(すずききいつ)は、師の没後に個性的な作風に傾いてゆき、やがて江戸琳派の流れの中でも異彩を放つようになる。今回は、アメリカから初の里帰りを果たした《百鳥百獣図》も登場。

其一より1才年下の歌川国芳(うたがわくによし)は、浮世絵師として人気を博した。江戸幕府の倹約令によって浮世絵や美人画が取り締まられると、理不尽な弾圧をかいくぐるような機知に富んだ作品を発表して庶民の高い支持を得たという。コミカルな戯画や美人画、風景画などにも近代的な感覚が取り込まれていて、近年さらに人気が高まっている。

豊かな発想と高い描写力を持った奇想の画家たちの作品にふれて、江戸絵画の新しい魅力を発見しよう。

奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド ポスター画像

イベントDATA

イベント名
奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
開催場所
東京都美術館 企画展示室
会期
2019/2/9(土)~4/7(日)
開室時間
9:30~17:30
※会期中の金曜、3/23(土)、3/30(土)、4/6(土)は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
休室日
月曜、2/12(火)
※ただし、2/11(月・祝)、4/1(月)は開室
観覧料(前売)
一般1600円(1400円)、大学生・専門学校生1300円(1100円)、高校生800円(600円)、65歳以上1000円(800円)
グッズセット券
A「奇想手ぬぐい」セット券2500円、B「奇想ワッペンパスケース」セット券5500円、C「国芳ミニがま口」セット券2800円
※各1000セット限定、販売は2019/2/8(金)まで
※会期中、展示替えあり
ホームページ
奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド 特設サイト

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※記事は2019年1月7日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります