“印象派の父”マネの人生最後の大作が約20年ぶりに来日
見どころのひとつは、やはり“印象派の父”と称された画家エドゥアール・マネの人生最後の大作《フォリー=ベルジェールのバー》が約20年ぶりに来日すること。
「フォリー=ベルジェール」は、歌や踊りなどの出し物で人気を博したパリのミュージックホールの名前。マネはこの店に何度も足を運んでいるけれど、制作する時にはアトリエにバーカウンターの一部を再現して、シュゾンという名のバーメイドをモデルにして描いたそう。
彼女の後ろにある大きな鏡には、にぎやかな観客席やショーの一端が映り込んでいて、ホールが盛り上がっている様子がうかがえる。鏡によって作られた複雑な空間を、卓越した技術で1枚の絵に込めた、マネの画業の集大成といえる作品になっている。
画家の言葉や時代背景など名画を読み解く鑑賞法を提案
コートールド美術館は、世界有数の研究機関・コートールド美術研究所の展示施設でもある。そこで、研究という側面に注目して、“名画を読み解く”ためのさまざまなアプローチを3章に分けて提案。
第1章「画家の言葉から読み解く」では、画家が家族や友人らに宛てた手紙などから鑑賞の手がかりをみつける。例えば《アンティーブ》を描いたクロード・モネは、南仏アンティーブの風景に魅了され「白、ピンク、青、すべてがこの夢のように美しい空気の中に包まれている」と手紙を送った。画家が描きたかった「美しい空気」を感じ取れたら、作品にもっと共感できそう。
さらに、第2章「映された時代から読み解く」では作品の細部に描かれた時代背景を、第3章「素材・技法から読み解く」では科学的な調査・研究で明らかにされた成果を深堀りする。
コレクションの始まりはルノワールが描いた最晩年作
コートールドがフランス絵画の収集を始めたのは、1922年9月から。この時に購入した記念すべき2点のうちの1点が、ルノワールの最晩年の《靴紐を結ぶ女性》だったという。コートールドは、ルノワールを近代美術の流れを代表する画家のひとりと考えていたことが分かる。
《桟敷席》は1874年の第1回印象派展に出品された作品で、劇場の桟敷席といういかにも近代都市パリらしい場面を描いている。この華やかな作品から最晩年のものまで、ルノワールに関しては幅のある珠玉のコレクションが築かれた。
展覧会で魅了され、最も多く集めたセザンヌ・コレクション
コートールド美術館はまた、世界有数のセザンヌ・コレクションを有していることでも知られる。作品の質の高さはもちろん、描かれた年代の幅も広く、風景画や人物画などジャンルも多彩。コートールドは、1922年にある展覧会でセザンヌの作品に出会ったときのことを「魔法のような魅力に気づいた」と記している。
この翌年から油彩画や水彩画などを次々と購入し、コレクションの中ではセザンヌの作品を最も多く購入したそう。今回は、コートールド自身が購入したものを含めてセザンヌの作品だけで10点を展示する。
《大きな松のあるサント=ヴィクトワール山》は、セザンヌが繰り返し描いた故郷の山の風景。この絵は、大正初期に美術雑誌で図版が掲載され、日本の画家たちに大きな影響を与えたという。
ポスト印象派作品の収集はゴーガンの絵との出会いから
コートールドがポスト印象派の作品に関心を持ったきっかけは、1922年にロンドンで開催された「フランス美術の100年」展。この年にコートールドは最初のポスト印象派の作品として、ポール・ゴーガンの2点の油彩画を購入している。その後も情熱的に収集を続け、現在では英国随一のゴーガン・コレクションとなっている。
《テ・レリオア》は、ゴーガンが移り住んだタヒチの言葉で「夢」のこと。10日ほどの短い期間で制作された絵は、エキゾティックで装飾性の高い画面の中に想像の世界が豊かに表現されている。
高い審美眼を持ったコレクターの収集品を前に、作品との豊かな対話を楽しんで。
イベントDATA
- イベント名
- コートールド美術館展 魅惑の印象派
- 開催場所
- 東京都美術館 企画展示室
- 会期
- 2019/9/10(火)~12/15(日)
- 開室時間
- 9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
※金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
- 休室日
- 月曜日、9/17(火)、24(火)、10/15(火)、11/5(火)
※ただし、9/16(月・祝)、9/23(月・祝)、10/14(月・祝)、11/4(月・休)は開室
- 観覧料(前売)
- 一般 1600円、大学生・専門学校生 1300円、高校生 800円、65歳以上 1000円、中学生以下無料
- ホームページ
- コートールド美術館展 魅惑の印象派 公式サイト
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