コレクションの始まりは神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世
今回は、オーストリアと日本の国交樹立150周年を記念する展覧会でもあり、ウィーン美術史美術館協力のもとに開催。会場は5章7セクションから構成され、コレクションの歴史を時代とともに紹介する。
第1章「ハプスブルク家のコレクションの始まり」では、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世(1459~1519)にゆかりの絵画や武具、工芸品などを展示。マクシミリアン1世はコレクションの基礎を作った人物で、ここではその肖像画や、実際に着用した甲冑(かっちゅう)なども展示。「中世最後の騎士」と呼ばれた皇帝の、勇姿を想像してみるのもいいかも。
また、コレクションの構築に大きな役割を果たした、大公フェルディナンド2世(1529~1595)の大規模な収集についても紹介する。彼が集めた世界の工芸品を見れば、どれほどその収集が情熱的だったか伝わるはず。
魔術や錬金術に熱中した史上最高の変人のコレクション!?
第2章「ルドルフ2世とプラハの宮廷」では、ヨーロッパ史上でも稀代のコレクターとして有名な神聖ローマ皇帝ルドルフ2世 (1552-1612)のコレクションに注目。ルドルフ2世はドイツのルネサンス期の画家・デューラーや16世紀のフランドルの画家・ブリューゲルを好み、植物などの「寄せ絵」で知られる奇想の画家・アルチンボルトなどお気に入りの画家たちの作品を数多く収集している。
彼は首都をウィーンからプラハに移して、コレクションを特別な保管場所に集めたというが、政治には無関心で、魔術や錬金術、天文学に熱中していたそう。この章は、そんなちょっとオタクなイメージのある史上最高の変人・ルドルフ2世が集めた絵画をはじめ、アジア由来の珍しい品々や、貴重な版画関連のコレクションを紹介する。
偉大なコレクターたちが揃った17世紀は収集の黄金時代
一番コレクションの充実した時代を3つのセクションに分けて展示する、第3章「コレクションの黄金時代:17世紀における偉大な収集」は、見どころも多い。
16世紀の半ばにオーストリア系とスペイン系に別れたハプスブルク家では、お互いの近況を知らせあう手段として肖像画を利用していたという。ベラスケスの晩年の傑作《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》も、のちに神聖ローマ皇帝となるレオポルト1世(1640-1705)に幼い許婚の姿を伝えるために制作されたもの。いわば、花嫁のポートレートというわけ。
この時期にインスブルックを拠点にして収集を行った大公フェルディナンド・カール(1628~1662)も、重要なコレクターのひとり。特に16~17世紀のフィレンツェ派の作品を多く集めている。
最後のセクションでは、ウィーン美術史美術館の絵画コレクションの礎を築いた大公レオポルト・ヴィルヘルム(1614~1662)のコレクションを展示。こうしてみると、ハプスブルク家ゆかりの人々のなかには、重要なコレクターが多く存在することが分かる。
18世紀のハプスブルク家の肖像には国母も悲運の王妃も
第4章「18世紀におけるハプスブルク家と帝室ギャラリー」では、優れた政治的手腕で広大な領土を治め「国母」と慕われた皇妃マリア・テレジア(1717~1780)と、その末娘マリー・アントワネット(1755~1793)など、激動の時代に生きた人々の肖像画をメインに紹介する。
マリー・アントワネットといえば、政略結婚でフランス王妃となり、フランス革命でギロチンの露と消えた悲運のヒロイン。彼女もまた、ハプスブルク家の一員だと思うと、この名門家がヨーロッパの歴史に深く関わっていることが実感できる。
また、18世紀には、現在の美術館展示につながる「帝室ギャラリー」も整備。芸術を一般に公開して、人々を啓蒙しようという活動が始まったことは、歴史的に見てもかなり興味深い時代と言える。この章では、そういった美術館展示の歴史についても紹介してゆく。
名門ハプスブルク家の華やかな時代が終わりを迎えるまで
最後の第5章「フランツ・ヨーゼフ1世の長き治世とオーストリア・ハンガリー二重帝国の終焉」は、栄華の果てに終焉を迎える神聖ローマ帝国を取り上げる。
18世紀の終わりに始まったナポレオン戦争をきっかけに神聖ローマ帝国は解体され、その後1804年に誕生したのがオーストリア帝国。1867年には「オーストリア・ハンガリー二重帝国」となるけれど、第一次世界大戦(1914~1918)に敗戦して崩壊し、ハプスブルク家の栄華も終わりを迎えることに。
最終章では、この黄昏の時代にスポットを当て、「オーストリア・ハンガリー二重帝国」で約60年にわたって国を治めたフランツ・ヨーゼフ1世(1830~1916)とその王妃エリザベト(1831~1898)の肖像画やゆかりの品を中心に展示する。なかには、国立西洋美術館が所蔵しているものも。
時代ごとに展示される世界屈指のコレクションの数々を、個性豊かなハプスブルク家のメンバーたちとともに、楽しんで。
イベントDATA
- イベント名
- 日本・オーストリア友好150周年記念 ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史
- 開催場所
- 国立西洋美術館
- 会期
- 2019/10/19(土)~2020/1/26(日)
- 開館時間
- 9:30〜17:30
※金・土曜日は20:00まで。11/30(土)は17:30まで
※入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 毎週月曜日(ただし11/4、1/13は開館)、11/5(火)、12/28(土)〜2020/1/1(水)、1/14(火)
- 観覧料金
- 一般1700円、大学生1100円、高校生700円
※一般前売りの発売は8/10(土)
- 電話番号
- 03-5777-8600 ハローダイヤル
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