絵描きを夢見た子ども時代からのアートとの関わりを紹介
今回は、絵本原画をはじめ、ポスターなどのグラフィック・デザイン、絵画、彫刻、アニメーション素材まで、多彩な作品約200点を展示して、絵本作家やアート・ディレクターとしての仕事ぶりを紹介する。
会場は、レオーニの人生をめぐる4つのキーワードをもとに構成。第1章では、子どもの頃から画家を夢見ていたレオーニの、アートとのかかわりをテーマに、自分の思いを込めた絵本原画などを展示する。例えば『マシューのゆめ』では、ねずみ一家の息子・マシューが、美術館へ出かけたことをきっかけに絵描きになる夢を持つ。この作品はレオーニ自身の幼い頃の夢をもとにしたもので、マシューはまるで作家そのもの!
さらにここでは、初めての個展に出品した日本初公開の作品や、子ども時代の思い出から生まれた油絵などもあわせて展示。アートとともに成長したレオーニの足跡をたどる。
自分が自分であることをポジティブに描いた絵本たち
オランダで生まれ、両親の都合でイタリアなど欧米諸国を転々としたレオーニは、多様な文化にふれながら成長する。その一方で、「自分とは何者なのだろう?」という疑問も抱き続けていたという。
第2章では「自分探し」をテーマにした作品を集める。『コーネリアス』は立って歩けるという変わったワニの話で、いつも冷ややかな態度の仲間(普通のワニ)にいらだって旅に出る。『アレクサンダとぜんまいねずみ』では、人間に嫌われる台所ねずみのアレクサンダが、玩具としてかわいがられているぜんまいねずみのウィリーをうらやましがる。でも、どちらも、ありのままの自分を受け入れる物語となっている。
この章では特別コーナーとして、『スイミー』の原画も紹介。私たちの知っている絵本とは少し違うので、絵本のパネルと比較しながら見ると面白い。
平和の大切さを描いた絵本や最初の絵本の誕生秘話も
1939年、第二次世界大戦中にユダヤ系のレオーニは、イタリアからアメリカへ亡命している。20世紀の戦争の時代に生きたレオーニにとって「平和」は重要なテーマ。そこで、第3章では「平和の大切さ」を表現した絵本を集める。
『あいうえおのき』は、あいうえおの木に暮らす文字たちが、風に飛ばされないように手をつないで言葉を紡ぎ出し、やがて平和のメッセージを作るお話。ここでは画面上の葉っぱにスタンプが使われている。
会場では、レオーニの孫であるアニー・レオーニと、レオーニを恩師と仰ぐ『はらぺこあおむし』などで知られる絵本作家エリック・カールが、グラフィック・デザイナーとしてのレオーニについて対談する映像も公開。多彩なアプローチで、レオーニの業績を振り返る。
豊かな想像力と細密な描写で描いた不思議な絵本や油絵
第4章で紹介するのは、「見るものすべてに物語を感じる」というレオーニが、イマジネーションを膨らませて描いた作品たち。ここではリアルとフィクションが入り混じった絵本や、実在しない人も描く「想像肖像」シリーズの油絵などを展示する。
「平行植物」というのは、レオーニがつくり出した架空の植物のことで、これもシリーズになっている。レオーニはイタリア中部のトスカーナにある自然豊かなアトリエで、油絵、精密な鉛筆画、ブロンズ彫刻などを制作したけれど、「平行植物」もそのひとつ。
《向月葵(ジーラ・ルーナ)》は、《向日葵(ジーラ・ソーレ:ひまわり)》をもじった想像上の花で、月に向かって咲く幻想的な姿がおとぎ話のようにも見える。
欧米を移動し続けた波乱の生涯を、多彩な作品と重ね合わせてみると興味深い。
レオーニのデザインがキュートな展覧会限定グッズの数々
ミュージアムショップには、展覧会のオリジナルグッズとして、レオーニのイラストをデザインしたさまざまなグッズが揃う。
例えば、レオーニが孫のために作った最初の絵本で、子どもの絵本に始めて抽象表現を持ち込んだとされる『あおくんときいろちゃん』は、素敵な「トートバッグ」(全2種類:もう1種類は『フレデリック』、各3900円)や「Tシャツ」(全2種類、各4サイズ、3499円)などで登場。明るいカラーリングのモダンなデザインがかわいい。
ほかにも、絵本の印象的なシーンを使ったグッズが多数あり、イラストレーターやグラフィック・デザイナーとして活躍したレオーニらしい仕上がりに。「みんなのレオ・レオーニ展」を満喫したら、自分へのお土産「私だけのレオ・レオーニ」を選んでみては?
イベントDATA
- イベント名
- みんなのレオ・レオーニ展
- 開催場所
- 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
- 会期
- 2019/7/13(土)~9/29(日)
- 開館時間
- 10:00~18:00(入館は17:30まで)
- 休館日
- 月曜日(ただし7/15、8/12、9/16、9/23は開館)
- 電話番号
- 03-5777-8600(ハローダイヤル)全日8:00〜22:00
- 観覧料(前売)
- 一 般:1300円(1,100円)、大学生:900円(700円)、高校生以下:無料 ※学生証の提示が必要
- ホームページ
- みんなのレオ・レオーニ展 特設サイト
DATA
- スポット名
- 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
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