19世紀末のウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト。華やかで官能的な作品は、今も人気が高い。昨年迎えた没後100年と、さらに日本とオーストリアの友好150周年を記念して、東京都美術館では「クリムト展 ウィーンと日本 1900」を開催する。今回は、巨大な壁画の精巧な複製が展示されるのも見どころのひとつ。また、同時代の画家たちの作品も見られるので、世紀末に咲いた華麗なウィーン美術を堪能して。
グスタフ・クリムト《ベートーヴェン・フリーズ》(部分)1984年(原寸大複製/オリジナルは1901-1902年) ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館(C)Belvedere, Vienna, Photo: Johannes Stoll
円熟期の傑作!全長34メートルの巨大な壁画を再現展示
2019年4月23日(火)から 7月10日(水)まで、上野の東京都美術館では「クリムト展 ウィーンと日本 1900」を開催。国内で過去最多となる25点以上のクリムトの油彩画を紹介する。
初期の頃にアカデミックな作風でその才能を認められたクリムトは、劇場の壁画装飾などで有名に。1897年に34歳で保守的なウィーン造形芸術家協会を脱退して「ウィーン分離派」を結成すると、初代会長として多くの展覧会を開催しながら、新しい造形表現を追求したという。
今回、その精巧な原寸大の壁画が再現展示される《ベートーヴェン・フリーズ》は、40歳の頃に手がけたもので、全長34メートルを超える巨大な作品。ベートーヴェンの交響曲第9番に着想を得た壁画は、幸福を求めて戦う騎士が楽園にたどり着くまでが絵巻物のように描かれている。金やガラス、真珠層などの輝きに彩られた作品は、まさにクリムトの「黄金様式」の時代を代表する傑作。ぐるりと展示された迫力いっぱいの壁画を観ていると、壮大な交響曲が聴こえてくるよう。
聖書や神話も親しい友人も。多彩な表現で描き出す女性像
クリムト作品の魅力は、華やかな装飾性と世紀末らしい官能的なイメージをあわせ持つ独自のスタイル。とりわけ、女性像を描くのが得意で、神話や聖書に登場する女性を艶やかに表現したり、身近な女性をモデルにした肖像画なども多く制作している。
例えば《ユディトⅠ》は、旧約聖書外典の「ユディト記」に登場する美しい未亡人で、祖国のために敵の将軍の首を切り落とした女性。うっとりしたような表情を浮かべる女性像は、何とも官能的。この作品は、油彩画に初めて本物の金箔を使ったものとされていて、額縁もクリムト自身のデザインによる。
また、親しい友人を描いた《マリー・ヘンネベルクの肖像》は、印象派の絵画のような背景にソファの輪郭が溶け込んで、彼女だけが浮かび上がっているみたい。同時期に描かれた2作品を観ても、クリムトが多彩な表現で女性を描き出していたことが分かる。
年齢で描き方にも違いが。可憐な少女から資産家夫人まで
《ヘレーネ・クリムトの肖像》に描かれた少女は、クリムトの弟エルンストの娘、ヘレーネ6歳。ボブスタイルの髪型は当時としては珍しいもので、しっかりと前を見据える姿はちょっと大人びて見える。この作品は、最初のウィーン分離派展が開催された頃のもの。クリムトは生涯独身だったというから、姪っ子には特別な思いもあったのかも。
50歳を過ぎて描かれた《オイゲニア・プリマフェージの肖像》のモデルは、ウィーン工房の主要なパトロンの一人である銀行家の妻。東洋風のモチーフが見える抽象的な雰囲気の背景に、カラフルな衣装の女性という組み合わせは、クリムトの後期肖像画の特徴を示すもの。その意味でも、重要な作品と言える。いろいろな女性像の描き方を、クリムト自身の年齢で見てゆくのも面白そう。
爽やかな風景画や日本美術に憧れて影響を受けた作品も展示
女性像だけでなく、クリムトは生涯にわたって多くの風景画も手がけている。オーストリアのザルツカンマーグート地方にあるアッター湖は芸術家たちに愛された場所。《アッター湖畔のカンマー城III》は、この地にあるカンマー城を繰り返し描いた作品のひとつ。
また、晩年に手がけた《赤子(ゆりかご)》は、積み重ねられた色とりどりの布がダイナミックな構図となって、奥行きを感じさせる作品。装飾的な画面は民芸的なフォーク・アートから、布の模様は日本の着物からインスピレーションを得ているとも考えられるとか。
実際に、クリムトは日本美術の研究もしていて、着物や浮世絵なども所有。作品には金地に草花を描いて日本風の額をデザインしたものもあり、日本への憧れが垣間見える。日本とオーストリアの友好150周年にふさわしい、両国の芸術をつなぐ展覧会になるはず。
コラボ企画は、クリムト作品から着想したオリジナルネイル
クリムトの装飾性豊かな作品を身につけて楽しみたいという人は、東京・大阪・福岡に5ヵ所のネイルサロンを展開するLIMグループの人気ネイルサロン各店舗と展覧会がコラボした「LIM×KLIMT NAIL(クリムトネイル)」に注目を。
デザイン第1弾は、代表的傑作のひとつである油彩画《ユディトⅠ》をモチーフにした「ユディトネイル」(価格未定)。ネイリストの堀夏実さんが、絵を見た時に特に印象的だった色使いをマーブルで表現し、額縁や金色のイメージをラメなどで取り入れたネイルは、なるほどイメージにぴったり。
2019年3月25日(月)から7月31日(水)までのキャンペーン期間中は、5種類の「クリムトネイル」の中から好きなデザインを選んで施術してもらえる。好きな作品のクリムトネイルで、展覧会コーディネートを決めるのも素敵。
イベントDATA
- イベント名
- クリムト展 ウィーンと日本 1900
- 開催場所
- 東京都美術館 企画展示室
- 会期
- 2019/4/23(火)~7/10(水)
- 開室時間
- 9:30~17:30
※金曜は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)
- 休室日
- 5/7(火)、20(月)、27(月)、6/3(月)、17(月)、7/1(月)
- 観覧料
- 一般1600円(1400円)、大学生・専門学校生1300円(1100円)、高校生800円(600円)、65歳以上1000円(800円)、中学生以下無料
※6/1(土)~14(金)は大学生・専門学校生・高校生無料
※毎月第3土・翌日曜日は家族ふれあいの日により、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住、2名まで)は当日一般料金の半額
※5/15(水)、6/19(水)はシルバーデーにより65歳以上は無料。当日は混雑が予想される
※上記の適用に際しては証明できるものを提示すること
- 特別前売券
- ■販売期間:2019/4/22(月)まで
数量限定「特製ノート セット券」1600円
数量限定「デミタスカップ&ソーサー セット券」3500円
数量限定「《ユディトⅠ》ミニチュア絵画 セット券」3500円
■販売期間:2019/7/10(水)まで
「上野のれん会タイアップセット券」2000~3000円
※食事券・引換券の使用は8/31(土)まで
- ホームページ
- クリムト展 ウィーンと日本 1900 特設サイト
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