新繊維やAIなど「テクノロジー」を使ってつながるアート
会場では、現代の情報社会に問題提起をする飯川雄大の《デコレータークラブ―ピンクの猫の小林さん―》や、芸術祭などで活躍するアーティストユニット「目」による新作の大型作品など、多彩なジャンルのアーティストが日本の「いま」を表現する。
展覧会を読み解く3つの鍵のうちのひとつは「テクノロジー」。例えば、森永邦彦率いるファッションブランド「アンリアレイジ」は、東京大学・川原研究室とのコラボで、人の体温で形状が変化する新しい繊維素材を使った服を提案。
また、林千歩のインスタレーション作品では、人間の短所や情けない部分を搭載したAIロボットの愛の物語がユーモアたっぷりに描かれる。こうした最新テクノロジーとつながる作品を観れば、アートの世界に実験的な表現が広がっていることを実感できそう。
新しい視点が見つかる?アーティストが社会を観察してみた
世の中の出来事や身の回りに起こっていることを、「社会学」の視点から観察するアーティストの視線も興味深い。
竹川宣彰の《猫オリンピック:開会式》は、猫たちが選手のように行進して無邪気にスポーツの祭典を楽しむ様子が、どこか東京オリンピックに沸く今の日本のようにも見える。表彰台には金・銀・銅のモニュメントがあり、よく見るとキャットフードの形になっていて、猫もごほうびを楽しみにしているみたい。
田村友一郎の《MJ》は、マイケル・ジャクソンが来日した時のエピソードに着想を得て作られた作品。20世紀に最も記録され、記憶された人物の行動と言葉を通して、現代のポップカルチャーで神聖化されるアイコンの実像に迫る。
アーティストの視線が、誰もが知る出来事に潜む、見たことのない事実や新しい発見を導き出すのもおもしろい。
日常ではあり得ないような異色の組み合わせもアートに
また、思いもよらないほど異質な素材をつなげてみることで、新しいものの見方や、これまでになかった価値観が生まれることもある。
万代洋輔は、不法投棄されたゴミで作品を制作して写真に収めた「蓋の穴」シリーズを出品。元はゴミなのに、組み合わせてできたオブジェが自然の風景の中で神々しい佇まいを見せる不思議。極め付きの「俗」である廃棄物が、聖なる要素を持っているかのようにも思える。
このほか、青野文昭は、古くて使えなくなった車や家具などを組み合わせて、新しい生命力を宿したような力強い彫刻作品を出品。本来はつながることのないものがアートとして新しい価値を持つ姿は、日常とは違う驚きや新しい世界観につながるのかもしれない。
出展作品にちなんだオリジナルのユニークなグッズも登場!
展覧会の期間中、ミュージアムショップでは参加アーティストによるユニークなオリジナルグッズも販売される。
例えば、「アンリアレイジ」の出展作《A LIVE UN LIVE》で使用されたものと同じ素材で作ったコサージュ「ANREALAGE PRISM CORSAGE(アンリアレイジ プリズムコサージュ)/春 夏 秋 冬」(各5184円、ブローチタイプとピンタイプの2種)。こちらは、暗くても光によって明るく見えるという「再帰性反射機能」を持った分光素材でできていて、スマートフォンのフラッシュをオンにして撮ると、光の反射の角度によって色が変化する。
また、飯川雄大の「《デコレータークラブ ―ピンクの猫の小林さん―》 のマグカップ」(1512円)は、森美術館だけのオリジナル。展覧会の入り口で圧倒的な存在感を放つピンク色のネコが、ちょっと大きめのマグカップになっていて、見るたびに実際に作品のインパクトを思い出せるはず。
展覧会の後でも、アートを身近に感じたい人におすすめ!
イベントDATA
- イベント名
- 森美術館15周年記念展 六本木クロッシング2019展:つないでみる
- 開催場所
- 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53F)
- 会期
- 2019/2/9(土)~5/26(日)
- 開館時間
- 10:00~22:00(最終入館 21:30)
※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
※ただし4/30(火)は22:00まで(最終入館 21:30)
※「六本木アートナイト2019」開催に伴い、5/25(土)は翌朝6:00まで(最終入館 5:30)
- 休館日
- 会期中無休
- 入館料
- 一般1800円、学生(高校・大学生)1200円、子ども(4歳~中学生)600円、シニア(65歳以上)1500円
※本展のチケットで展望台 東京シティビューにも入館可(スカイデッキをのぞく)
- ホームページ
- 六本木クロッシング2019展:つないでみる 特設サイト
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