改名とともに変化する画風、そのアップデートの全貌を紹介
2019年1月17日(木)から3月24日(日)まで、六本木ヒルズ森タワー52階の森アーツセンターギャラリーでは「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」を開催。国内外から集められた名品や貴重な作品約480件(会期中展示替えあり)が展示される。
展覧会では、北斎の作風の変化とともに当時名乗っていた画号によって、6期に分けて紹介。まずは、20歳で浮世絵界にデビューした頃の「(勝川)春朗」期(20~35歳)で、役者絵や挿絵本などが並ぶ。「花くらべ弥生の雛形」は、春朗期の大判美人画として確認されている唯一のシリーズとか。
その後、勝川派を離れた北斎は琳派の俵屋宗理を襲名し、この宗理期(36~46歳頃)は優美な摺物(すりもの:非売品の特製版画)や狂歌絵本の挿絵、肉筆画などを多く手がけることに。「風流無くてなゝくせ」は、「宗理美人」と呼ばれる独自の美人画。
やがて、江戸で読本(よみほん:挿絵入りの小説)が流行し始めると、その挿絵に全力で取り組む。中国画のような力強い表現に幻想的な洋風の表現も取り入れて「劇画的世界」を創り出し、この頃から名前も葛飾北斎と名乗っている。
51歳頃からは「戴斗(たいと)」と号し、絵手本の制作に力を注ぐ。有名な『北斎漫画』が刊行されたのもこの時期で、それまで師匠から弟子へ肉筆で教えることが多かったなか、大量の印刷本で出版される手本はとても画期的なことだったそう。
61歳頃からは「為一(いいつ)」と改名し、70歳を過ぎてから「冨嶽三十六景」などの錦絵を次々に生み出してゆく。旺盛な創作意欲で、後に代表作と呼ばれる名作がこの時期にいくつも生まれているのは驚き!
75歳頃からは「画狂老人卍」と号して、肉筆画に力を入れる。最晩年期で最大級の作品とされる《弘法大師修法図》は縦153センチ、横240センチというサイズで、病魔(鬼)と対峙する弘法大師の姿は異様な迫力に満ちている。
アメリカで発見された貴重な作品など初公開作品もずらり!
今回の展覧会では、初公開の作品が多数登場するのもみどころのひとつ。アメリカのシンシナティ美術館が所蔵していた「かな手本忠臣蔵」は、北斎が多く描いた人気歌舞伎「忠臣蔵」の一場面で、近年発見された貴重な作品。同美術館には、北斎88歳の時の《向日葵(ひまわり)図》もあり、こちらも本邦初公開。
また、現在の島根県にあたる津和野で、江戸時代に藩主を務めた亀井家所蔵の摺物のコレクションは、全118枚を初公開。和暦で月の大小(大:30日、小:29日)を示す江戸時代のカレンダーや、お正月に配られた摺物などが並ぶ。これらは、長い間秘蔵されていたためで、200年以上経った今でも当時の目の覚めるような美しい色合いがそのまま残っているのがすごいところ。
こうしてみると、約70年の画業で膨大な数の作品を遺した北斎には、まだまだ知られざる名作があるのかも。
今回が見納め!北斎研究の第一人者が集めたコレクション
この展覧会を監修した永田生慈氏は北斎研究の第一人者で、これまでも国内外で数多くの展覧会を企画・監修して、北斎の魅力を発信してきた人物。国内外の美術館やコレクターを訪ねて北斎作品の発掘にも努め、今回初公開となった「かな手本忠臣蔵」などの作品も永田氏によって発見されたもの。
さらに永田氏は、研究とともに精力的に北斎作品の収集も行い、2017年には2000件以上の作品を一括して故郷の島根県に寄贈している。今回の展覧会は、自らの北斎研究の集大成とするべく準備を進めていたそうだけど、惜しくも2018年2月に逝去。遺志によって、島根県に寄贈された作品たちは、この展覧会以降は島根県のみで公開されることに。つまり、永田コレクションを東京で見ることができるのは、これが最後のチャンスとなる。
初公開の貴重な作品や、見納めとなる稀代のコレクションなど、みどころたっぷりの大規模な北斎展。これまでにない新しい北斎ワールドを、この機会に堪能して。
期間限定カフェには北斎作品をイメージしたメニューも登場
展覧会が開催される森アーツセンターギャラリーと同フロアの「Cafe THE SUN」は、期間限定で「THE SUN 茶寮 featuring 北斎」として、北斎の作品から着想したオリジナルメニューを提供する。
「赤富士」の呼び名で親しまれている「冨嶽三十六景 凱風快晴」をイメージした「赤富士カレー」(1566円)は、まさに絵柄が立体化したようなユニークなホワイトカレー。このほかにも、わらび餅や白玉、小倉あんや抹茶ムースなどの和スイーツに『北斎漫画』のクッキーを添えた「北斎漫画パフェ」(1404円)など、作品にちなんだメニューが楽しめる。
目(視覚)で北斎の作品を堪能した後は、さらに味覚や嗅覚も使って「北斎」を味わい尽くそう。
イベントDATA
- イベント名
- 新・北斎展 HOKUSAI UPDATED
- 開催場所
- 森アーツセンターギャラリー
- 会期
- 2019/1/17(木)~3/24(日)
※会期中の展示替えあり
- 開館時間
- 10:00~20:00、火曜のみ17:00まで (最終入館は閉館の30分前まで)
- 休館日
- 1/29(火)、2/19(火)、2/20(水)、3/5(火)
- 入館料
- 一般1600円、高大生1300円、小中学生600円
「新・北斎×奇想の系譜セット券」2800円
販売期間:2018/10/29(月)~2019/3/24(日)
※「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」2019/2/9(土)~4/7(日)東京都美術館
- ホームページ
- 新・北斎展 HOKUSAI UPDATED 特設サイト
DATA
- スポット名
- 森アーツセンターギャラリー
- 電話番号
- 0357778600 0357778600 ハローダイヤル
- 住所
- 東京都港区六本木 6-10-1 六本木ヒルズ 森タワー52F Map
- 交通アクセス
- 東京メトロ日比谷線「六本木駅」1C出口よりコンコースにて直結、都営地下鉄大江戸線「六本木駅」3出口より徒歩4分、「麻布十番駅」7出口より徒歩5分、東京メトロ南北線「麻布十番駅」4出口より徒歩8分
- ホームページ
- 森アーツセンターギャラリー HP
アート、ミュージカル、クラシック・・・特別な1日を約束する“東京体験”をチェック
舞台、ミュージカル、歌舞伎、クラシック、アート・・・さまざまなエンターテインメントがあふれている東京。でも、なかなか経験する機会がない人も多いのでは? オズモールの東京体験では、観劇や鑑賞のレストラン付きプラン、お土産付きの観劇チケットなど “いい1日”が過ごせる、とっておきのプランをラインナップ。ぜひチェックしてみて。
美術展ニュース
今しか見られない、おすすめの美術展をご案内。見どころをわかりやすく紹介します。
NAOKO YOSHIDA (はちどり)