昔から世界を魅了してきた扇。神仏と人を結ぶ呪力にも注目
1878年(明治11年)にフランス・パリで開催された万国博覧会では、幅広い時代と流派を網羅した100本の「扇」が出品されたそう。展覧会では序章で、このときのパリ万博に出品された扇を見ることができる。かつて万博に訪れた人々がそうであったように、世界を魅了した「扇の国、日本」への扉を開く。
日本の扇は大別すると、薄い板を綴じ重ねた「檜扇(ひおうぎ)」と、竹骨に紙や絹を張った「紙扇」の2種類がある。涼をとるためだけでなく、儀礼や祭祀の場でも使われ、平安時代の半ばには貴族の装束の一部としても発達。そこで、第1章では「扇の呪力」と題して、神仏と人を結ぶ呪術の道具としての扇を紹介する。
運命を司る扇や、コミュニケーション媒体としての扇も紹介
第2章の「流れゆく扇」では、水面に扇を投じて眺める「扇流し」のような配置で描かれた屛風や襖絵をラインナップ。
扇が水の流れに沿って漂い変化する様子に、昔の人は趣を感じ、無常観を見い出したのかもしれない。そこには、鎌倉時代の仏教説話集《長谷寺験記》にある「流れつく扇から愛する人の居場所を知り、再会する」というエピソードのように、扇には恋愛や運命を司るというイメージも託されていたそう。
また、第3章「扇の流通」は、10世紀頃には中国などに特産品としてもたらされていた扇が、国内外で流通したことに着目。輸出品としてはもちろん、季節の贈答品などコミュニケーションをつなぐアイテムとして人々の手に渡っていった扇を展示する。
物語を描いた扇、ファッション・アイテムとして人気の扇絵
第4章「扇と文芸」では、イメージを共有するツールとして、物語性を持った扇の役割を見てゆく。例えば長いストーリーも、扇に名場面のダイジェストを描いたり、それを屛風や画帖にコラージュすることで、全貌を味わえたという。
さらに、第5章は「花ひらく扇」と題し、あらゆる流派によって描かれた江戸時代のバラエティ豊かな扇絵を集める。江戸時代は、将軍や大名の御用絵師である狩野派も、宮廷絵師の土佐派も、庶民の支持を得ていた絵師も、さまざまな流派が競って扇絵を描いたとか。この時代に、身近で最先端のファッションアイテムとして花ひらいた扇絵は、当時の女性にも人気だったはず。
工芸も染織も。モチーフとして広がりを見せる扇のデザイン
終章「ひろがる扇」は、さらなる発展を遂げた扇の世界を紹介する。扇は、開くと末広がりになる形から、繁栄を意味する縁起ものとして愛好されてきた歴史がある。
そこから、絵を描くフレームにとどまらず、絵画のジャンルを超えて工芸や染織の世界でも広がりを見せてきた。いろいろな姿のモチーフとして、大胆なデザインが生み出され、人々の生活も彩られる。ここでは、近世を中心に、自由な造形で展開される「扇」デザインの作品を見てゆく。
奈良時代には使われていたという、日本生まれの「扇」。その歴史や広がりを知ることで、身近な美術品としての新しい価値を感じられる展覧会になりそう。
カフェには老舗の加賀麩を使った展覧会限定メニューも登場
展覧会の開催期間中は、慶応元年創業「加賀麩 不室屋」がプロデュースする美術館のカフェに、限定メニューも登場。不室屋は150年の伝統を誇る金沢の老舗で、カフェでは「麸」を現代的にアレンジした軽食や甘味が楽しめる。
展覧会限定メニュー「梅扇ふやき最中とお抹茶」(1026円)は、不室屋で人気の「宝の麩」のふやきを使い、柚子あんの「扇最中」、つぶあんの「梅最中」をそれぞれに仕立てたスペシャルな和菓子セット。お抹茶と一緒に、展覧会の後のひとときを楽しんで。
イベントDATA
- イベント名
- 「扇の国、日本」展
- 開催場所
- サントリー美術館
- 会期
- 2018/11/28(水)~2019/1/20(日)
- 開館時間
- 10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※2018/12/23(日・祝)、2019/1/13(日)は20:00まで開館、2018/12/29(土)は18:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
- 休館日
- 火曜
※2019/1/15(火)は18:00まで開館
※2018/12/30(日)~2019/1/1(火・祝)は年末年始のため休館
- 入館料
- 一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料
- 割引
- ◇100円割引
・ウェブサイト限定割引券提示
・スマートフォンサイトの割引券画面提示
・あとろ割:国立新美術館、森美術館の企画展チケット提示
※割引適用は1種類まで(他の割引との併用不可)
- ※会期中、展示替えあり
- ホームページ
- 「扇の国、日本」展
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