田舎の家を手づくりで美しく改装して理想の暮らしを実現
家族をモチーフにした温かい作品で知られる画家カール・ラーションは、35歳の時に妻・カーリンの父から伝統的な田舎の家を譲り受ける。スウェーデン人の心の故郷ともいわれるダーラナ地方で、通称「リッラ・ヒュットネース」(岬の小さな精錬小屋の意味)と呼ばれる家を手に入れたカールは、その家を妻とともに美しく改装して、理想の暮らしを実現。
夫妻はアンティーク家具のペイントや手芸というシンプルなやり方で、夏とクリスマスを過ごすたびに家や家具に手を入れ、ついには一家で移住することに。最初に改装したのは食堂で、効果的に使われている赤と緑はダーラナ地方の伝統色だけど、当時注目されていた装飾芸術運動の影響も見られる。
家族が揃って食卓を囲むためにずらりと並んだ椅子は、カールが家族を大切にした証。楽しい団らんの様子が目に浮かぶ。
牧歌的な日々を描いたモダンな画集は当時のベストセラーに
夫妻は、当時の人々が関心を寄せなかった17~18世紀のスウェーデンのアンティーク家具とダーラナ地方の伝統色、さらには遊び心のあるデザインを組み合わせた美しい空間を創り出す。
カーリンの勧めで描き始めた自慢の「リッラ・ヒュットネース」の絵は、やがてストックホルムの出版社から最新の印刷技術とモダンな装丁で出版される。水彩画24点とカールのエッセイを収めた最初の画集『わたしの家』は、1899年のクリスマスに初版3000部で発売。その後、1909年に再編されたドイツ語版『太陽のなかの家』は4万部のベストセラーに。
画集で紹介された牧歌的な暮らしは、イケアなど現在のスウェーデン・インテリアにも影響を与えているそう。
才能あふれる妻・カーリンは知られざるクリエイター
「リッラ・ヒュットネース」の暮らしには、画家だった妻・カーリンのクリエイターぶりが大きな役割を果たしている。家庭に入ってからは画家としての活動はしていなかったけれど、8人目の末の男の子を生んだ40歳代から手工芸品を精力的に制作するようになったという。
例えばカーリンは、食堂のためにクッションやタペストリー、テーブルクロスやランプシェードなどをデザイン。淡い色彩や白い壁などスウェーデンのロココ風とも言えるスタイルは、現代のスウェーデン・インテリアの特徴にもなっている。
1901年に描かれた《かくれんぼう》を見ると、四女のチェシュティが遊んでいるアトリエの長椅子は新古典主義とロココの折衷様式で、赤く塗り替えられている。豊かな感性によってコーディネートされた家の中で、子どもたちが伸びやかに育つ姿にはちょっと憧れてしまう。
ラーション家の居間をイメージしたフォトスポットも登場
本当に必要なものや好きなものを自分たちの手で生み出した夫妻が、実際に子供たちを育てあげた家は、現在「カール・ラーション・ゴーデン(記念館)」として一般公開され、年間6万人が訪れている。
スウェーデンまで行けなくても、展示室の中には「リッラ・ヒュットネース」の居間をイメージしたフォトスポットがあるので、ラーション夫妻が作り出した美しいリノベーション空間を体感できる。ラーション家の一員になったような気分で記念のフォトを撮影して。
家族へのこまやかな愛情があふれる絵や、手づくりの豊かな暮らしを思わせる家具やテキスタイルに、「理想の家庭」を夢見るのも楽しいかも。
イベントDATA
- イベント名
- 日本・スウェーデン外交関係樹立150周年記念 カール・ラーション スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家
- 開催場所
- 東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
- 会期
- 2018/9/22(土)~12/24(月・休)
- 開館時間
- 10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
※ただし10/3(水)、26(金)、12/18(火)~23(日)は19:00まで
- 休館日
- 月曜(ただし12/24は開館)
- 観覧料
- 一 般1300円、大学・高校生900円、65歳以上1100円、中学生以下・無料
※学生証、生徒手帳、年齢の分かる証明書などをそれぞれ提示のこと
- 関連イベント
- 「クリスマス・ミニアカペラコンサート」当日自由参加
日時:2018/12/15(土)16:30~16:50(予定)
出演:『マドンナカンタービレ(独唱)平林園子』
料金:無料
「ギャラリー★で★トーク・アート」要申込
日時:2018/12/10(月・休館日)14:00~16:00(予定)
定員:30名程度
参加費:1100円(観覧料不要)
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