100年目となるアメリカ初の近代美術館から秀作が75点も
フィリップス・コレクションは、裕福な実業家の家に生まれた目利きのコレクター、ダンカン・フィリップスが創設したもので、2018年には創設から100周年を迎える。
アメリカ初の近代美術館として開館したのは1921年で、ニューヨーク近代美術館(1929年~)よりも早い。近現代の美術作品を4000点以上所蔵していて、創設者の遺志を継いだコレクションは今も拡大を続けているという。
今回は、近代絵画の父と呼ばれるマネや、印象派のドガ、モネ、それ以降の絵画の世界をリードしたセザンヌ、ゴーガン、クレー、ピカソらの秀作75点を展示。
現在、フィリップス・コレクション館長を務めるドロシー・コシンスキー氏によれば、特にドガの《稽古する踊り子》やファン・ゴッホの《道路工夫》などは見どころとか。
実際に芸術家をサポートしながら集めた稀代のコレクション
ダンカン・フィリップスは、アーティストたちと親しく交流しただけでなく、経済的な援助をしたり、作品を買い取ったりと、同時代の美術をサポートしたひとりでもある。
例えば、アメリカで最初にボナールやブラック、ニコラ・ド・スタールの作品を購入して、その個展を開催したのもフィリップスだったそう。
フィリップスは生涯を通じて、芸術作品に対する強い情熱を燃やし続け、高い見識によって稀代の近代美術コレクションを集積した人物。そうやって集められた中から、選び抜かれた人気作品が一堂に展示されるのだから、今回は近代美術のオールスターに出会えるチャンスというわけ。
レンガ造りの19世紀建築の中で本国同様の名画鑑賞が実現
ワシントンにあるフィリップス・コレクションの建物は、19世紀に建築されたレンガ造りの私邸の1室で開館されたのがはじまり。
フィリップスは、妻で画家のマージョリー・アッカーと一緒に、印象派の絵画や当時の芸術家たちの作品をくつろいだ雰囲気の中で鑑賞できる場所を作り上げたという。
今回の会場となる三菱一号館美術館も、19世紀末に建てられたレンガ造りの外観が印象的で、フィリップス・コレクションと同様に、親密な空間の展示室で名画を鑑賞できる。
そう考えると、フィリップス・コレクションとよく似た空間の中で、19世紀以降の名画に会えるのは、貴重な機会と言えそう。
来日して感銘を受けた浮世絵。巨匠たちへの影響にも注目を
ダンカン・フィリップスが最初に訪れた外国は日本で、1910年(明治43年)のこと。その時フィリップスは、浮世絵が近代西洋の芸術家に大きな影響を与えたことを知り、強い感銘を受けたそう。
彼は、日本の浮世絵師たちがマネやモネ、ドガ、ゴーギャン、ファン・ゴッホ、ボナール、マティスなどの先駆けになったと記している。これらの巨匠の作品はすべて、この展覧会で見ることができるから、フィリップスの感じた「浮世絵からの影響」を探してみるのも面白い。
フィリップス・コレクションの雰囲気が感じられる三菱一号館美術館で、近代美術の巨匠たちの傑作を心ゆくまで堪能して。
タイアップメニューや限定グッズでも作品の魅力を味わって
館内のミュージアムカフェ・バー「Café 1894」では、会期限定で展覧会にちなんだランチやデザートを提供する。タイアップランチ「The Modern(ザ・モダン)」(2160円)は、前菜にゴーガンの作品《ハム》から着想を得た生ハム入りのポタージュが登場。脂の乗ったサーモンと5種類のきのこをサクサクのパイで包んだメインディッシュは、サフラン味のソースでモダンな抽象絵画のように仕上げた芸術的な1皿。
デザートには、ダンカン・フィリップスの好物だったチョコレートスフレをアレンジした「Duncan's Favorite(ダンカンズ・フェイバリット)」(972円)を。パリのレストランでは必ずと言っていいほど注文したというから、案外スイーツ男子だったのかも。
また、ミュージアムショップ「Store 1894」には、歴代最多という64種類のポストカード(各150円)や、耐久性の高い印刷方法で丁寧に仕上げられた「ミニチュアキャンバス」(3800円~)などが揃うので、好きな作品を購入して自宅でマイコレクションを飾るのも素敵。展覧会の前後も、いろんな形でアートを楽しもう。
イベントDATA
- イベント名
- フィリップス・コレクション展
- 開催場所
- 三菱一号館美術館
- 会期
- 2018/10/17(水)〜2019/2/11(月・祝)
- 開館時間
- 10:00〜18:00
※入館は閉館の30分前まで(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は21:00まで)
- 休館日
- 月曜日(但し、祝日・振替休日の場合、会期最終週とトークフリーデーの10/29、11/26、1/28は開館)、 年末年始(12/31、1/1)
- 入館料(前売)
- 一般:1700円(1500円) 高校・大学生:1000円 小・中学生:500円
※「アフター5女子割」毎月第2水曜の17時以降、女性のみ当日入館料が一律1000円(この日は21:00まで開館)
※「リピート割」同館の展覧会の入館券半券を次回以降の展覧会においてチケット窓口で提示すると、当日入館料が200円引
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