女性に多い「鉄欠乏性貧血」。そもそもなぜ、女性に多いの?
貧血とは、全身に酸素を運ぶ役割をもつ赤血球やヘモグロビンの量が不足している状態のこと。
「その赤血球の成分であるヘモグロビンを作るのに必要なのが鉄。この鉄が不足することで、必要なヘモグロビンが作れず、おこる貧血を『鉄欠乏性貧血』といいます」(都木先生)
女性ならヘモグロビン12g/dl未満だと貧血と判断されるそう(※1)。
では、女性に鉄欠乏性貧血が多いのはなぜ?
「食事からの鉄の摂取が足りないのが一番の原因です。女性には毎月の生理のほか、妊娠、出産、授乳と、そもそも男性より多く鉄をとる必要があります。それなのに、月経のある女性の平均鉄分摂取量は1日で6.4mgと足りていません(※2)」と都木先生。
さらにダイエットなどで食事制限をすると、鉄分が不足するだけでなく、血を作るために必要な栄養素(タンパク質、ビタミンB6、B12、Cなど)も不足してしまうことも。これがさらに鉄欠乏性貧血を悪化させてしまう原因になるので、栄養バランスを崩すダイエットには注意が必要なよう。
※1 世界保健機構(WHO)の基準による
※2 厚生労働省の国民健康栄養調査(2017年)による。食事摂取基準(2015年)によると、月経のある女性に推奨されている1日の鉄分摂取量は10.5mg
アサリやカツオ、肉類など“ヘム鉄”を多く含む食材を食べよう
それでは、鉄欠乏性貧血を改善するため、またならないようにするためには、どんなことに気を付ければいいの? まずは実行しやすい、食事については?
「食材の中に含まれる鉄には、『ヘム鉄』と『非ヘム鉄』があります。ヘム鉄の吸収率が15~25%と高いのに比べ、非ヘム鉄は2~5%と吸収率が悪いことがわかっています。このヘム鉄を含む食品を食べるのがおすすめです」と都木先生。
おすすめ食材は表のとおり。「特にアサリはこれから旬で手に入りやすいのでおすすめです。シジミやハマグリ、牡蠣など貝類もいいのですが、食べるときはまるごと食べてください。内臓に鉄分が多く含まれているので、味噌汁やスープに使用するときは、薄味に味付けして、汁も残さずいただくといいでしょう」(都木先生)
また、食べるときに梅干しや酢など、酸味も取り入れるようにすると、胃酸の分泌が高まり鉄の吸収率がよくなるとか。カレー粉やショウガなどの香辛料にも同様の働きがあるので、食材だけでなく、料理方法にも上手に取り入れてみては?
ビタミンCやビタミンB群も一緒に摂ると効果的!食事中はタンニンの多いドリンクは避けて
ほかにもできることってある?
「鉄分の吸収を促してくれるビタミンCを一緒に摂ると効果的です。また、鉄分だけでなく、造血成分といわれるビタミンB12(レバーや納豆)、葉酸(緑黄色野菜など)、ビタミンB6(卵黄、イワシなど)、銅(貝類、ごま)も積極的に食べるようにするとさらにいいですね」と都木先生。
ビタミンCが多い野菜はブロッコリーや黄パプリカ、カボチャ、小松菜など。フルーツではアセロラやレモン、オレンジ、柿、キウイ、いちごなどが優秀だそう。
「また、食事中はコーヒー、緑茶、紅茶を控えたほうがいいですね。これらはタンニンが多く、タンニンは鉄の吸収を阻害する働きがあります。麦茶などに変えるか、緑茶が好きなら薄めに入れましょう。コーヒーや紅茶は、食後少し時間をあけてから飲んでください」(都木先生)
そのほか、インスタント食品や調理済み食品、出前などが多い人は、使われている材料が見えにくいので栄養バランスを評価しにくいことが難点。不足しがちな鉄分や栄養素を摂るためには、上にあげたような食材を使って、できるときには手作りも選択肢に入れたい。
「手作りのときには、南部鉄器などを使ってみるのもおすすめです。鉄鍋で調理すると、鍋の鉄が溶けだして効率的に鉄が摂取できるうえに、熱伝導率もいいので炒め物もおいしく仕上がります。最近ではIH対応のものもありますし、楽しく取り入れてみてはどうでしょう」(都木先生)
教えてくれた人
都木登妃子医師
玉城クリニック副院長、日本内科学会認定内科医、糖尿病専門医。兵庫医科大学、大阪中央病院などで診療を担当、予防医学に注力し、生活習慣病の指導なども積極的に行っている。患者個々の生活習慣や暮らしを理解し、指導してくれる診療に広く信頼を集めている。
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WRITING/HIROKO KUROKI