サンドウィッチパーラーまつむら 

手作りへのこだわり!人形町で100年続く「サンドウィッチパーラー まつむら」

更新日:2021/03/25

1921年から続くベーカリー。毎日手作りされるパンやサンドイッチがずらりと並ぶ。ひとりでも落ち着ける併設のカフェスペースでイートインもOK。朝早くから営業しているので、出勤前の朝食や軽めのランチ、おやつにと、界隈の人々にとて欠かせない存在。長い歴史のなか、時代に合わせて営業スタイルは変わっても、変わらない手作りへのこだわりが生み出すパンの味わいにきっと感動するはず。

サンドウィッチパーラーまつむら店主
4代目店主の松村実さんと妻の恭子さん。明るい橙色の屋根も温かく迎えてくれるよう。

人形町で100年!4代続くパン屋さん

人形町に着いたのはお昼過ぎ。軽くランチをと「まつむら」に向かった。あんぱん、クリームパン、メロンパン・・・幼い頃からおなじみのパンが並ぶ様子にほっとする。なににしようか悩んでいると、女性店員さんがサンドイッチを並べながら「これ、作りたてでおいしいですよ」とニコッ。なにげないやりとりに心がほんわり温かくなる。そんな親しみやすさあふれる「まつむら」だが、実は2022年で100周年の老舗なのだ。

「祖父の兄が創業したのが大正10年。祖父、父、と跡を継いで、僕で4代目です」と、店主の松村実さん。先ほどの女性は、ともに店を切り盛りする奥様の恭子さんだった。

サンドウィッチパーラーまつむら
昔の写真から、パンを対面販売していたり喫茶店が併設されたりと時代ごとの変遷がうかがえる。

「3代目の父の代に今のビルに建て替えて、1階を店と調理場に、2階を工場にしたんです。昭和50?60年代には喫茶店を併設して、グラタンなどの軽食を提供していた時期もありました」。

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時を経た趣が素敵なカフェ 

その喫茶店を担当していたのが、先代の双子の弟さん。3代目時代の「まつむら」は、双子の兄弟が営むパン屋さんとしてもおなじみだった。実さんが店を継いでからは、時代に合わせて喫茶スペースを改装。近隣に勤める人たちが忙しい仕事の合間にひと息つけるようにひとり席を増やし、買ったパンをコーヒーや紅茶と味わえるセルフスタイルのカフェにした。

「ご近所さんだけではなく、近くにお勤めの方や水天宮さんのお参り前後に寄ってくださる方も多いですね。先代の両親や叔父は亡くなってしまったけれど、長く通ってくださるお客様から、僕たちが知らない両親の思い出を教えてもらうこともあるんですよ」と実さんは目を細める。

サンドウィッチパーラーまつむら
営業時間も昔から変わらない

下町の温かさに支えられ子供も店が大好きに

家族経営の「まつむら」で生まれ育った実さんと異なり、恭子さんはサラリーマン家庭育ち。嫁入りした当初は、親族みんなが店で働くスタイルにカルチャーショックを受けたという。「子供が生まれてからは、子育てと仕事の両立も大変で。でもこのあたりは下町でしょ。子供をおんぶしてお店に立つのが普通みたいな感覚があるから、店にベビーカーを置いて仕事してたんです。常連さんや業者さんが子供に声をかけてくださったりして、街の温かさに救われました。この街だから、いちばん大変な時期も乗り切れた。人形町に店があって本当によかったと感謝しています」。

今、その赤ちゃんは5歳の男の子に成長した。「うちの子は店が大好きで。うちがパン屋ということが、友達にも誇らしいみたい。お父さんと一緒に自分のパンをこねて焼いたりもするんですよ」と恭子さんは嬉しそう。実さんも「まだ小さいから、店を継ぐかはわからないし無理強いもしたくないけど、子供が進路を決めるまでは、がんばって店を続けなきゃね」と決意を新たにしている。

サンドウィッチパーラーまつむら
右からクリームパン(120円)、ちくわとツナサラダが好相性のちくわドック(165円)、三切サンド(220円) 

手作りの味がこの店の根っこだから

最初におすすめしてもらったパンを、カフェでいただいてみた。シンプルな味付けのふんわりサンドイッチも、やさしい甘さのクリームパンも、素直で飾らない味わいで、懐かしさで胸がいっぱいになる。ほかのパンも気になるなあと店内を見回して、その種類の豊富さに改めて驚いた。
「パンは全部で100種類くらいかな。食パンやロールパンなど7~8種の生地を仕込んで使い分けています。昔は従業員も多かったですが、今は僕たち夫婦と、10年以上一緒にやってくれている3人の従業員で作っています」と実さん。代替わりで作り手は変わっても、粉や配合は昔とほぼ変えていないという。

「具材をできるだけ手作りするのも昔から。クリームパンのクリームは、卵と牛乳と砂糖を使って毎日炊いているし、カレーパンのカレーも自家製。サンドイッチの卵サラダも卵を茹でて作っています。ときには『ちくわドック』のような新商品も出ますが、手作りが基本なのは同じです」

手作りの仕込みは時間もかかる。お店が開く朝7時に合わせて、実さんが工場に入るのは朝4時頃だそう。「うちのパンで出勤前に朝ごはん、というお客さんも多いから」と実さん。「朝早いのは意外と慣れるんですよ」と恭子さんもからりと笑う。

きっと手作りでなければ、時間や労力は省けるのだろう。でもそこは譲れない部分だとふたりは口を揃える。「キラキラしたおしゃれなパンはないけれど、うちの味を好きでいてくれる常連さんは多いから」「手作りの味こそ、うちの味。根っこの部分だから、ここは変えられないんです」。

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※オズマガジン2021年1月号は「しあわせのパン」の記事を一部転載 
※掲載店舗などの情報は、取材時と変更になっている場合もございますので、ご了承ください

スポット名
サンドウィッチパーラー まつむら
電話番号
0336663424 0336663424
住所
東京都中央区日本橋人形町1-14-4
営業時間
7:00~18:00 土曜~13:00
定休日
日・祝日 
交通アクセス
水天宮前駅よりすぐ
席数
23

オズマガジン2021年1月号は「しあわせのパン」特集

オズマガジン2021年1月号は「しあわせのパン」特集

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発売日/2020年12月11日(金) 価格/700円

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PHOTO/MIHO KAKUTA、WRITING/MIYO YOSHINAGA

※記事は2021年3月25日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります