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おうちで簡単アレンジも!願いを結ぶ美しい手仕事「加賀水引」

更新日:2023/12/20

ご祝儀袋でおなじみの水引細工は、結び方や色、本数で贈り主の心を表す、いわば日本独自のコミュニケーションツール。加賀水引細工発祥の「津田水引折型」を訪ねて、美しい手仕事の根底にある“心”を教えてもらいました。おうちで簡単にできる水引アレンジもご紹介。

写真/加賀水引の折型は、折り目をつけないふっくらと立体的なフォルムが特徴。家族と家族の縁を結ぶ結納品にふさわしい、華やかな造形美に目を奪われる

左右から引くときつく結ばれることから、縁起がよいと言われるあわじ結びはすべての水引細工の基本。今が最盛期の干支飾り作りにも、その技が応用されている

日本人が大切にしてきた心と心の結びつきを形に

こんなに華やかな水引細工に出会ったのは初めてかもしれません。加賀友禅や九谷焼など色彩豊かな伝統工芸の多い金沢地方ですが、その中でも加賀水引の艶やかさには目を見張るものがあります。

結納や結婚祝いなどの慶事に欠かせない水引。その基本は和紙で「包む」、水引で「結ぶ」、差し上げる理由や名前を「書く」の3つの工程です。いわば日本伝統のラッピングですが、その起源はどこにあるのでしょうか。

「そもそもは聖徳太子の時代に、中国の皇帝から贈られた品に紅白の麻紐が結ばれていたのが始まりと言われています」。そう教えてくれたのは、津田水引折型5代目の津田六佑さん。その後の日中交易で災難を退ける魔除けの意味や、品物が未開封であるという印、日中の関係が末長く続くようにと願う縁結びの意味などが生まれ、やがて贈り物に水引を結ぶ慣習は、小笠原流礼法によって高貴な階級のマナーとなりました。

左/芝仙祝寿:霊芝に鶴、竹、梅を配した東洋画の代表的な画題を繊細な水引細工で表現。ふっくらと立体的な折型も加賀水引ならでは 右/鳳凰:中国から伝わる伝説上の生き物で、吉事が現れる前兆に現れる鳥として知られる。結納品には欠かせない吉祥モチーフのひとつ

一般に広まったのは今から100年ほど前。ちょうどその頃、小笠原流礼法をベースに加賀水引を生み出したのが津田水引折型・初代の津田左右吉氏です。左右吉氏は平面だった折型を立体的にし、それに合わせて水引細工も造形的にしました。また用途や折型に合わせて書体も使い分けるなど、水引のすべての工程を芸術の域まで昇華させたのです。

「ですが、水引の本質はそうした包み方や結び方の技術とはまた別のところにあるんです」と津田さん。

「水引の最も美しいところは、気持ちを言葉ではなく包み方で伝えるという日本的な奥ゆかしさ。例えば同じ3万円でも、適当なご祝儀袋に入れるのと、相手のことを想って選んだご祝儀袋に入れるのとでは、受け止め方が違ってきますよね。初代がこのように雅な水引を考案したのは、贈る側の気持ちをより伝えやすくするためではないでしょうか」

鶴:加賀水引の原点とも言える図案のひとつ。千年を生きると言われる鶴は、長寿を祝うときに描かれることが多い

そう、芸術的なまでに美しい加賀水引は相手との絆をより強くしたいという願いを形にしたものなのです。近年ではアクセサリーや小物などにも用途が広がっている水引ですが、時代は移り変われど、幸せを願う人々の気持ちに変化はありません。めでたいことは、よりめでたく。祈りにも似た美しい手仕事が、その想いを受け止めてくれるはずです。

津田水引折型

加賀水引発祥の老舗。初代・津田左右吉氏が考案した技術を継承し、水引の本質を5代にわたり守り続けています。作業場と売場が一体となった店舗では、ポチ袋作りなどの水引体験を楽しむことも

おうちでチャレンジ!水引アレンジ「梅」

【STEP_1】イラスト/左上
水引を適度にしごく。右手で水引の真ん中を持ち2cm程の輪を作る

【STEP_2】右上
水引の左端を持ち、(1)で作った輪の後ろに持っていき●をおさえる

【STEP_3】左下
水引の左端を持ち、右端の上を通って●の下に持っていく

【STEP_4】右下
3つの輪を下から上に縫うように通していく

【STEP_5】イラスト/左上
水引を1 本ずつ締めていき、花びら3枚を作る。手は離してもOK

【STEP_6】右上
●の部分を絞るように左右に開き、羽を広げた蝶のような形に

【STEP_7】左下
左右の水引を内側から順に1本ずつ引っ張る

【STEP_8】右下
(6)と(7)を繰り返して結びを小さくしていく

【STEP_9】イラスト/左上
左端を持ち上から●に差し込み、左下に向かって内側から順に引く

【STEP_10】右上
右端を(9)で作った輪の●に上から右下に差し込み、水引を引く

【STEP_11】左下
内側から1本ずつ引っ張り、左右の形を整える

【STEP_12】右下
6本を束ねて針金で留め、余分な水引をカット。水引を通して完成

■用意するもの
・生水引/1本(90cm)
・針金/5cm程度
・はさみ

PHOTO/MANABU SANO Illustration/MEGUMI SASAKI WRITING/NAOKO OGAWA
※メトロミニッツ2024年1月号「縁起もの」特集より転載

※記事は2023年12月20日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります