メトロミニッツ、魚、角上魚類、ごはん同盟、白央篤司

【東京都・角上魚類】ごはん同盟さんと一緒に人気鮮魚店へ!ハードルを下げる魚の買い方

更新日:2023/11/20

もっと日常的にいろんな魚が食卓に上ったら素敵だけど、知らない魚は買うのも料理するのもハードルが・・・。というワケで助っ人をお願いしたのが、ごはん同盟のしらいのりこさんとシライジュンイチさん。米どころ新潟で育ち、人生最大の楽しみは日々の晩酌と即答するおふたりと新潟・寺泊発、都内でも大人気の鮮魚店『角上魚類』の小平店へ。フードライターの白央篤司さんと一緒に「なじみのない魚」の買い物にチャレンジ!

左/角上魚類の対面販売コーナーで魚を選ぶ、ごはん同盟のシライジュンイチ(左)さんとしらいのりこさん(中央)、白央篤司さん

メトロミニッツ、魚、角上魚類、ごはん同盟、白央篤司
上/スタッフの牛山剛〈うしやまごう〉さん(の後ろ姿、右)のお話に聞き入る、ごはん同盟のふたりと筆者。のりこさんが「たぶん私、料理研究家のなかで殻むきはいちばん速いと思う(笑)」と自負する甘エビを即座に購入 下/対面販売コーナーには北海道から九州まで全国から水揚げされた多種多様な魚が丸のまま並ぶ

全国から届いた鮮魚がズラリ!
魚で酒のサカナを考える

「ああ、魚の匂いに満ちてますね。実家に帰ってきた感じ」
しらいのりこさんは『角上魚類』の売り場に入るなり、そう言った。ご実家は新潟の鮮魚店で、小さい頃は甘エビの殻むきを毎日のように手伝っていたのだそう。

「だから魚を食べるのはもう毎日で。冬になるとブリがおいしくなってくるねえ…なんて季節を感じたり、お祭りの日は屋台でイカ焼きを手伝ったりもしてたんですよ。あれっ、見たことない魚があります!」

目に留まったのはウシガンコなる魚だった。調べてみるとミシマオコゼとも呼ばれるよう。

「おすすめの食べ方は唐揚げですね、頭を取って三枚におろして。下処理は無料でやりますので、必要なら言ってくださいね」とスタッフの牛山さんが気さくに教えてくれる。

メトロミニッツ、魚、角上魚類、ごはん同盟、白央篤司
これがウシガンコ(ミシマオコゼ)。フグのような、トゲトゲの背びれがないオコゼのような見た目。2尾250円と財布に優しい子

「食い意地」は誉め言葉!
アツい視線の先には・・・

「魚屋育ちでも知らない魚、まだまだいっぱいあります。だから楽しい。そして下処理してくれるのは嬉しいですよね。鮮魚コーナーのあるスーパーなら、頼むとやってくれるところは多いはず。生ごみも出ないし、私もよくお願いしてます。日常の料理はラクが一番だもの」

店奥の一番大きな棚へ移れば、20種を超える魚が一尾そのままずらりと並んで壮観だ。新潟で揚がった魚はもとより、北海道から九州まで水揚げ地も様々に。おや、のりこさんがブリのかまを凝視している。「あーもう、宝の山よォ! 大好物なんです」と興奮気味だ。「いや、今回はあまり身近でない魚を選ぶのがテーマだからね」と夫・ジュンイチさんの的確なツッコミが入る。

身の厚いブリかまを見つめていたのりこさんの目線の強さと熱さが私は忘れられない。「食い意地の張った」というのは誉め言葉だと私は思っているが、のりこさんのそれは相当なものだと感じ入った。

上/ウシガンコのさばき方を説明する牛山さんの手元を動画に収めるのりこさん。牛山さんの黄色の帽子には「私は親切係です」の文字。魚の食べ方や調理法についての幅広い知識と楽しいトークスキルをもつスタッフの目印だ 下/刺身でもいただける鮮度の立派なオオモンハタ

お店を上手に活用するのが吉。
知らない魚はすぐに質問!

「クロムツもおいしそう・・・。大きめの魚を一尾で買ったら、まず半身を刺身にして楽しんで、残りは煮つけや揚げものや味噌漬けなんかにしてます。こういうのは一尾買いならではの楽しさ。あれ、隣のお魚はなんでしょう」

褐色にドットの柄が印象的な魚の名前はオオモンハタだった。なるほど、ドット模様が「大紋」なわけだな。先の牛山さんに聞けば「ぶつ切りにして鍋にするといいですよォ、アラからすっごくいい出汁が出る」と熱いリコメンドが返ってくる。おふたりは笑顔で「ください!」と即決された。今日はホウボウもおすすめとのこと。

「ホウボウってさばき方が分からない、どうやるんですか?」と問えば、牛山さんは一尾を手に取り「まずはここを落として」と指し示してくれる。のりこさんはすかさず動画におさめ出した。うーん、買い物の場が勉強の場に早変わり。さすがだなあ。

メトロミニッツ、魚、角上魚類、ごはん同盟、白央篤司
無料の調理加工は、魚屋歴31年で店いちばんのベテラン、園田伸悟〈そのだしんご〉さんをはじめとするプロフェッショナルが担当

基本の調理パターン押さえて
魚の多様なおいしさを!

「分からないこと、どんどん聞いちゃうほうなんです。しかし知らない魚がいっぱいで興奮しますねえ。私ね、思いがあるんですよ。今のスーパーって魚種が少ないでしょう。少ないところだとマグロ、ブリ、サバ、サケぐらい。世の中にはいろんな魚があるってことを目にする機会がどんどん失われている」

多様な魚がいて、多様なおいしさがあることを知る機会が激減している現状を憂慮されているのが伝わってきた。

「スーパーの方々だって売れなければしょうがないから、分かるんですけどね・・・。ただ料理雑誌の仕事をしていると、本当に魚料理をお伝えする機会も減っていると感じます。魚の調理法って焼く、煮る、揚げるなど基本のパターンは多くないんです。それに慣れると大体の魚があてはまるから、レパートリーが広がりやすいんですよ」

メトロミニッツ、魚、角上魚類、ごはん同盟、白央篤司
上/愛媛県産オオモンハタ、新潟県産ウシガンコ、島根県産マトウダイ、長崎県産イシガキダイの4種をお買い上げ。締めて6550円也(サイズや入荷状況で価格は変動します!) 下/園田さんの巧みな包丁さばきで見る間に三枚おろしに。アラもお持ち帰り(このあと大活躍します)

ユニークな魚4種をチョイス!
さてさて今宵のサカナは・・・

魚はレンジにかけても身が硬くならないから、ラップして蒸し焼きにするのなんて簡単でおいしいのでぜひ覚えてほしい、と語られていた姿にとても真摯なものを感じた。たしかに日本の食卓における魚食の存在感は薄くなるばかり。魚といえば回転寿司かパック寿司、あるいは定食屋さんで食べるのみという人が年々多くなっているように思う。

しらいのりこさんからは料理研究家として、鮮魚店で育った人間として、もっと家で魚を料理する人を増やしたい…という気概のようなものを感じた。

と、話がちょっと硬くなったが最終的にごはん同盟さんのカゴにはウシガンコ、オオモンハタのほかにイシガキダイとマトウダイも入った。いずれも実にユニークなルックス、味わいはいかに。さあ、これらがどんな晩酌のアテになったのかは次のページでご確認を。ごはん同盟恒例、晩酌タイムのはじまり、はじまり。

DATA&PROFILE

メトロミニッツ、魚、角上魚類、ごはん同盟、白央篤司
角上魚類 小平店

■訪ねたお店■角上魚類(かくじょうぎょるい)

新潟県長岡市の寺泊(てらどまり)発祥の鮮魚専門チェーン。毎朝、東京・豊洲と新潟の市場から専属のバイヤーが仕入れて直送する鮮魚は、鮮度はもちろん、東京では珍しい魚も並ぶなど豊富な品揃えで、まさに「日本海、まるごとやって来た。」のキャッチフレーズの通り! 首都圏近郊と新潟に22店舗を展開、都内には小平店のほか赤羽店、南千住店、日野店の計4店舗

角上魚類 小平店

TEL.042-470-1530
住所/東京都東久留米市柳窪2-8-16 
営業時間/平日10:00~19:00 土・日・祝9:00~
定休日/無休

左から、ごはん同盟のシライジュンイチさん、同しらいのりこさん、筆者の白央篤司さん

■案内■ごはん同盟

ごはんどうめい/しらいのりこ(写真中央、調理担当・料理研究家)、シライジュンイチ(写真左、企画担当・ライター)夫妻による炊飯系フードユニット。ともに新潟県出身、「ごはんの友は酒の友」が合言葉。近著の『ごきげんな晩酌 家飲みが楽しくなる日本酒のおつまみ65』(山と溪谷社)は、速攻系からひと手間系まで縦横無尽に家飲みを充実させる、楽しいレシピが満載
しらいのりこさんのInstagram
シライジュンイチさんのNOTE

■取材・文■白央篤司

はくおうあつし╱フードライター、コラムニスト。「暮らしと食」、郷土料理をテーマに執筆。『台所をひらく』(大和書房)ほか著書多数。名もなき鍋を通して現代社会を生きる人々の生活や思い、人生に迫るルポエッセイ『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)が好評発売中
NOTE
Instagram

PHOTO/TAKANORI SASAKI WRITING/ATSUSHI HAKUO
※メトロミニッツ2023年12月号に加筆して転載 

※記事は2023年11月20日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります