民藝、オズモール、秋田県、八橋人形

優しい音色のおまじない。江戸時代から伝わる、手のひらの郷土玩具/秋田県・秋田市「八橋人形の鳩笛」

更新日:2022/01/20

ローカルに暮らすあの人が教えてくれる、町で生まれた手仕事もの(=民藝ちゃん)の話。今回は秋田県・秋田市で作られる、八橋人形の鳩笛を紹介。秋田県を拠点に、地域に息づく手仕事を伝える「Nowvillge」の主宰・今村香織さんが、民藝ちゃんにまつわるローカルの物語をお届けします。

土の音色がママにも優しい郷土玩具の鳩笛

尾の先にある穴を吹くと、ホーホーと音が鳴る。少し低めの、優しい音色だ。胴体の原色カラーはアーティスティックな配色だが、不思議と馴染んで可愛らしい。

江戸時代から伝わる八橋人形は、型に詰めた粘土を焼いて作られている。製作するのは八橋人形伝承の会。後継者不在で一度は途絶えてしまった八橋人形だが、郷土玩具コレクターでもあった梅津秀さんが「秋田の伝統を守りたい」と仲間たちと会を立ち上げ、2015年に復活させた。鳩笛は、会員が持っていたものをもとに2年前に復刻されたもの。音が出るよう吹き穴の角度を何度も修正して、ようやく「完成したよ」と知らせを聞いたときは、嬉しさで心が震えた。古い文献で鳩笛を知り、復刻を心待ちにしていたからだ。

鳩笛は、古くから幼児の「のど詰まり除け」として親しまれ、秋田にも子供が喉に食べ物を詰まらせたときにホーホーと吹くとつかえが取れたという言い伝えがある。当時、私は2歳と4歳の子育て真っただ中。小さなお口でもぐもぐ頬張ったかと思えばケホケホむせて、子供の食事は心配が絶えなかった。

おまじないだとわかっていても、子育ての不安と孤独にそっと寄り添ってくれる鳩笛の存在が心強かった。きっとこうしてたくさんの母親が救われてきたのだろう。だから今も鳩笛の横には、とびきりの笑顔がある。

文・今村香織

民藝ちゃんDATA

■教えてくれた人/今村香織さん
地域に息づく手仕事に惹かれ問屋業を行う。2018年に秋田に移住。手仕事ワークショップの開催やフリーペーパー「いま、秋田村から」を発行
>>Nowvillage

■作った人/八橋人形伝承の会
八橋人形の伝統を守るべく有志で2015年に結成。代表は梅津秀さん。現在は、秋田市老人福祉センター内に工房を構えて制作している
>>八橋人形伝承の会

■買えるところ/
>>Nowvillage オンラインショップ

PHOTO/MANABU SANO
※メトロミニッツ2022年2月号「わたしの町の民藝ちゃん」より転載

※記事は2022年1月20日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります