オズモール、メトロミニッツ、やちむん、tituti OKINAWAN CRAFT、金城有美子

~だって、青が好き~沖縄の海を閉じ込めた、サンゴブルーのやちむん

更新日:2021/09/20

「神秘なブルーに満ちた国」。かつて日本を訪れたラフカディオ・ハーンは、藍色があふれる日本をこう表現したそうです。そして現代の沖縄県にもまた、偏愛にも近い、神秘の青がありました。沖縄県出身のやちむん作家・金城有美子さんが手掛ける、青いうつわの物語。

オズモール、メトロミニッツ、やちむん、tituti OKINAWAN CRAFT、金城有美子

沖縄の海を映し出した、美しきサンゴブルーのやちむん

まるで心を透明にしてくれるような、色鮮やかな青色の器たち。手がけるのは、沖縄県出身のやちむん作家・金城有美子さんです。

沖縄の言葉で焼き物を意味する「やちむん」と聞くと、ぽってり厚みがある形状と、唐草文様を思い浮かべる人が多いかもしれません。

「どちらも昔ながらの特徴ですが、文様だけ見ても、筆遣いが力強かったり、モダンにアレンジされていたり。表現はさまざまで、特別な定義はないんです。文様はあってもなくても、どんな色や形でも、作風や技法は自由。作家の個性を大切にして尊重し合えることこそ、やちむんの大きな魅力だと思います」と、金城さんは話します。

オズモール、メトロミニッツ、やちむん、tituti OKINAWAN CRAFT、金城有美子

沖縄県立芸術大学の1期生として陶芸を学び、大学院を経て、作家活動をスタートさせた金城さん。茶道の世界観が好きだったことから、モノトーンや渋い色合いの作品を作り続けてきました。転機となったのは、2010年、那覇市内に工芸作家仲間と開いたクラフトショップ「tituti OKINAWAN CRAFT」。色彩のある紅型(びんがた)や織物と同じ空間に、自分のモノトーンの作品が並ぶことにバランスの悪さを感じたそう。

「どうしたら(他の作品と)調和できるのだろうと考え始めた頃、中学生のワークショップを受け持つことになって。中学生にモノトーンは渋すぎると思い、明るい色の釉薬を用意しました。彼らの器を焼いて、窯を開けたとき、自分でも予想外の展開。かわいいなー、いいなーって、カラフルな色彩がすんなり心に入ってきたんです。私が次に進むべきステップはこれかもしれないと、大きなヒントになりました」

オズモール、メトロミニッツ、やちむん、tituti OKINAWAN CRAFT、金城有美子

そして、パステルカラーを使ったレインボーシリーズを生み出すと、自然な流れで青の作品にも取り組み始めます。イメージは沖縄の青い海。「20代の頃、ペルシアンブルーの器の美しさに感激して、大学院ではブルーを研究しました。個展でもブルーの作品を出展していたので、実はなじみのある色なんです。でも理想のブルーを作るのは思った以上に大変。沖縄の土は赤土なので色が沈むし、釉薬に含まれる鉄分の割合や、焼く温度で色合いも変わってしまう。オブジェならそのとき限りの色でいいのですが、シリーズ化したかったので、安定感も必要。試行錯誤の繰り返しでした」

信楽の白土をベースに、発色のよい電気窯で1150度で焼くなど、6年もの歳月をかけてようやく理想のブルーの安定した出し方を掴んだ金城さん。やがてその色は「サンゴブルー」と呼ばれるようになりました。

オズモール、メトロミニッツ、やちむん、tituti OKINAWAN CRAFT、金城有美子

毎日の食卓に澄み切った青い海の情景を

今では金城さんの代名詞と言える作風となったサンゴブルー。平皿やカップなどを手にしてみると、一つひとつ表情が違うことに気付きます。透明感のあるブルーだったり、濃いめのブルーがアクセントになっていたり。海面に砂浜を散りばめたようなきらめきを感じさせるものもあって、刻々と表情を変えていく、海の風景が目の前に現れたようです。

「ブルーは私にとって特別な色だったように思うんです。私の地元・南風原町(はえばるちょう)は現在の沖縄県の市町村で唯一、海に面していない町。海岸まで車で20分ほどではあるのですが、子供のときは夏休みにたまにしか連れて行ってもらえなくて。きっとその頃から、青い海への思いが、おのずと募り始めたんですね」

オズモール、メトロミニッツ、やちむん、tituti OKINAWAN CRAFT、金城有美子

ところで、ブルーの器は使いこなすのが難しそうな印象がありますが、どんな料理に合うのでしょう。

「例えば大きい平皿に、卵料理、サラダ、パンをのせて朝食プレートに。パプリカやトマト、マンゴーなど色鮮やかな食材も映えます。唐揚げや炒め物など普段のおかずにもしっくりハマる。なにげなく盛り付けても華やかに見えるので、重宝しますよ」。日々の食卓にそんな彩りがあったら、ごはんやおやつの時間がもっと楽しくなりそうです。

■お話を伺った人/金城有美子さん

沖縄県出身。1997年、沖縄県立芸術大学大学院陶磁器科修了。同年より活動を始め、国内外で展示やインスタレーションを行う。2010 年には那覇市内に工芸作家たちと「tituti OKINAWAN CRAFT」をオープン

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手から手へつなぐカラフルな沖縄工芸

2010年に誕生した、沖縄の工芸品を作る人と、使う人をつなぐクラフトブランド「tituti OKINAWAN CRAFT」。金城さんはその立ち上げメンバーの1人。織物、紅型の作家や、コーディネーターとともに運営に携わっています。

壺屋やちむん通りの近くにあるブランドが直営するこちらのショップでは、メンバーでもある3人の作家の作品を常設販売。店番は交代制。金城さんも店頭に立ちます。

「お客さんとのコミュニケーションは私にとってもいい刺激になります。5歳の女の子が私のマグカップを気に入ってくれて、自分のおこづかいで買ってくれたこともありました。このショップで沖縄の工芸品に興味を持って、好きになるきっかけになったら、すごく嬉しいですね」

tituti OKINAWAN CRAFT

ティトゥティ オキナワンクラフト
TEL.098-862-8184
住所/沖縄県那覇市牧志3-6-37
営業時間/9:30~17:30
定休日/火

PHOTO/MANABU SANO WRITING/MIE NAKAMURA(JAM SESSION)
※メトロミニッツ2021年10月号特集「愛しのうつわ」より転載

※記事は2021年9月20日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります