デニムの町・岡山発!ファクトリーブランド「CIOTA」の名作デニムがアツい

更新日:2021/05/20

ジャパンメイドの服といえばいま、ローカル発の「ファクトリーブランド」が元気です。よく知るあのブランドの縫製や生地製造を担ってきた“影の立役者”たる工場。彼らが独自の世界感とオリジナルのアイテムを引っ提げ、ファクトリーブランドとして立ち上がり、注目を集めています。今回は、圧倒的な質の高さと徹底したこだわりが詰まった至極の1着を発信する、「CIOTA」の名作が生まれる現場を訪ねました。

都内にある「CIOTA」のショールーム。2021年A/Wの新作アイテムが整然と並ぶ

初志貫徹のものづくりで進化し続ける日本の最高峰

服好きやバイヤーたちから熱視線を浴びる「CIOTA」。2019年のA/Wより、岡山県の縫製メーカー「SHIOTA」のファクトリーブランドとして本格始動しました。立ち上げたのは、アパレルメーカーに20年間勤めたデザイナー&ディレクターの荒澤正和さん。長い間、アパレル業界に身を置いた結果、ファクトリーブランドという形に行き着いたそう。

「アパレルメーカーにいる頃、デザイナー業に限界を感じていました。売れるものばかりを求められたり、服に造詣の深くない人のひと声でデザインがひっくり返ったり・・・。本当にいいものを作りたいと思っても、服に関わる人が多いほどそれがかなわなくなる。そう憤りを感じているとき、『SHIOTA』の社長に声をかけてもらいました。原料の選別から生地選定、デザイン、縫製仕様、縫製まで、服作りのすべての工程を一貫して行えるファクトリーブランドなら、自分が思い描いた服が作れると思ったんです」

荒澤さんのデザインは、ミリタリーや古着からインスピレーション

当時より国内外の有名ブランドから高い評価を受けていた「SHIOTA」は、デニムやワークパンツといったカジュアルウェアを得意としていました。アパレル業界でスーツやドレスなどフォーマルウェアも手がけてきた荒澤さんが、最終的にブランドの主体として選んだのは、やはりカジュアルウェアでした。

「餅は餅屋と言いますからね。それに僕自身、40代に入って世間の洋服の着心地であったり、ファッションだったりに窮屈さを感じていたんです。見た目がいいから、トレンドだからって、素材感をはじめとした不快適さを我慢する。もうそんなファッションにとらわれたくないなって。だからライフスタイルの延長線上にあるような、自分が主体となる服を作ろうと決めたんです」

デニムの形は、メンズ・レディース合わせて全5種類

こうして荒澤さんがたどり着いたのが、ベーシックなカジュアルウェア。どれも華美な装飾がない分、着る人が主役になれる服ばかり。さらに、今やブランドの代名詞的な素材となっている超長繊細綿のスビンコットンもまた、「CIOTA」を語る上で欠かせないアイテムです。生産量が圧倒的に少ない貴重なスビンコットンを、特にデニムに使うのはアパレル業界で異例中の異例でした。

「織るのも難しいし、染めむらも出やすい。トラブルの多さは通常のコットンの比じゃないですね(笑)。だけど、僕が追い求めるなめらかでしなやかな着心地の服作りには、必要不可欠だったんです」

素材から縫製、形まで徹底的にこだわり抜く

荒澤さんがそう語る「CIOTA」のデニムは、スビンコットンを横に打つことでコンフォータブルな仕上がりを実現。それでいてオーセンティックな見た目まで追求しています。「完璧な1着」と評されることも多いけれど、荒澤さんは毎シーズン細かくブラッシュアップ。丹精込めて作ったこのウェアを、大のデニム好きな荒澤さんが履かないのは、最高峰の1着を常に追い求めているから。

「みんなにはネタだって言われます(笑)。だけど正直なところ、毎期、どこのブランドにも引けを取らないくらい、最高の出来だと自負しています。それでもやっぱり100点とは言い切れないのがデザイナーの性ですね。この先もトライ&エラーをやめることなく繰り返して、デニムをはじめとした『CIOTA』の服を進化させ続けます。僕はきっと死ぬまで最高峰のクオリティの服を追い求めると思います」

コートにもスビンコットンが使われている

現在4期目を迎えている「CIOTA」。知名度も売り上げも右肩上がりながら、ものづくりへの思いはブレることを知らない。このフィロソフィーこそが、「CIOTA」が愛される理由なのかもしれません。

「技術や素材を追求するのは当然のこと。僕はそこに信頼を加えたいと思ってるんです。そのためなら、ブランドの理念や背景を余すことなく伝えるし、服1着がどんな工程を経て作られているかもきちんと説明します。まだまだ半人前ですけど、こうして信頼を築きながら、この先もいいものを作ることを絶対に諦めません」

有名クリエイター陣が制作した、「CIOTA」の世界観が表現されているブランドブック

CIOTA

岡山県に本拠を構える縫製工場・生地製造販売会社、「SHIOTA」が立ち上げたファクトリーブランド。ブランドの代名詞ともいえる「スビンコットン」を使用したカジュアルウェアを手がける

PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI WRITING/MAKI FUNABASHI
※メトロミニッツ2021年6月号特集「着ることで変わる、日本の服」より転載

※記事は2021年5月20日(木)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります