民藝、オズモール、島根県大田市、椿窯、温泉津

暮らしに溶け込む美しい器。島根県・大田市「紅並釉 ぐい呑/呉須 面取汲出し碗」

更新日:2021/03/20

ローカルに暮らすあの人が教えてくれる、町で生まれた手仕事もの(=民藝ちゃん)の話。今回は島根県・大田市の「紅並釉・ぐい呑」と「呉須・面取汲出し碗」を紹介。島根県出身の写真家・七咲友梨さんが、民藝ちゃんにまつわるローカルの物語をお届けします。

左/紅並釉・ぐい呑 右/呉須・面取汲出し碗

くりかえし、くりかえして、いま

「私は昔、木村伊兵衛先生のかばん持ちをしていたんですよ」。壁に飾られた大判のモノクロ写真に目を奪われているわたしに声をかけてきたのは、温泉津にある椿窯の荒尾浩一さん。 

写真や焼き物、浩一さんの人生についてたくさん話を聞いた。ひとつのぐい呑みが目に止まった。「わ。これでお茶を飲んだらきっと素敵」と想像に耽っていると「差し上げますよ」と笑っている。そのスッとした振る舞い。時代劇に迷い込んだみたいな感覚にくらくらした。お礼に写真を送ると、今度はお手紙が届いた。筆書きの達筆で、全部は読み解けなかったのだけれど。

久しぶりに連絡すると浩一さんは亡くなっていて、息子の浩之さんが継いでおられた。椿窯には今も変わらず火が灯る。温泉津は民芸の焼き物の町で今や珍しい現役の登り窯があり、3つの窯元が暮らしの道具として美しい器を作っている。

わたしが両親たちと作る「ソットチャッカ」も日常のお茶。裏山の野花や野草もお茶にして飲む。特別なことではない、いつもの味。でも淹れ方や茶器を変えるだけで感じ方が変わる。小さなぐい呑みでは、スーッと香りや味に潜り込む。毎日使う湯呑みでは、ごくごく、ほおっと。浩一さんのぐい呑みと、浩之さんの湯呑み。ながい時を感じるお茶の時間。

民藝ちゃんDATA

■教えてくれた人/七咲友梨さん
島根県出身。役者として活動後、写真家へ転身。雑誌、広告、映像撮影など。写真集『朝になれば鳥たちが騒ぎだすだろう』、島根のクラフトティ「SOTTO CHAKKA」

■買えるところ/椿窯
TEL.0855-65-2286
住所/島根県大田市温泉津町温泉津イ3-4
営業時間/9:00~17:00
定休日/不定休
※ 4/17(土)、4/18(日)春のやきもの祭り開催予定。詳細はHPをご確認ください

PHOTO/MANABU SANO TEXT/YURI NANASAKI
※メトロミニッツ2021年4月号「わたしの町の民藝ちゃん」より転載

※記事は2021年3月20日(土)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります