山の時間が詰まってる。岩手県・盛岡市「沢胡桃のかごバッグ」_わたしの町の民藝ちゃん【連載】

更新日:2021/02/20

メトロミニッツで連載中の「わたしの町の民藝ちゃん」は、ローカルに暮らすあの人が教えてくれる、町で生まれた手仕事もの(=民藝ちゃん)の話。第1回目は岩手県・盛岡市の「オズのかごバッグ 沢胡桃の手提げ籠 ワンハンドル」を紹介。webマガジンLITERSを運営する菅原茉莉さんが、民藝ちゃんにまつわるローカルの物語をお届けします。

「いつか」は今からだっていい。わたしと進むかごバッグ

去年の夏、山菜採りに行った。見上げれば木漏れ日。聞こえるのは鳥や虫の声と、川の水音。前を歩く背中を追う、自分の荒い息遣いさえも心地いい。山菜を探しながら、山の先輩がそばにある木を指差した。「あれが胡桃だよ。かごを編むのに使うんだ」。すると、さっきまで無彩色だった林がところどころ、キラッ、キラッと光って見えてくる。山は宝なのだ、と思った。比喩でもなんでもなく。「ねえ、あの木はかごにどう?」と先輩の背中に声をかけると、まぶしそうに目を細め「そうだな、3年・・・5年経ったら、ちょうどいいと思うよ」と返事が戻ってきた。3年・・・5年・・・。山と過ごす時間の感覚に、自分の時計の針まで少し速度を落としたような気がした。

ずっと、「いつかは欲しいもの」だった沢胡桃のかごバッグ。そんなわたしに、「作り始めたきっかけは『いつか』と思ってる人にこそ届けたかったから」と話してくれたのが、select shop OZの店主であり、かご職人の佐々木さんだ。正直、このバッグと過ごす時間は、わたしにとって少し背伸びなのかもしれない。いやいやいや、3年かかっても、5年かかってもいい。山で過ごしたゆるやかな時間の流れを思い出しながら、のんびりと、自分らしく、これに似合う人になりたい。

民藝ちゃんDATA

■教えてくれた人/菅原茉莉さん
岩手県在住。聴く、撮る、書く人。webマガジンLITERS 運営。「盛岡という星で」編集部。podcast「喫茶もりおか」では、盛岡にまつわる方々との日常会話を毎週お届けしています

■買えるところ/select shop OZ
TEL.019-653-2757
住所/岩手県盛岡市大沢川原1-3-24
営業時間/11:00~19:00
定休日/不定休

PHOTO/MANABU SANO TEXT/MARI SUGAWARA
※メトロミニッツ2021年2月号「わたしの町の民藝ちゃん」より転載

※記事は2021年2月20日(土)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります