「日本を世界の銘醸地に」その思いが映画化。日本ワインと共に歩む醸造家・安蔵光弘さんインタビュー

~日本を世界の銘醸地に~その思いが映画化。日本ワインと共に歩む醸造家・安蔵光弘さんインタビュー

更新日:2022/10/28

明治10年の創業以来、日本ワインが世界中の人たちに愛され、親しまれるお酒になることを目指してワイン造りに取り組むメルシャン。11/4(金)からは、シャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャーを務める、安蔵光弘(あんぞうみつひろ)さんの半生を描いた映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』が公開に。今回は安蔵さんに、日本ワインに賭ける熱い思いや、映画のエピソードについて伺いました。

日本の風土が生み出す、日本でしか造れないワインの魅力

日本の風土が生み出す、日本でしか造れないワインの魅力

「ワインを造りたい」という夢を抱き、1995年にメルシャンに入社した安蔵さん。日本のワイン業界を牽引した浅井昭吾(ペンネーム・麻井宇介)さんとの交流を通してワイン造りへの情熱がさらに増し、“日本を世界の銘醸地に”するためにワイン造りに力を注いできた。そんな安蔵さんに改めて日本ワインの魅力を尋ねると、そのおいしさの背景には日本の土壌や、日本人ならではの性質があるという。

「日本ワインとは、日本で採れたぶどうだけを使って、日本で製造されるワインのこと。日本の風土で育ったぶどうは繊細でやわらかく、優しい味わいが特徴で、自然とワインにもその特徴が現れます。この“繊細で優しい味わい”はほかの食材にも共通していて、最近ではそんな日本の土壌で育った食材を使った料理が、世界中から評価されていますよね。
ワインと料理とのペアリングに“同じ産地のものを組み合わせる”というセオリーがありますが、日本の食材を使った料理と日本ワインはとても相性がいいんですよ。この味わいの特徴には、単に気候や土壌だけでなく、食材を作る人々の性質も影響しているでしょう。僕はそんな日本の風土を世界に誇っていいと思っているんです」

ワインを通じて出会った奥様とは、今も日本ワインの同志

ワインを通じて出会った奥様とは、今も日本ワインの同志

安蔵さんにとってワインは、なくてはならない存在。同じく醸造家で、ワイナリー「Cave an」を営む奥様の正子さんと、週に4日は一緒にワインを楽しんでいるのだとか。

「日本ワインだけでなく、海外で評価されているワインもよく飲みます。結婚したての頃はお互いが選んだワインをブラインドでテイスティングしたりもしていたのですが、味覚は人によって違うので、 自分が自信を持って選んだワインが相手にとっては欠点が目立つこともあるわけです。当時はそれが理解できなくて、『せっかく用意したのに』とケンカになったこともありました(笑)。いまでは、その日の食事に合わせて僕がワインを選びます。でも、ワイン以外のお酒もビールも飲みますよ。仕事終わりに飲むビールの爽快感は素晴らしいですねぇ」

映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』より。左が光弘の妻・栽培醸造家の安蔵(水上)正子さん(竹島由夏)

映画『シグナチャー』では、安蔵さんと浅井さんとの交流や、正子さんとの出会いについて描かれている。なかにはこんなエピソードも。
「当時はワイン造りの現場で働く女性は本当に珍しくて、浅井さんは僕だけでなく、妻のことも目をかけてくれていました。だから、僕たちが『結婚します』と伝えたときはとても喜んでくださったんですよ。映画のなかに僕たちの結婚式のシーンがあるのですが、実際の結婚式のビデオをもとに作られているんです。それがリアルで恥ずかしくて・・・編集時に監督から『もう少し上映時間を短くしたい』というお話があったときに、ぜひ結婚式のシーンをカットしてほしいとお願いしたのですが、ダメだと言われてしまいました(笑)」

日本ワインの造り手たちと共に、日本を“世界の銘醸地”に
映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』より。メルシャン顧問の浅井(麻井宇介)さん(榎木孝明)

日本ワインの造り手たちと共に、日本を“世界の銘醸地”に

映画の中では穏やかな印象の浅井さんだけど、安蔵さんがメルシャンに入社してから6~7年に渡るお付き合いのなかで、褒められたことは数回しかなかったのだとか。
「とても厳しい方でしたね。ただ、ワインに対する愛情はいつも感じていました。僕が新入社員だった頃、浅井さんは出張で勝沼に来るたびにわざわざ独身寮に泊まってくれて、夕飯を一緒に食べたり、色んな話をしてくれました。僕も浅井さんの本を読んで質問をしたり、ワインを用意して一緒に飲んだり。そんな時間が本当に楽しかったんですよ」

映画『シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~』より。メルシャン ワイン醸造家・安蔵光弘さん(平山浩行)

浅井さんの遺志を受け継ぎ、「日本を世界の銘醸地に」というヴィジョンのもと、現在もワイン造りに携わる安蔵さん。フランスではボルドーやブルゴーニュなどはもちろん、日本も産地の名称がワインそのものの名前になっているように、同じ産地のワイナリーと手を取り合い、“メルシャン”としてではなく“勝沼”として、さらには“日本”全体で価値を上げていくことが大切だと話す。
「浅井さんについては名前もよく知られ、『ウスケボーイズ』という映画でも描かれていますが、この作品を通していまの日本ワインの造り手の方たちに改めてどんな人だったかが伝えられたらと思いました。あまり日本ワインを飲んだことがない方にも興味を持っていただいたり、飲んでみようと思うきっかけになれば嬉しいですね」

シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~

シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~

STORY
ワインを造りたいと勝沼のシャトー・メルシャンに入社した安蔵光弘は、会社の大先輩である麻井宇介(浅井昭吾)と出会い、その見識の高さと人柄に傾倒していく。やがてワインの醸造にも携わるようになり、出会った仲間のなかには、安蔵の妻となる正子の存在もあった――。
いまも現役で「日本を世界の銘醸地」にするべく奮闘する安蔵さんの半生を描いたヒューマンシネマ。「シグナチャー」とは、特別なワインに醸造責任者がサインを入れること。安蔵さんが作詞を担当した主題歌「大地のしずく」も要チェック。
公開
2022/11/4(金)新宿武蔵野館ほか全国公開
監督・脚本
柿崎ゆうじ
キャスト
平山浩行、竹島由夏、徳重聡、山崎裕太、篠山輝信、榎木薗郁也、堀井新太、渡辺大、出合正幸、伊藤つかさ、和泉元彌、田邉公一、黒沢かずこ、板尾創路、大鶴義丹、辰巳琢郎、長谷川初範、宮崎美子、榎木孝明
配給
カートエンターテイメント
ホームページ
シグナチャー~日本を世界の銘醸地に~

【特集】飲んだら幸せ!OSAKE JIKAN

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今日は誰となにを飲む? 気の合う仲間と盛り上がったり、料理との組み合わせに感動したり、旅先で現地のお酒を試してみたり・・・。編集部が楽しい“OSAKE JIKAN”を紹介します。

PHOTO/KAZUHITO MIURA WRITING/MINORI KASAI

※記事は2022年10月28日(金)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります