風土が生む美味を求めて「平安時代から続く鮭の町へ」/新潟県村上市

風土が生む美味を求めて「平安時代から続く鮭の町へ」/新潟県村上市

朝日連峰を源流とする三面川(みおもてがわ)が流れる新潟県の城下町、村上市。「鮭のまち」としても知られ、平安時代から続く鮭料理は100種類とも。鮭1匹を余すことなく調理する食文化を、この地ならではの料理や酒、温泉とともに案内します

更新日:2024/02/20

「鮭のまち村上」の歴史は、千年以上前にさかのぼります。平安時代には、京都の朝廷に鮭の加工品5品目が貢納されていたという記録が残り、鮭は城下町・村上の大切な収入源でした。

しかし江戸時代後期、秋鮭漁が年々不漁となり村上藩の財政を圧迫。その窮地を救ったのが、鮭を観察し続けてきた侍の青砥部平治。鮭には回帰性があることに着目し、鮭を一定期間保護すること、さらに三面川に鮭が産卵しやすい人工の分流・種川を作ることを提言。その後、村上藩は世界で初めて鮭の自然ふ化増殖に成功。以来、鮭を守り、育て、大切にしてきた村上。鮭を頭の先から中骨、内臓、エラに至るまでも余すことなく食す文化が今も残り、工夫を凝らした鮭料理の数は100を超えるそう。

戦後、鮭料理が廃れかけ、「鮭文化を絶やしてはならない」と、昭和30年代に造り酒屋から転業した鮭の加工販売専門店「千年鮭 きっかわ」。現在は、15代目の吉川真嗣さんが、村上で初めて鮭料理を商品化した先代の想いを受け継ぎ、すべて手作り、無添加の鮭製品を作っています。店舗奥の天井一面にずらりと吊るされた全長80~90㎝の鮭。古来より伝わる発酵文化のすごさを実感できる光景です。鮭料理の横綱と言われる「鮭の塩引き」の仕込みが始まるのは11月半ば。粗塩を引き、4~7日漬けた後、北西の冷たい風に当て、3~4週間ほどじっくり干します。

「日本海側からの北西の風を受けた鮭はアミノ酸発酵により熟成し、ほかの鮭では味わえない独特のうまみが生まれます。村上の気候風土だからこそできる、奥深い味わいなんです」と吉川さん。尻尾からぶら下げるのは、鮭を「首吊り」にしないというだけでなく、頭から余計な脂が全身に回り、発酵の邪魔をさせないという作り手の理由も。冬の町屋を歩くと、軒先に塩引き鮭が吊るされた風情ある光景が今もあちこちに。昔から、一家の主の仕事と言われる塩引き鮭。村上の家庭で親しまれる大みそかのごちそうであり、これがなくては新年が迎えられないという伝統料理でもあります。

塩引き鮭を半年以上かけて熟成させた「鮭の酒びたし」は、7月に行われる400年以上続く歴史ある『村上大祭』に欠かせない逸品で、食前にお酒をかけて食べる風習から名付けられた珍味です。かみしめるほど口の中で広がる発酵のうまみを堪能し、鮭とともにあるこの町の暮らしを感じよう。

食も酒も温泉も! 村上の町で1泊2日の美食旅体験

県内で最大の面積を誇る村上市は、町屋が連なる城下町としても知られる町。また、海、山、川と自然が豊かで、港町、北限の茶処、米処という顔も持つ注目の美食スポット。新潟の食の魅力を発信するために2023年にスタートした「新潟ガストロノミーアワード」でも、数多くの飲食店や特産品が受賞しています。

村上ならではの美食を堪能する旅。1日目は、独自の鮭文化が根付く城下町を散策しながらスタート。ランチは、「千年鮭 きっかわ」の近くにある「井筒屋」で伝統の鮭料理をたっぷりと。町屋造りの趣きのある空間でお腹も心も満たされたら、三面川沿い、鮭公園内にある日本初の鮭の博物館「イヨボヤ会館」へ。“イヨボヤ”とは村上の地の方言で“ サケ(鮭)”のこと。三面川の鮭に関する歴史や文化を学べるだけでなく、三面川の分流「種川」の川底を見られる観察窓があるのが驚きです。

宿泊は、村上市内から車で約30分。荒川峡温泉郷の中で最も上流、江戸時代からの歴史ある鷹ノ巣温泉郷に足を延ばして。隠れ宿として人気の「吊り橋と離れの宿 鷹の巣館」。大自然に囲まれた露天風呂付きの離れの客室で、地産の食材を組み合わせた旬彩懐石料理は舌にも目にも楽しい。

豊かな食を満喫する2日目。少し早起きして朝市をのぞくと、春は山菜など旬の食材が並び、調理法など聞きながら買い物すると時間が経つのはあっという間! 昼食には地物食材にこだわる「旬菜懐石 拓」でコースを味わいます。素材のうまみと職人の匠の技が光る料理には感動。良質な酒造好適米を産出するこの地は日本酒も美味。創業200年以上の「宮尾酒造」を訪ね、銘酒を買って、家で鮭の酒びたしや塩引鮭などとともに旅の余韻に浸るのも一興。

1泊2日の美食旅モデルコースはこちら
DAY1:鮭文化に触れる 
DAY2:土地の恵みを満喫

DAY1【12:00】

町屋にある食事処で
鮭料理のフルコースを

「千年鮭 きっかわ」の塩引き鮭をはじめ、すべて手作り・無添加の鮭加工品・珍味を、「鮭料理8 品」3,025円などコース料理で提供。炭火で焼いた塩引き鮭は、土鍋で炊いた関川村産コシヒカリと相性抜群。〆は村上茶を使用した出汁で鮭茶漬けに。大粒でやわらかないくらを丁寧に醤油漬けした「極上 豪快はらこ丼」もおすすめです。

井筒屋

いづつや
TEL.0254-53-7700 
新潟県村上市小町1-12 
営業時間/11:00~14:00(LO)
定休日/1〜 2月/火・金、3〜9月/火、年末年始定休 
◆新潟ガストロノミーアワード2023 受賞

【14:30】

日本初の鮭の博物館で
鮭の歴史や文化を学ぶ

鮭の生態や伝統漁法、村上の鮭文化が学べる日本初の鮭の博物館。三面川の分流“種川”に設置された10 カ所の観察窓でウグイやアユ、産卵のために遡上してきた鮭など、季節ごとに移り変わる川の中の様子がのぞける。

イヨボヤ会館

イヨボヤかいかん 
TEL.0254-52-7117 
新潟県村上市塩町13-34
営業時間/9:00~16:30 
定休日/無(年末年始を除く) 
入館料(一般)600 円

【17:00】

大自然に包まれながら
美食と秘湯をひとり占め

磐梯朝日国立公園内の荒川沿いに佇む、江戸時代初期より地元の湯治湯として親しまれてきた秘湯の宿。大庭園に9棟点在する離れの客室では、川のせせらぎを聴きながら自家源泉掛け流しの露天風呂が堪能できる。夕食は、ノドグロの塩焼き、特産のシイタケや山菜の天ぷらなど、関川の自然の恩恵を受けた地産地消の料理に癒されて。

鷹ノ巣温泉 吊橋と離れの宿 鷹の巣館

たかのすおんせん つりばしとはなれのやど たかのすかん 
TEL.0254-64-1009 
新潟県岩船郡関川村湯沢1072 
料金/1泊2食付き1名16500 円~ 
◆新潟ガストロノミーアワード2023受賞

DAY2【9:00】

伝統ある市場で
旬の味覚を堪能し
地元民と触れ合う

大正8(1919)年から続く伝統の市場で、村上の台所として、市内外から大勢の買い物客でにぎわう。近隣の農家で採れた新鮮野菜や果物、魚介類など旬の食材などが並ぶほか、特産品や郷土料理なども販売される。地元の人との会話も楽しみのひとつ。

六斎市

ろくさいいち 
TEL.0254-75-8942( 地域経済振興課 経済振興室) 
開催場所/村上市役所から村上体育館脇の道路 
開催日時/毎月2・7・12・17・22・27日の8:00~11:00過ぎ

【12:00】

地元愛にあふれた
料理人が作る懐石料理

漁船が着くと港へ出向き、山菜が芽吹けば山へ。食材選びに妥協なしの料理人、川崎拓海さんが営む和食店。地元の漁師から直接仕入れた香箱ガニやズワイガニで作る蟹の甲羅詰め、地元の味噌を使ったマダラと里芋のお椀、香味野菜を添えたクマ鍋など、村上の海山の素材を使い繊細で美しい1皿に。完全予約制のコース料理16500円など。

旬菜懐石 拓

しゅんさいかいせき たく 
TEL.0254-62-7478 
新潟県村上市坂町1773-2 
営業時間/11:00~14:00(12:00LO) 17:00 ~ 22:00(19:30LO)
定休日/不定休(完全予約制) 
◆新潟ガストロノミーアワード2023 受賞

【14:00】

村上の自然の恵みが原料となった
純米酒「〆張鶴」をお土産に

創業1819 年の老舗の代表銘柄「〆張鶴 純」(720ml)1750 円。良質な酒造好適米と、朝日連峰からの清冽な伏流水を使用し、ほんのりとした香りとまろやかなうまみが特徴。町屋造りの土間では、年代物の道具や発酵中のタンクなど、酒造りの一端を見学できる。

宮尾酒造

みやおしゅぞう 
TEL.0254-52-5181 
新潟県村上市上片町5-15  
営業時間/8:30~17:30
定休日/不定休

家で旅の余韻を楽しもう! 村上の鮭料理をお土産に

千年鮭 きっかわの「鮭の酒びたし」

食べる前にお酒をかけ、軽く浸して味わう鮭の珍味。千切りショウガを添えて、お酒のアテに。そのまま食べても美味。15g857円、33g1711円なども販売。

千年鮭 きっかわ

せんねんさけ きっかわ
TEL.0254-53-2213 
新潟県村上市大町1-20  
営業時間/9:00~17:30 
定休日/元旦
◆新潟ガストロノミーアワード2023 受賞

越後村上うおやの「鮭ものがたり」

創業200年の老舗が作る鮭製品6 種類の詰め合わせ。塩引鮭・味噌漬・かほり漬・焼漬各2切れと、醤油はらこ160g、酒びたし40g の6品Aセット8890円。

うおや塩引館

うおやしおびきかん
TEL.0254-52-3056
新潟県村上市大町2-25
営業時間/9:00~17:00 
定休日/不定休
◆新潟ガストロノミーアワード2023 受賞

■EVENT 3~4月に「城下町村上 町屋の人形さま巡り」開催

かつての城下町・村上には築100年超えの町屋が数多く残り、各家にひな人形をはじめ、武者人形や土人形などの人形が受け継がれています。「城下町村上 町屋の人形さま巡り」は、普段はなかなか立ち入ることができない町屋(約70軒)に飾られた人形さまを巡る春恒例のイベント。2024年3月1日(金)~4月3日(水)に開かれ、入場無料なので、ぜひこの機会に楽しんで。さらに、9月15日(日)~10月15日(火)には町屋で開かれる屏風まつりも開催予定。

城下町村上 町屋の人形さま巡り

開催日/2024年3月1日(金)~4月3日(水)
開催場所/村上市内各所
料金/無料

INFORMATION■
新潟ガストロノミーアワード特別版開催

新潟の豊かな食材を使い、地域の風土、歴史や文化を料理に映した飲食店、旅館・ホテル、特産品を発掘して表彰する「新潟ガストロノミーアワード」。今年は3月13日( 水) に開かれる、40歳以下の若手シェフを対象とした特別版。下記リンクよりチェック!

PHOTO/MASAHIRO SHIMAZAKI TEXT/NAOMI TERAKAWA

  • LINEで送る
※記事は2024年2月20日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

TOP