柴犬はアレルギーになりやすい?皮膚炎などの症状や対処法、予防法

キリリとした表情と真面目な性格で、世界中で愛されている柴犬。しかし柴犬は、皮膚炎などのアレルギーの発症が多い犬種と言われている。もし、柴犬にアレルギー症状が出た場合はどうすればよいのか、飼い主としてはとても気になるところ。そこで今回は柴犬がかかりやすいアレルギーと、その症状、原因、対処法、予防法などをご紹介。いつまでも大切な愛犬と過ごすため、できることから試してみて。

更新日:2023/04/24

お話を聞いたのは・・・

「chicoどうぶつ診療所」獣医師 林美彩さん

酪農学園大学獣医学部卒業。大学卒業後、自身が代替療法と出会ったことで、動物の体に優しい治療法や食事・環境の見直し、飼い主の心のケアの大切さ等を伝えていくため、2018年に『chicoどうぶつ診療所』を開業。往診を中心に、精力的に診療を続けている。

<著書>
獣医師が考案した 長生き犬ごはん」(世界文化社)2019/12/18
獣医師が考案した 長生き猫ごはん」(世界文化社)2020/11/13
『獣医師が考案した一汁一菜長生き犬ごはん こだわりの安心レシピ&作り置きOK!』(世界文化社)2022/1/26

<公式サイト・SNS>
chicoどうぶつ診療所HP
Instagram:@chico_ah_323
Amebro:https://ameblo.jp/tinkerbell19850323/

1.柴犬が特にかかりやすいのはアレルギー性皮膚炎!その原因は?

日本犬の中でも特に馴染みのある柴犬は、特に犬アトピー性皮膚炎にかかりやすい。これはさまざまなアレルゲンが原因となり、皮膚がアレルギー反応を起こすことで発症するもの。
アレルギー性皮膚炎の原因には、食べ物、花粉、ダニなどが挙げられる。このうち食物アレルギーの場合、アレルゲンを摂取することでアレルギー反応が起こる。

柴犬は、肌のバリア機能が弱く生まれてくる子が多いとされる。花粉やダニなどのアレルゲンが皮膚のバリアをすり抜けて皮膚内に入り込むと、敏感な皮膚の性質からアレルギー皮膚炎を発症しやすい。皮膚炎は子犬の頃よりも、1歳前後の成犬になった時期から発症することが多いと言われている。
ただし柴犬の場合はアレルゲンだけでなく、皮膚バリアの元であるセラミドが少ないことも関係している。

2.柴犬に多いアレルギーの症状は?

アレルゲンに敏感な性質を持っている柴犬には、大きく分けて3つの症状が懸念されることも。アレルギーの主な症状を紹介するので、愛犬に気になる症状が見られた場合はチェックしてみて

2-1.皮膚炎

アレルギー性皮膚炎では、皮膚に赤みや発疹が出ることが多い。痒さから患部を繰り返し噛んだり舐めたりすることで、色素沈着や脱毛などを起こしやすい。また皮膚がべたついたり、フケが出たりすることもある。

2-2.下痢、軟便、嘔吐

体がデリケートな柴犬は、皮膚だけでなく体の内側にアレルギー反応が出ることも。それが下痢や軟便、嘔吐という症状。
主に食べ物を摂取することで起こる食物アレルギー反応で、人間の食中毒などとは違い、その日の食べ物からアレルギー反応があるとは限らないのが困ったところ。そのためアレルゲンを特定するためには、数日間の食べ物のなかからアレルゲンを調べることが必要。

2-3.外耳炎

外耳炎とは外耳に炎症が起きる症状のこと。外耳に腫れや赤みが見られ、痒みから足で耳をしつこく掻きやすくなる。柴犬の場合、食物アレルギーや犬アトピー性皮膚炎が原因で外耳炎に発展するケースも多い。

柴犬の耳は立っているため、一見通気性がよさそうに思える。しかし入り口付近まで被毛があり、湿度がたまりやすいので要注意。特に多湿になる梅雨の時期には、外耳炎が発症、悪化する場合も。

3.柴犬のアレルギーが気になったら動物病院へ

「子犬の頃には何ともなかったのに最近痒がっているようなしぐさを見かける」「どんなごはんを食べても下痢が続く」など飼い主さんが気になることは、すぐ獣医師に相談するのが正しい選択。かわいい柴犬と長く楽しく過ごしていくためには、動物病院のバックアップは心強い味方だと考えて。
なお動物病院で行うアレルギー検査には、「アレルゲン特異的IgE検査」「リンパ球反応検査」「アレルギー強度検査」「除去食試験」などの種類がある。

3-1.治療は早いほうがよい

アレルギーの治療は早期発見がカギ。特に皮膚炎の痒みは軽度なうちに緩和をめざすのがおすすめ。重度になると症状が複雑化し、最悪呼吸困難にまで発展することも。様子がおかしいと感じたら放置せずに、動物病院で検査を受けると治療につなげやすい。

3-2.体質の場合は完治はしない

柴犬のアレルギーは、体質が大きく関係していることも多い。そのため一見完治したように見えても、アレルゲンとの接触で再び発症する可能性があることを覚えておいて。
また、遺伝で同じアレルギーを発症する可能性も。動物病院でアレルゲンを特定する場合、母犬のアレルギー情報などを持っていると、アレルゲンの特定に繋がる場合もある。

3-3.症状が改善されない場合はセカンドオピニオンもおすすめ

動物病院は人間の病院とは違い、得意な分野での看板を上げていないことも多い。しかし、獣医師によって得意分野や治療方法もさまざま。もし、柴犬の状態が改善されないのであれば、一度ほかの動物病院を頼ってみるのもおすすめ。セカンドオピニオンをすることで、体質に合った治療法が見つかる可能性も。

4.普段からできる対策と予防法は?

ここでは、日々の生活のなかで飼い主さんが普段からできる対策と予防法をご紹介。大切な家族の柴犬のためにも、できることから始めよう。

4-1.ブラッシングで古い被毛を取り除く

柴犬は短い毛が密集して生える、ダブルコートの犬種。換毛期がくると大量の抜け毛が起こり、皮膚が蒸れる条件が揃ってしまうことも。古い毛をブラッシングで取り除くことで皮膚の蒸れを防ぎ、皮膚炎の悪化や予防に貢献できる。

しかし、柴犬にはブラッシングが苦手な子も多い。おやつなどで興味を引きながら少しずつ試してみて。ブラシは肌当たりのやわらかいピンブラシがおすすめ。適度なマッサージ効果で被毛と皮膚の間に空気が入り、温度調整に役立つはず。

4-2.シャンプーで皮膚を清潔に保つ

皮膚を清潔に保つことも大切。こまめなシャンプーで清潔にすることは、皮膚に付着する細菌や乾燥によるヒビなどを防ぐきっかけになる。
ただし、柴犬の毛は密集していて乾きにくいため、自宅でのシャンプーよりはトリマーなどのプロにお願いする方法が安心。動物病院にトリミングサロンが併設されている場所があるので、相談してみるのもよい方法。
また、薬浴という方法もあるものの、皮脂を落としすぎてしまうと皮膚炎が悪化するおそれもある。自宅で薬浴をする場合、必ず獣医師に相談してから取り入れて。

4-3.ノミやダニの駆除

ノミやダニは目に見えないだけにやっかいな存在。お散歩で歩く芝生や草むらの中だけではなく、室内にもいるため、ノミやダニにアレルギー反応を示す場合は警戒が必要。一般的には動物病院などで購入できる薬剤を使って駆除するものの、ペット用の虫よけスプレーを併せて使ったり、こまめに部屋の掃除を行ったりして予防するのがおすすめ。
また、ノミやダニに噛まれると適切な処置が必要となるため、動物病院でしっかり駆除してもらうことが大切に。

4-4.ストレスをためない

柴犬だけに限らないものの、ストレスは万病のもと。柴犬の場合はストレスから皮膚を掻くという行動に移る場合も。皮膚を掻き、小さな傷から細菌が入り皮膚炎を発症する可能性があるので、注意が必要。
狭いゲージに長時間入っているなどでストレスがたまると、さらに痒くなって掻き、悪循環に陥りやすい。運動させるなどストレスを溜めないように心掛けて。

4-5.フードをローテーションする

同じフードのみを食べているとアレルゲンが蓄積しやすいため、フードをローテーションすることも有効な対策。アレルゲンが蓄積されないようにして、アレルギーの予防につなげよう。おすすめは、メーカー3社のフードを数カ月ごとにローテーションする方法。

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5.柴犬のアレルギーにとってドッグフードの見直しは重要

柴犬のアレルギーで見落としがちなのがドッグフード。巷には多くのドッグフードが売られており、どのドッグフードが柴犬に合っているのかわからない飼い主さんも多いのでは。ここでは飼い主さんが注意できる、ドッグフードの見直し方法についてご紹介。

5-1.パッケージの裏をチェックしてアレルゲンがないか見る

ドッグフードの袋の裏には必ず原材料が記載されている。その中に、アレルゲンが含まれていれば除去するだけなので、飼い主さんも取り組みやすい予防策と言える。犬がアレルギーを起こしやすい代表的な食材には、牛肉、豚肉、小麦、とうもろこし、大豆などがあるので注意して。

一度アレルギー検査をすると、どんなものにアレルギーがあるのかわかるため、検査の結果をもとにフードを選んでみるのもよい。しかし、アレルギー検査の結果は、体質の変化とともに変わることがある。再検査のタイミングは症状の有無にもよるので、かかりつけの獣医師と相談のうえ行おう。

5-2.1カ月は様子を見る

柴犬のアレルギーは体質の場合も多いため、すぐに改善されない場合も多い。特にドッグフードの場合は切り替えまでに時間もかかるため、体調が悪化しているのか改善方向に向かっているのか見分けるためには、1カ月は様子をみることが必要。そのため、フードは1カ月分確保し、皮膚の状態や痒み、ウンチの状態をみて決めてみて。

5-3.サプリメントや手作りごはんなどドッグフードに頼らない生活も視野に入れる

総合栄養食のドッグフードは理想的な栄養が入っているけれど、その中にアレルゲンがあるなら使うべきではない。アレルゲンのない市販のドッグフードに変えることで対応できる場合もあるものの、なかにはアレルゲンを含まないフード選びが難しい場合も。

手間はかかるけれど、手作りごはんと栄養を補助するサプリメントを組み合わせた食事も視野に入れてみて。ただし手作りごはんを作る際は、必要な栄養が偏らないよう注意が必要。獣医師に相談して、栄養がしっかりとれるように工夫しよう。

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※記事は2023年4月24日(月)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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