F太郎通信2017
F太郎通信2017

OZmagazine編集長の「F太郎通信2017」14通目

更新日:2017/12/10

オズマガジン編集長古川が、日々の中で感じたことを、読者のみなさんに手紙を書くようにつづったエッセイのようなものです。

便せんはペーパーメッセージで買いました

 こんにちは。オズマガジンの古川です。12月に入りました。今年ももうあと1カ月足らずで終わりですね。熱いコーヒーを淹れて、曽我部恵一さんの「瞬間と永遠」というCDを聴きながらこの手紙を書いています。静かな週末の午前中です。

 1年は12カ月でひとまわりだから、どうしても12カ月がひとつの区切りになって、わたしたちはこの時期「どんな1年だったか?」と振り返ることになります。もちろんそれは「新年は気持ち新たに」ということでいいことだと思いますが、どうしても「それだけ」にとらわれてしまうと「今年も○○できなかった」とか「今年はあまり○○だった」と、どちらかというとネガティブで、できなかったことが浮き彫りになりがちです。でも12月までにできなかったことは次の1月にやればいいのだし、次の年にできなかったらまたその次の年まで待ってみてもいいと思います。時間というのは繋がり、流れているものだから、その流れを前提に、ときには長いスパンでものごとを考えるというゆるさや余裕も忘れずに持っていたいものです。とにかく、最近のわたしたちときたら、待つことが苦手になってしまったと思います。すべての判断が早すぎます。

 オズマガジンの編集長を10年近くやらせていただきましたが、僕は毎年この編集部のリーダーとして、編集部で一緒に働く仲間にチームのスローガンを共有し、その年に特に意識したいことを「言葉にして」伝えています。
 オズマガジンのメディアとしてのコンセプトは不変で変えず、その中の行動指針は時代や気分に合わせて変えていく。言葉にするとそういうことになるでしょうか。

 「手紙のようなものづくり」

 それが、今年僕が掲げ、編集部みんなで意識してきたスローガンです。そしてこのスローガンは、この3年間ずっと同じものでした。2015年から3年間、みんなでこの「手紙のようなものづくり」というスローガンを意識して、ものづくりをしてきました。

 なぜ毎年変えていたスローガンをここ3年間は変えなかったか? そう聞かれたら「なんとなく気分で」としか答えようがありません。でも、2015年の年末にも、2016年の年末にも、来年も「手紙のようなものづくり」というものづくりとの向き合い方がしたいと、そのとき強く思っていた。ただそれだけのことだと思います。

 それを「1年の始まりだから、1年ごとに」という「がちがちのルール」にして強引に変えたとしたら、もしかしたらそのときに自分が感じているものではなく、自分の頭で作り出した目標やスローガンを掲げてしまうかもしれません。たしかにそれまで僕は毎年新しいスローガンを作って、みんなに伝えてきました。でもそれは「がちがちのルール」にもとづいてやっていたかというとそんなことはなくて、僕は誰にそんな指示をされたわけでもなく、ただ自分で決めて、変えたいから変えていただけのことです。そこにルールなんてモノは最初からありませんでした。だから僕はこの3年間は自分の感覚を大切にして、同じ言葉をスライドさせました。

 頭で考えたものは、調子がいいときはうまくいきますが、雨風が強いときには、その風雨に堪えるだけの強度が足りないことが多いです。でもそれが自分の中の深いところから出てきた言葉であれば苦しいときでもしっかりその言葉を信じて、耐えることができる。これは僕が編集長をやらせていただく中で、経験として学んだことのひとつです。

 なにを言いたいかというと、僕らのまわりにはこの「ルールと思い込んでいるもの」が案外多いんじゃないか、ということです。そのルールと思い込んでいることを疑ってみることが、わたしたちを少し自由にしてくれることも、ときにはあると思います。

 そもそもルールというものは、多くの人の意思統一をするのにとても便利なものです。決まりやルールを作っておけば、ある程度人の行動を規制することができる。同時にそのルールを守る方も、そのルールを守っていれば、誰にも咎められず安定して暮らしていくことができる。ルールというのはある意味ではとても便利で大切なものです。逆にまったくルールがない、あるいは足りないというものごとは、あまりうまくいきません。
 僕はここでルールが良いとか悪いとか言っているわけではなく、ルールというものの本質を、理解し、それに縛られないように意識したいですね、ということを伝えられたらと思っています。

 大切なのは、その「ルール」と「ルールと思い込んでしまっているけどそうじゃないもの」を自分の頭でしっかり考えることだと思います。

 たとえば「人を殺してはいけない」、「モノを盗んではいけない」。これは世の中の厳然としたルールです。でも「毎年目標やスローガンを立てなくてはいけない」、これはルールではなく思い込みです。ルールが自分を縛り、僕たちを思考停止にさせているひとつの事例です。本当は、そうしたければすればいいし、そうしたくなければしなければいいことだけのこと。大げさですが、その差は歴然としています。そしてその判断を、自分の頭ですること。それがいまの時代を僕たちが生きていく上で、思っている以上に大切なことなんじゃないかと思います。ルール云々を抜きにして「立ち止まって、いちど自分の頭で考える」ということ。

「らしさとあたらしさ」

 来年のオズマガジン編集部のスローガンは、この言葉です。僕が編集部のみんなに伝える、10回目のスローガンです。

 この言葉を、編集部みんなで意識しながら、力を合わせてものづくりをしていけたらと思います。

 2018年のオズマガジンは、「らしさ」を大切にしながら、また少し別の「あたらしさ」を、みなさんにお届けできるのではないかと、今からとてもワクワクしています。編集部みんなでそれを意識しながら、毎日をていねいに過ごし、ものを作っていけたらと思います。もちろん僕たちは全能でも完璧でもないので、歩みは遅いし、スキルも足りないところだらけです。ときどきものすごい遠回りもしたりします。でも、この編集部にいるメンバー全員で一生懸命作り、できあがったオズマガジンが「オズマガジン」なのです。その未熟さも、弱さも含めて。少なくともそこに、ウソや手抜きはありません。

来年も、僕らの精一杯で楽しい「よりみち」を作って、みなさんにお届けして(この届け方はしっかり考えて)、この町に「いい1日」を増やしていくお手伝いができたらと思います。

 では、今週はこのへんで。今週も長い文章におつきあいいただき、ありがとうございました。

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※記事は2017年12月10日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります