月経周期の黄体期は睡眠の質が低下しやすい
月経周期は25~38日の範囲で、周期日数の変化が±6日以内であれば正常とされている。これより周期が長かったり短かったり、周期日数が7日以上変化する場合は月経周期が不安定な状態といえるのだけれど、こうした月経周期の乱れは、睡眠の質と深い関わりが。
「月経周期と睡眠サイクルは連動していて、お互いに影響しあっています。そのため睡眠の質が低下すると月経周期が乱れやすく、睡眠の質が上がると月経周期が安定しやすいという関連性が見られるのです」(菅原さん)
月経周期は大きく、月経から排卵までの卵胞期と、排卵から次の月経までの黄体期とに分かれている。卵胞期は基礎体温が低く、黄体期になると基礎体温が高くなるのだけれど、この基礎体温の変化が睡眠の質を左右している。
「深い眠りにつくためには、就寝時に深部体温(内臓の温度)がグッと下がることが重要です。ところが黄体期は基礎体温が高いために深部体温が下がりにくく、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりと、睡眠の質が低下しやすいのです」(菅原さん)
卵胞期の過ごし方を見直すことが黄体期の不眠改善に
睡眠の質が低下しやすい黄体期は、不眠になりやすい。この黄体期の不眠を改善するカギは、卵胞期の過ごし方にあるとか。というのも、黄体期に不眠が現れやすい人は、卵胞期にがんばりすぎている傾向が見られるためなのだそう。
「黄体期はイライラやだるさなどから、仕事もプライベートも全力を出しきれないことが多いものです。しかしその後、卵胞期になって体調がよくなると、黄体期にできなかった分を取り返すべく仕事をがんばりすぎたり、いろんな予定を詰め込んだりして夜ふかしをしてしまう人が少なくありません。そういう人は、その負担が黄体期に響いてしまい、不眠になりやすいのです」(菅原さん)
では、黄体期の睡眠の質を高めるためには、卵胞期をどう過ごせばいいの?
「人間の体は、調子がいいときにしっかりケアすると不調になりにくいという性質があります。そのため、女性にとって最も体調がいいときである卵胞期こそ、がんばりすぎずにリラックスをして十分に睡眠を取ることが、眠る力自体をアップさせ、黄体期の不眠改善につながるのです」(菅原さん)
仕事中に適度なリラックスができれば、深い睡眠を得られる
卵胞期はリラックスしよう・・・と聞くと、夜寝る前のリラックスタイムをイメージする人が多いかも。ところが、最も重要なのは昼間の仕事中のリラックスなのだと、菅原さん。
「仕事には高い集中力と緊張感が必要だと思われがちですが、過剰な緊張感は脳に強いストレスを与え続けるため、夜になってもなかなか脳が休まらなくなり、睡眠の質を低下させる要因となります。仕事中に過剰な緊張感が生まれないように、仕事の進め方などを見直して適度にリラックスをすることが、睡眠の質の向上につながります」(菅原さん)
これは決して仕事を怠るという意味ではなく、むしろ脳科学的には、適度にリラックスした状態で仕事をした方が高いパフォーマンスが発揮されることがわかっている。
働き方を見直すうえで菅原さんが特におすすめするのは、次の4つ。
◎長時間作業をし続けないように、1時間に1回席を立って水分補給をする
◎複数のタスクを同時に進めるのではなく、ひとつずつタスクをこなしていく
◎TODOリストが視界に入ると脳にストレスを与えてしまうので、目に入らないように隠す。タスクが完了してチェックを入れるときだけ確認する
◎メールチェックを朝イチで行わない
「メールチェックは“他人の要求に応じる”作業であるため、実は脳にかなりストレスがかかります。朝からいきなり脳に負担をかけすぎないように、メールチェックはまず自分の仕事をひとつ終えた後にしてみましょう」(菅原さん)
このように卵胞期の働き方を見直すことが睡眠の質を高め、月経周期を整えることにもつながる。この方法は、PMSなどの月経に関連する不調の緩和にも役立つので、症状が気になる人は取り入れてみて。
教えてくれた人
菅原洋平さん
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。国際医療福祉大学卒。国立病院機構にて脳のリハビリテーションに従事したのち、現在は、ベスリクリニック(東京都千代田区)で薬に頼らない睡眠外来を担当するかたわら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。13万部を超えるベストセラー『あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)、12万部突破の『すぐやる!「行動力」を高める科学的な方法』(文響社)、『働く人の疲れをリセットする 快眠アイデア大全』(翔泳社)など著書多数。
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WRITING/TOMOKO OTSUBO