生理・月経の時、お腹が痛くなる理由とは?
生理痛は、原因別におもに2つに分類されることを知っておこう。ひとつは、明らかな病気や異常所見が見られなくても起こる、いわゆる生理痛。もうひとつは、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が原因の生理痛だ。
子宮や卵巣に異常の見られない生理痛は「機能性月経困難症」ともいい、通常の生理で子宮内膜がはがれる際につくられるプロスタグランジンという体内物質がおもな原因。プロスタグランジンは陣痛促進剤にも使用される物質で、子宮の収縮を促す作用がある。生理の際には、経血を排出するために子宮を収縮させる必要があるのだけれど、その収縮が強くなると生理痛も強くなるというわけ。また同時に、プロスタグランジン自体が痛みや炎症を引き起こす物質でもあり、通常の生理痛はこのダブルの作用によって引き起こされている。
一方、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気による生理痛は「器質性月経困難症」と呼ばれている。子宮内膜症は、本来は子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜組織が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所で増殖したり、はがれたりを繰り返す病気。また、子宮筋腫は子宮にできる良性の腫瘍で、過多月経の原因にも。これらの病気になると、通常の生理痛にプラスして激しい痛みが現れることがある。のたうち回るほどの激痛があったり、生理が終わった後も痛みが続く場合には、この「器質性月経困難症」の疑いが持たれる。
生理痛が軽い人がうらやましい!生理痛が重い人と軽い人の違いとは?
子宮内膜症や子宮筋腫といった病気由来の生理痛でない場合も、生理痛の痛みの度合いは人ぞれぞれ。生理痛が強く出る女性では、子宮内膜や経血に含まれるプロスタグランジンの量が生理痛のない女性より多いことがわかっている。ただし残念ながら、プロスタグランジンが多い人と少ない人の違いは未だ解明されていない。
また、冷え性や体の柔軟性、筋肉量、ストレス耐性といった体質との関連性については、現代医学の領域で明確な答えが認められていないのも事実。体質改善をめざして生活習慣を見直すことはもちろん良いこと。でも、結果が出ずにガッカリしたり、自分を追い込みすぎることのないようにしよう。
一般的に、機能性月経困難症での生理痛のピークは10代から20代前半といわれている。子宮が未熟なうちは、経血を排出する際の負担が大きく痛みが強く出やすいが、20代を過ぎると子宮の筋肉が柔軟になり、生理痛がだんだんと楽になっていくことが多いのだそう。
いつか解放されたい生理痛。生理痛がなくなることはある?
「20代以降、年を重ねるにつれて徐々に気にならなくなっていくもの」と言われていた生理痛。でもこれは、20代で出産する人が多かった過去の時代の話。出産を気に生理痛が軽減する人もいるけれど、必ずしも全員ではないのだそう。
また、生理痛から解放されることは嬉しいことばかりではなく、いつも感じている生理痛が急にピタッとなくなったときには注意が必要。生理痛の有無がその月によって明確に違う場合、無排卵月経になっているケースもあるそうなので、妊娠を希望している人は特に気にかけておきたい。
逆に生理痛が毎月ひどくなっていく場合には、子宮や卵巣に何らかの問題を抱えている可能性が高いので、迷わず早めに婦人科を受診しよう。
教えてくれた人
佐々木明香さん
後楽園ウィメンズクリニック院長、日本産婦人科学会専門医。東邦大学医学部を卒業後、慶應義塾大学産婦人科学教室に入局。女性のライフステージに沿った快適な生活をサポートしたいと、生まれ育った文京区で2017年に「後楽園ウィメンズクリニック」を新規開院する。
「大学病院などで研鑽を積んできたことを生かし、思春期から老年期までの女性特有のお悩みに、ピルや漢方などを用いて対応しながら、定期的な自己管理のお手伝いをさせていただくようなクリニックをめざしています」。
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WRITING/ATSUKO HABU