マスクが苦しくて口で息をしてしまう・・・実は危ない!?口呼吸のリスクと改善法
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マスクが苦しくて口で息をしてしまう・・・実は危ない!?口呼吸のリスクと改善法

更新日:2021/05/12

マスクを長時間つけているうちに、気がついたら息苦しくて口で呼吸をしていた・・・そんな経験はない? この「口呼吸」、実はさまざまな病気のリスクを高めるのだとか。鼻呼吸と口呼吸の違いや、口呼吸はどうすれば改善できるのか、内科医の今井一彰さんに教えてもらおう。

口呼吸はなぜ危ない?鼻呼吸との違いとは

口呼吸はなぜ危ない?鼻呼吸との違いとは

呼吸は本来、鼻でするのが正常な状態。鼻呼吸のほうが口呼吸よりも取り込める酸素の量が多く、口で呼吸をするのは人間だけだと言われているとか。いったい鼻呼吸と口呼吸には、どんな違いがあるの?

「鼻から吸った息は、鼻の奥の鼻腔(びくう)にびっしりと生えている線毛(粘膜上に生えている直径1/1000ミリの毛)や、鼻腔で分泌される粘液によって、細菌やホコリ、有害物質などが取り除かれてきれいな空気になり、肺に送られます。また、鼻の中では1日1リットル以上の鼻水が分泌されており、鼻から吸った空気を加湿しているため、鼻で加湿された空気は湿度が100%近くになり、気道や肺の乾燥を防いでいます」と今井さん。

さらに、鼻を通った空気は体温に近い温度まで温められ、冷たい空気が体内に侵入するのを防いでいるのだそう。

では、口呼吸の場合はどうなるかというと、細菌やホコリなどがほとんど取り除かれないまま、空気が気管や肺に送られてしまう。鼻呼吸のように十分な加湿や加温がされないため、冷たく乾いた空気が体内に入り、気管の冷えや乾燥も招いてしまうことに。

「気管が冷えたり乾燥したりすると、免疫機能が低下しやすくなります。加えて、細菌などがダイレクトに気管に入るため、かぜやインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるのです。そのほか、アレルギー性疾患や腸の疾患、リウマチ、歯周病など、口呼吸はさまざまな病気のリスクを高めることがわかっています」(今井さん)

舌の筋力低下が口呼吸を招いている

舌の筋力低下が口呼吸を招いている

ではなぜ人間は、体にとってリスクの高い口呼吸をしてしまうのか・・・。その大きな原因は舌の筋力低下にあるのだと、今井さん。

舌は筋肉のかたまりで、卵3個分もの重さがある。舌の筋力が十分にあればその重さを支えることができるけれど、舌の筋力が低下すると支えきれなくなり、卵3個分の重みで口が自然と開いて口呼吸になってしまうとか。

「舌の筋力が低下する理由のひとつが、咀嚼(そしゃく)回数の低下にあります。人間は食べものをかむときに舌を上下左右に動かして、口の中の食べものを混ぜたり飲み込んだりしています。かめばかむほど、この舌の動きによって自然と舌の筋力が鍛えられるのですが、やわらかい食べものやとろける食べものを好む現代人は、咀嚼回数が著しく少ないため、舌の筋力も低下しているのです」(今井さん)

さらに、コロナ禍でのマスクの着用自体も、舌の筋力低下につながっている可能性があるのだそう。

「他人とのコミュニケーションでさまざまな表情を作ることで、舌の筋力は鍛えられます。ところが、マスクの着用によって口元が隠れているため、表情を作る機会が減り、舌の筋力が低下しやすくなっているといえます」(今井さん)

美容効果も!口呼吸を改善する舌の筋トレ

美容効果も!口呼吸を改善する舌の筋トレ

口呼吸は無意識のうちに行っていることも多く、自覚していない場合もあるかも。そこでチェックしたいのが、舌の筋力。口を閉じたときに舌がどの位置にあるかによって、舌の筋力を確認することができる。

「口を閉じたときに舌が上あごにぴったりとくっついている場合は、舌の筋力が正常な状態です。一方、口を閉じたときに舌先が歯の裏についている、もしくは舌がどこにもつかずに宙ぶらりんの状態の場合は、舌の筋力が低下しています。口呼吸になっている可能性も考えられます」(今井さん)

舌の筋力が低下しているかも・・・という人は、ぜひ次の「あいうべ体操」で舌の筋トレを実践してみて。声は出しても出さなくてもどちらでもOK。

(1)「あー」と口を思い切り大きく開く。
(2)「いー」と口を大きく横に広げる。首に筋が張るくらいまで広げる。
(3)「うー」と口を強く前に突き出す。
(4)「べー」と舌を出して下に伸ばす。あごの先をなめるようなイメージで思いっきり伸ばす。以上を10回、1日に3セット行う。

「『あいうべ体操』は、舌と口の周りの筋肉を手軽に鍛えることができます。口呼吸の改善以外にも、顔のむくみやほうれい線、二重あごなどの解消にも役立ちます」(今井さん)

舌の筋力が強化されれば、マスクをつけていても口呼吸にはなりにくいはず。コロナ対策のひとつとしても、ぜひ習慣にしてみて。

教えてくれた人

今井一彰さん

内科医、 東洋医学会漢方専門医、日本病巣疾患研究会副理事長。みらいクリニック院長。
「病気は口からやってくる」という理論のもと、舌を鍛えて口呼吸を鼻呼吸に変えることで自然治癒力を高め、「可能な限り、薬を使わないで病気を治す」ことを目指した治療をしている。その取り組みは、「世界一受けたい授業」「名医のTHE太鼓判! 」「林修の今でしょ! 講座」「おはよう日本」「あさイチ」など、各メディアで数多く紹介されている。
『4分でウォーキング1時間分! 全身がやせる「ゆるHIITダイエット」』(PHP研究所)、『免疫力を上げ自律神経を整える 舌トレ』(かんき出版)ほか、著書多数。

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WRITING/TOMOKO OTSUBO

※記事は2021年5月12日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります