健康診断の数値だけではわからないことも!?「隠れ貧血」かどうか、セルフチェックしてみよう
貧血とは、第1回の記事でもご紹介したとおり、全身に酸素を運ぶ役割をもつ赤血球やヘモグロビンの量が不足している状態のこと。では、「隠れ貧血」ってどういうこと?
「貧血の基準は、男性でHb(ヘモグロビン)13mg/dl未満、女性でHb12mg/dl満(妊娠中はHb11mgdl未満)とされています(※1)。しかし最近では、ヘモグロビンは正常範囲だけど、体は鉄が欠乏している状態という人が増えています。これを『潜在性鉄欠乏症』といい、メディアなどではわかりやすく『隠れ貧血』とも呼ばれています」と都木先生。
この「隠れ貧血」の人は日本で1000万人以上、20~40代の女性の約40%もが該当するといわれているそう。
自分もそうなのでは?と気になった人は、チェックシートでチェックしてみて。1~5でふたつ以上該当すれば、貧血・隠れ貧血の可能性大。6~8に思い当たる人は貧血・隠れ貧血になりやすい、あるいはすでになっているとき出やすい症状だから注意。
※1 世界保健機構(WHO)の基準による
鉄分を積極的に摂る心掛けが大事。食事のほか、サプリや健康食品も活用しよう
それでは、貧血や「隠れ貧血」を改善するため、また予防するためには、どんなことに気を付ければいいの?
「『隠れ貧血』の判断は、ヘモグロビンの濃度ではなく、フェリチンという数値でみることができます。フェリチンは『貯蔵鉄マーカー』といって、体の中に貯蔵されている鉄分量の指標となります。ヘモグロビンが正常値だったとしても、フェリチンが12mg/ml以下の場合には、潜在性鉄欠乏症=隠れ貧血といわれます」と都木先生。
最近では健診でもフェリチンを追加して調べられる施設も増えてきたそう。「かかりつけの病院があれば相談も可能です。隠れ貧血の可能性がある人は、病院などでフェリチンを測定して確認し、食事やサプリなどで対応するようにするといいでしょう」(都木先生)
それでは、どんなケアを心がければいいの?
「日本では、鉄分は摂取率が年々低下してきています。特に女性は意識的に摂る工夫が必要です。赤身のお肉や魚、貝類などヘム鉄の多く含まれる食品を積極的に取り入れましょう。また、赤血球やヘモグロビンを作るのに欠かせない栄養素であるタンパク質、ビタミンB6、B12、C、葉酸などもしっかり補給できる、バランスよい食事も心掛けてください(ヘム鉄の多い食品、必要な栄養素については記事2回目を参照ください)」(都木先生)
また、鉄分を含む健康食品やサプリメントも予防には活用できるそう。欧米では主食の小麦粉に鉄分を添加するなど、さまざまな工夫を行っているとか。
「しかし日本では国主導で行っている貧血対策はありません。皆さんそれぞれが、サプリなどを活用してできるだけ鉄分を摂取するよう、心掛ける必要があります」(都木先生)
食事やサプリで改善しないときには、婦人科疾患などが隠れている可能性も。検診はしっかり受けよう
食事やサプリメントだけで十分? ほかにも気を付けることって?
「10代から2、30代の女性はダイエットや、お菓子ばかり食べるなど偏食が原因のことも多いですね。隠れ貧血の疑いがあれば、ダイエットや食事制限はいったん休止するか、緩めたほうがいいでしょう。また、アルコールを飲む量が多い人は、葉酸やビタミンB群を多く消費してしまうので量を減らしましょう。葉酸などは、赤血球やヘモグロビンを作るために必須な栄養素なのです」と都木先生。
逆に30~40代は、婦人科疾患による隠れ貧血も多いので、注意したい。
「鉄分不足による貧血・隠れ貧血は、鉄分を補充すれば必ず症状は改善されるのがポイント。しかしサプリや食事で鉄分を摂取しても症状が改善しない場合には、治療を必要とする別の病気が隠れていることがあるので注意が必要です」(都木先生)。
特に女性の場合には、重い月経の背景に、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患が隠れていることも多いとか。また、ひそかに体内で出血をおこしているような腫瘍性の病変が隠れていることもあるので、定期的な検診はしっかり受けておくようにしたい。
「妊娠中に強い貧血があると赤ちゃんが十分な酸素がもらえず、影響が出ることもあるので、妊娠前に病院で貧血関係の検査をしてもらっておくと安全ですね。働く女性たちがもっと元気に活躍するために、鉄分摂取は大切だということを覚えておいてもらえたらうれしいです」(都木先生)
教えてくれた人
都木登妃子医師
玉城クリニック副院長、日本内科学会認定内科医、糖尿病専門医。兵庫医科大学、大阪中央病院などで診療を担当、予防医学に注力し、生活習慣病の指導なども積極的に行っている。患者個々の生活習慣や暮らしを理解し、指導してくれる診療に広く信頼を集めている。
【特集】プチ不調や身体の悩みを解消!すこやかなココロとカラダへ
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WRITING/HIROKO KUROKI