片頭痛や緊張型頭痛はなぜ起こるの?
風邪をひいているわけでも、熱中症になっているわけでもないのに、原因不明の頭痛が起こる・・・。これがいわゆる「慢性頭痛」で、特に多いのが、こめかみのあたりがズキンズキンと脈打つように痛む片頭痛と、首筋や後頭部が締めつけられるように痛む緊張型頭痛。
片頭痛が起こる原因はまだ明らかではないけれど、収縮していた脳の血管が拡張したときに、周囲の神経を刺激して起こる痛みと考えられているとか。痛みを引き起こす“引き金”があることも特徴で、ストレスやストレスからの解放、睡眠不足、光、音、においなどがきっかけとなって、症状が現れることが多いと言われる。
緊張型頭痛は、首や肩の筋肉が緊張している(収縮しつづけている)ために、血行が悪くなって筋肉に老廃物がたまり、痛みが生じる症状。長時間のスマホやパソコン作業で同じ姿勢を続けることや、冷え、ストレスなどが原因とされている。
「こうした慢性頭痛の対処法として最も一般的なのは、鎮痛剤を飲むことですが、服用の頻度が高くなるとかえって症状が悪化するリスクもあります。鎮痛剤に頼りすぎず、漢方を取り入れてみることもおすすめです」(岸さん)
片頭痛には「気の滞り」を緩和する漢方薬が用いられる
では、慢性頭痛の原因を漢方の視点で見てみよう。まず、片頭痛の場合は「気(き=エネルギー)」の滞りが、痛みの原因だと考えるのだそう。
「気は常に体じゅうを流れていて、とどまることなく巡りつづけることで、体の活動を支えています。しかし、ストレスがかかると気の巡りが停滞してしまい、体の上部、特に頭部にたまりやすくなります。たまった気はふくれて頭部を圧迫するうえ、余分な熱も生み出してしまい、その刺激が片頭痛となるのです」(岸さん)
こうした気の滞りによる片頭痛が現れる場合、次のような症状も見られることが。
□顔が赤らんでいる、または目が充血している
□耳鳴りが起こる
□イライラして怒りっぽい
気の滞りによる片頭痛を改善したいときによく選ばれる漢方薬のひとつが、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」。気の巡りをよくしつつ、余分な熱を冷まして痛みを抑える漢方薬で、ストレスによるイライラや、月経不順、月経前症候群などにもよく用いられるとか。さらに、気の巡りをよくする食材であるセロリ、ミント、パクチー、緑茶、ピーマン、柑橘類などを積極的に食事に取り入れると、改善のサポートになる。
緊張型頭痛の場合は「血の滞り」を改善する漢方薬
一方の緊張型頭痛は、長時間同じ姿勢を続けることで「血(けつ≒血液)」の流れが滞り、たまった血がドロドロのかたまり状になって、痛みを引き起こすと考えられている。血のかたまりが血管や周囲の神経を刺激するため、チクチクと刺すような痛みが現れるのが特徴とされる。
「血の滞りは、長時間同じ姿勢を続けること以外にも、運動不足や冷え、水分不足など、さまざまな原因で起こります。気の滞りによって血の滞りが起こる場合も多いため、ストレスをためないことも大切です」(岸さん)
血の滞りによる緊張型頭痛が現れる場合、次のような傾向も現れやすいのだそう。
□目の下のクマが目立つ、または顔色が暗い
□夜になると痛みが重くなる
□舌の色が暗く紫がかっている
こうした緊張型頭痛には、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」という漢方薬を用いることが多いと、岸さん。血の滞りをやわらげて、巡りを促す生薬が配合されており、頭部の血行を促進して緊張型頭痛を緩和することが期待できるのだそう。あわせて、タマネギ、ラッキョウ、チンゲンサイ、黒豆、黒酢などの血の巡りをよくする食材を多くとると、症状の軽減につながるはず。
このように漢方薬には、頭痛の原因を改善することで症状を起こりにくくするという特徴があり、痛みを抑えることが目的の鎮痛剤とはここが大きく違う点だと言えそう。
なお、慢性頭痛にいいとされる漢方薬にはほかにもさまざまな処方があり、体質や状態によっても選ぶものが変わってくるとか。実際に服用する際は専門家に相談して、症状に最も適した漢方薬を選ぶようにしてみて。
教えてくれた人
岸直美さん
漢方専門店「ニホンドウ漢方ブティック薬日本堂 青山店」薬剤師・漢方相談員。漢方薬から和漢ブレンドティ、スキンケアまで、からだの内外からのトータルケアを提案している。同店地下1階には「薬膳レストラン10ZEN青山店」があり、おいしくヘルシーな薬膳料理が楽しめる。
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WRITING/TOMOKO OTSUBO