テレワークやスマホでの動画視聴など、自宅時間が多くなったことでイヤホンを使う機会が増えたという人も多いのでは? 実はイヤホンやヘッドホンを長時間、大音量で使用すると、難聴になるリスクが上がることがわかっているそう。そこで耳鼻咽喉科専門医の大河原大次さんに、難聴の初期症状や難聴を予防するためのイヤホンの使い方について教えてもらった。
音を感じる神経がじわじわと傷ついていく
イヤホンやヘッドホンの使用による難聴は「イヤホン難聴(ヘッドホン難聴)」「スマホ難聴」と呼ばれ、世界的な問題に。WHO(世界保健機関)は、スマートフォンの普及などにより、世界の12~35歳人口の約半数に難聴リスクがあることを指摘している。なぜイヤホンの使用が、難聴につながるの?
「イヤホンを長時間、大音量で使用することにより、耳の奥にある『有毛細胞』という音を感じる神経が徐々に障害を受け、若い世代でも難聴になります。壊れた神経は元に戻らないので、難聴と一生涯付き合っていくことになるのです。神経の障害による難聴は、補聴器を使用しても十分な効果は得られません」と大河原さん。
イヤホン難聴はある日突然発症するわけではなく、じわじわと進行していくので初期には気づきにくい。また、音が聞こえにくくなるだけではなく「聞き取る力」「聞き分ける力」が低下していくのが特徴だそう。
「例えばテレビのニュース番組でアナウンサーが1人で話している言葉は聞き取れるけれど、バラエティ番組で複数のタレントが話していると聞き取れないといったことが起こりやすくなります」(大河原さん)
耳鳴りや耳が詰まった感じがあれば耳鼻科へ
イヤホン難聴を防ぐには、使用しないのがいちばんだけど・・・。
「イヤホンの使い方を工夫すれば、難聴を予防できます。ポイントは音量と時間。音量を上げ過ぎないことが大切で、耳が痛くなるような大音量は危険を示すサインです。連続使用は1時間半程度まで。使用して1時間くらい経ったら、イヤホンを外して5~10分程度耳を休ませるといいでしょう」(大河原さん)
また、少しでも自覚症状があれば、放置せずに耳鼻科を受診することが大切だと大河原さん。
「初期症状で多いのは、耳鳴りや耳閉感(耳が詰まったような違和感)。これらの症状があれば、できれば1週間以内に耳鼻科を受診してください。初期であればステロイド薬やビタミンB12製剤などの飲み薬による治療で、進行を抑えられる可能性もあります」
イヤホン使用でかゆみや痛みが起こることも
実は、イヤホンの長時間使用によるトラブルは、難聴だけではないのだそう。
「実際に耳鼻科を受診する患者さんに多いのが、イヤホンが原因の外耳道炎です。耳の入り口から鼓膜につながる外耳道が傷つき、炎症を起こすことで、かゆみが出現します。悪化すると痛みや腫れ、耳垂れなども出てきます」(大河原さん)
こうした症状があるときには、イヤホンの使用は控えること。耳鼻科で点耳薬を処方してもらって治療すれば、1週間程度で改善する。
「かゆいからといって綿棒でこするのはNG。炎症が悪化しやすくなります。外耳道の皮膚は薄く、ちょっとした刺激で炎症を起こしやすいのです。外耳道炎を起こさないためには、シリコンなどなるべくやわらかい素材のイヤホンを使用し、耳の奥まで押し込まないようにしましょう。自宅ではヘッドホンを使用するのがおすすめです」(大河原さん)
便利なワイヤレスイヤホンなども普及し、イヤホンを手放せないという人は多いはず。使い方や選び方に気を付けてトラブルを回避しよう。
教えてくれた人
大河原大次さん
耳鼻咽喉科日本橋大河原クリニック院長。日本耳鼻咽喉科学会専門医、補聴器認定相談医。日本医科大学付属病院に10年間勤務したのち、耳鼻科専門病院の神尾記念病院で副院長を務める。2006年に開院。「患者さんに見せる医療」をコンセプトに一般的な鼻風邪から難聴まで、幅広く診療している。
【特集】プチ不調や身体の悩みを解消!すこやかなココロとカラダへ
不安定な状況のなかで気になる、ココロとカラダのプチ不調。病院に行くまでもない・・・と我慢してしまったり、解決策を探そうと思っても世の中には情報が溢れすぎていたり。そんな働く女性たちに寄り添う“保健室”のような存在をオズモールはめざします。
記事や動画、イベント・セミナーなどを通して楽しみながら学んで、ココロとカラダに向き合って、自分らしい美しい花を咲かせて。
こちらもおすすめ。ヘルスケアNEWS&TOPICS
WRITING/AKIKO NAKADERA