お手入れや取り外し不要のICL(眼内コンタクトレンズ)。向いているのはどんな人?
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お手入れや取り外し不要のICL(眼内コンタクトレンズ)。向いているのはどんな人?

更新日:2021/07/14

近視の人にとって、毎日メガネやコンタクトレンズをつけるのは、煩わしいもの。そこで最近注目されているのが、眼内コンタクトレンズ(ICL)。眼内にレンズを挿入することで視力を矯正する治療で、手入れや取り外しが不要なことから“永久コンタクトレンズ”と呼ばれることも。ICLのメリットやデメリットについて、眼科医でICL認定医の今居由佳理さんに教えてもらった。

レーシックに比べて体への負担が少ない

レーシックに比べて体への負担が少ない

手術によって眼内にコンタクトレンズを挿入するICL。眼球の外側部分にある角膜を約3mm切開して、そこからレンズを挿入、虹彩(角膜と水晶体の間の薄い膜)と水晶体の間にはめる。点滴麻酔で行うので、痛みはほとんどなく、手術時間は両目で約20分程度。挿入するレンズは耐久性にすぐれ、曇ったり汚れたりすることはなく、体内では異物として認識されないので、生涯装着したままでも基本的には問題ないそう。視力を矯正する手術というとレーシック(屈折矯正手術)がよく知られているけれど、どう違うの?

「レーシックのように角膜を削る必要がないため、身体への負担が少ないのがメリット。また、レーシックは一度削った角膜を元に戻すことはできませんが、ICLは万が一トラブルがあった場合や将来白内障の手術を受ける場合などに、取り外すことができます」(今居さん)

レーシックの場合、近視の程度が強いと角膜を多く削る必要があり、手術の難度が高くなるほか、術後に近視が再発したり、ドライアイになったりすることも。このためレーシックを受けられる度数に制限があったけれど、ICLはこうしたデメリットがなく、強い近視や乱視にも対応する。

手術によるトラブルは?

手術によるトラブルは?

とはいえ、目の手術を受けるとなると不安が大きいもの。ICLは眼科医であれば特別な資格が不要なレーシックと異なり、認定を取得したICL認定医が実施する。もちろん手術なので、ほかの手術と同様にリスクはつきもの。

「まれに術後、眼圧が上昇し、視界にモヤがかかってみえたり、頭痛や吐き気がしたりすることがあります。また、非常にまれではありますが、レンズが水晶体に接触すると、白内障を起こすことがあります。ほかの目の手術と同様、傷口から菌が入り、炎症を起こすケースも。いずれにしても術後に違和感があれば、すぐに手術を受けた病院に連絡し、処置してもらうことが大事です」(今居さん)

ICLが向いている年代は?

ICLが向いている年代は?

また、ICLの難点といえば、費用が高額になること。自費診療となるため、両目だと60万円前後かかる。毎日使い捨てのコンタクトレンズを使用することと比較した場合、20~30代の若いうちに入れたほうが、費用に対する満足度は高いかも。40代半ばごろからは老眼という問題も出てくる。

「残念ながら、ICLをしても老眼にはなります。近くが見づらければ、老眼鏡や遠近コンタクトを使用することになります。また、50代以降は白内障が出てくる可能性も。白内障の手術を受ける際に、ICLを取り出して遠くも近くも見える『多焦点眼内レンズ』を使用すると、老眼の矯正もできます」(今居さん)

こうしたことから、ICLを受けるのに適しているのは、老眼が始まる前の40歳ごろまで。ICLを検討する際は、メリットやデメリット、リスクなどをよく理解しよう。

教えてくれた人

今居由佳理さん

医療法人社団Luce三鷹 武蔵野タワーズゆかり眼科院長。日本眼科学会専門医、眼科PDT認定医、ICL認定医。宮崎大学医学部卒業後、九州大学眼科学教室入局。東京歯科大学市川総合病院眼科を経て平成22年に開院。白内障、緑内障、加齢黄斑変性症をはじめ、多くの眼底疾患、前眼部疾患の研究、治療に携わる。

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WRITING/AKIKO NAKADERA

※記事は2021年7月14日(水)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります