塩分を摂りすぎると女性に多いむくみや、骨粗しょう症に関連することも
食事のカロリーや糖質量を意識している人は多いのに、塩分に気を付けているという人は少ない。では、知らず知らずのうちに塩分をたくさん摂りすぎていると、どうなるの?
「まず、血圧が高くなる危険性があります。食事で摂取した食塩は、消化管でナトリウムとなって吸収され、体内を循環します。血液中のナトリウムの濃度が高くなると、体はそれを薄めようとする。そこで水分を摂ろうとしてのどが渇いたり、水分の体外への排出(尿)を少なくして体内に水分を溜め込もうとします。その結果、血管を流れる血液の量が増えてしまうので、心臓はポンプの力(血圧)を上げてがんばってしまうのです」と松本さん。
それだけでなく、女性の悩みに多い「むくみ」にも関係することもあるそう。高血圧の状態が続くと心臓の働きも弱くなるので、血液をうまく送り出せなくなる。すると静脈に血液がたまり、むくみが起こってくることも。すべてのむくみに塩分が関わるわけでなないが、むくみやすい人は、一度塩分のことにも目を向けてみてほしいもの。
「また、骨粗しょう症にも関連しています。高血圧になると尿の中にカルシウムをたくさん排泄してしまうので、血液中のカルシウム濃度を維持するために、骨の中に蓄えているカルシウムを放出してしまうのです」(松本さん)。女性に多いといわれるむくみや骨粗しょう症にも関係することもあるという塩分。無関心ではいられないのでは?
ヘルシーなイメージの食品にも、塩分がたくさん含まれていることが。目に見えない塩分量も意識しよう
毎日何気なく食べてしまっている塩分。それでは、どんな食べ物には塩分が多いの?
「残業で夕食がとれないときなど、インスタントラーメンなどで簡単にすませることがあると思います。しかしカップ麺はとても塩分が高い食品。せめて汁は残すなどの工夫が必要です」と松本さん。カロリーだけでなく塩分の面からも、汁の完食は避けたほうがいいよう。
また、コンビニなどのおでんはヘルシーなイメージだが、しっかり煮込んであるため塩分が具材の芯までしみ込んでいる。そのため、全体としては塩分が高くなっているので、注意が必要だとか。
「ほかにも食パンやソーセージなどの加工食品や麺類などは、製造過程で塩分を多く必要とします。直接塩味を感じなくても、結構な量の塩分含有量があるのです。食品には見えない塩分が含まれていると、いうことにも気を付けていただくといいと思います」(松本さん)。
加工食品を多く摂る場合には、パッケージの塩分表示を見てみるなど、少し意識してみることも必要といえそう。
カリウムは塩分を排出する助けに。カリウム豊富な野菜や果物を取り入れ、料理に使う塩分にも気を付けよう
それでは、どのような食べ物、食べ方を取り入れるといいの?
「塩分を上手に体外に出す方法を知っておくことも大切です。多すぎる塩分を体外に出すには、カリウムの摂取が有効です。カリウムは野菜や果物、イモ類に多く含まれています。毎食の食事に、野菜や果物を努めて摂るように心がけることも、塩分と上手に付き合う秘訣になるでしょう」と松本さん。
また、「かけ醤油、つけ醤油」を上手に取り入れることもおすすめ。おでんや肉じゃがなど、醤油でコトコト煮込んだ料理は、多くの塩分が食品全体に染み込むことに。しかし、表面にのみ塩分をつける「かけ醤油、つけ醤油」なら、舌が直接塩分に触れるのでしょっぱく感じられ、おいしく食べられるわりに塩分摂取量を少なく抑えられるのが魅力。煮魚定食と刺身定食では、塩分量に関しては刺身定食に軍配が上がりそうだ。
「昔よりは塩分摂取量は減ってきているようですが、現在でもまだ日本人の塩分摂取量の平均は10.2gもあり、摂取目安量(18歳以上の女性は1日あたり7.0g未満)※1を大きく超えています。知らない間に摂ってしまっている見えない塩分に気づくことで、塩分と上手に付き合っていけるようにしてほしいですね」(松本さん)。
※1 厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書による
教えてくれた人
松本和隆さん
松本クリニック院長、日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医。三重大学大学院にて代謝内分泌内科学の医学博士を取得。三重大学糖尿病・内分泌内科にて病棟医長、副科長などを歴任ののち、2016年「医療法人法人松徳会松本クリニック」を開院。地域では数少ない糖尿病専門医として多くの患者への診療を行っている。健康応援番組『プラスエム』などでの出演ほか、メディアでも講演、著書執筆など幅広い活躍も行う。
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WRITING/HIROKO KUROKI