城下町・山口県萩市で窯元巡り!暮らしの器、萩焼紀行へ

山口県萩市、萩焼、オズモール

城下町として栄え、その面影を今もなお随所に残す山口県萩市。町の歴史とともに育まれ、古くから茶人に愛されてきた萩焼に、近年、暮らしの器が増えている。日常を彩る器を求め、いざ萩へ。2022/10/3(月)~10/28(金)の平日に都内で開催される、萩焼ランチ&ショップのイベント情報もチェック!

更新日:2022/09/20

山口県萩市、萩焼、オズモール
上/8代目の父と「岡田窯」を守りながら、独自の作品を生み出す岡田泰さん。登り窯は年に2~3回火入れ。1日かけて作品を焼きあげる 左下/1974年に「緑栄窯」を開いた父が54歳で他界。その跡を継いだ松野創平さんは技術の多くを独学で習得。ギャラリーにはさまざまなデザインの皿やカップなど多彩な作品が並ぶ 右下/父・兼田佳炎さんと、息子・知明さんで切り盛りする「勝景庵」では、大道土の原土、自分たちで採掘した見島土の原土などを練りあげて粘土を作りる

時代に合った“今の器”が伝統を未来へつなぐ

ずいぶん前に、萩焼の湯呑みをお土産にいただいた。白色と肌色の釉薬をまとった、土の素朴な質感が心地いい湯呑み。初めての萩焼だったので、歴史を調べてみると、その始まりは400年ほど前。茶の湯に親しんでいた藩主の毛利輝元が、城を萩に移した際に御用窯を開き、茶陶の産地として名を馳せていったという。そんな経験から、萩焼=茶道具というイメージを抱いていた。

現在の萩市では、今でも登り窯を持つ窯元が多く、50名以上の陶芸家が活動。その中で、今回は40代の若い陶芸家たちが活躍する7つの窯元へ。彼らが手がける器は、驚くほど個性的。御用窯の開窯当初から使われてきた、粒子が粗くねばりのある陶土・大道土を主要土にするスタイルはそのままに、作る器に合わせて、登り窯、ガス窯、電気窯を使い分けているという。

独自の釉薬を開発するなど、色彩もさまざま。絵付けや?き落としという技法で、かつての萩焼にはなかった模様を施した器。洋食に合う縁付きのリム皿に、ゴブレットやフリーカップ。土の質感を活かしたシャープな輪郭の器・・・。陶芸家1人ひとりが、創意工夫して思い思いに作りあげていく器の多彩さは、まるで、「萩焼は“茶の湯”のみにあらず」というメッセージを発信しているよう。

山口県萩市、萩焼、オズモール
上/父より「小萩窯」を受け継いだ厚東孝明さんは、菊花文の皿など花モチーフの器を多く手がける 左下・右下/有田焼にルーツを持つ「陶華山窯」では磁器も制作。外壁のトンバイ塀は、解体した登り窯のトンバイ(耐火レンガ)を積み重ねたもの

だからと言って、伝統を崩しているわけではありません。いろいろと話を伺ってみると、茶陶から始まった萩焼は、明治時代には壺などの置物、戦後は個性を活かした芸術性の高い作品が生み出され、時代の流れとともに、作風が変化してきたと言います。だからこそ今があるのだと。

「先人たちが築いてきたことをベースに新しい表現を切り開いていくことこそ伝統」「時代に合ったものを作ることが伝統になる」。次世代の萩焼を担う陶芸家たちのそうした言葉が印象的で、白萩釉や枇杷釉といった萩焼の伝統的な釉薬を使って、プレートやリム皿などを作り出す陶芸家の姿にも、萩焼のこれからの伝統を感じた。

萩焼には貫入と呼ばれる細かなひびに飲み物などが染み込んで、長年使っていくうちに色合いや表情が変わっていく。これが「萩の七化(ななば)け」と呼ばれる萩焼の特性。育てていく楽しみもある器で食卓を彩り、使い続けたら、自分も萩焼の伝統のほんの一部になるかもしれない。おこがましくも、そんな思いが膨らんだ。

山口県萩市、萩焼、オズモール
上・左下/窯の中に発生する煤を表面に吸着させ、土そのものの発色を活かした器やオブジェを作る「御台場窯」の渋谷英一さん。窯には、作品の美しさが際立つような空間が広がるギャラリーを併設 右下/「鳥雲窯」2代目の納冨晋さんの十八番とも言える、深い藍色や淡いブルーが美しい“青萩”。娘の尚子さんもその技術を受け継ぎ、カップやプレートなど日常使いの器を多く生み出している

窯元DATA

■鳥雲窯/納冨尚子
TEL.0838-22-5822
住所/山口県萩市山田4431
営業時間/9:00~16:30
定休日/日・祝

■小萩窯/厚東孝明
TEL.0838-25-3393
住所/山口県萩市前小畑一区4321
営業時間/10:00~17:00
定休日/不定休

■陶華山窯/松尾優子
TEL.0838-25-2136
住所/山口県萩市椿沖原414-19
営業時間/9:00~17:00
定休日/日・祝

■御台場窯/渋谷英一
TEL.0838-55-5555
住所/山口県萩市大字明木2856-4
営業時間/10:00~17:00
定休日/不定休

■勝景庵/兼田知明
TEL.0838-22-6168(作業場) 0838-25-8234(窯場)
住所/山口県萩市椿東4831-3
営業時間/9:00~17:00
定休日/不定休(日休あり)

■岡田窯/岡田泰
TEL.0838-25-3737
住所/山口県萩市椿東前小畑4885
営業時間/9:00~17:00
定休日/土・日

■緑栄窯/松野創平
TEL.0838-25-2088
住所/山口県萩市椿2153-4
営業時間/9:00~18:00
定休日/不定休

編集部がセレクト!美しい暮らしの器たち

萩で巡った7つの窯から、暮らしを美しく彩る器をピックアップ。どちらの窯もギャラリーや展示室があり、陶芸家本人から購入できることも。萩焼の器で食卓を飾って、日々のおうち時間をもっと楽しく

【勝景庵(兼田知明)】萩 飯碗/3300 円

【陶華山窯(松尾優子)】藍コーヒーカップ&ソーサー/3850円

【岡田窯(岡田泰)】萩白釉緑彩 楕円皿/7700円

【緑栄窯(松野創平)】ゴブレット/5500円

【御台場窯(渋谷英一)】地ノ器 リム鉢小 灰/5500円

【小萩窯(厚東孝明)】菊花文皿/3520円

【小萩窯(厚東孝明)】片口マーブル/4400円

【鳥雲窯(納冨尚子)】青萩 皿/3300円

立ち寄って楽しい萩焼スポット

晦事

築200年以上の町家をリノベーションしたカフェ。地元の夏みかんリキッドのジュース400円、チーズケーキ450円、カレーなどは、萩焼の「大屋窯」による器で提供。一部は店頭でも販売。使ってこそわかる萩焼のよさを知る機会に。

DATA

ことこと
TEL.0838-26-7199
住所/山口県萩市呉服町2-32
営業時間/10:00~17:00(16:30LO)
定休日/火

天龍窯

店内には多彩な魅力にあふれた萩焼がずらり。スープカップなどのシックな器もあれば、明るい色彩のアイテムもあり、目移りするほどの品ぞろえ。ベテランから若手まで、萩の陶芸家8名の作品にも注目を。

DATA

てんりゅうがま
TEL.0838-25-2649
住所/山口県萩市椿東3162-4 
営業時間/9:00~17:00
定休日/年末年始

陶芸の村公園

展望台からは市街地や指月山、日本海に浮かぶ島々を一望。園内には萩市が作った登り窯や萩焼オブジェもあり、萩ならではの風景に出会える。例年10月中旬~下旬にはハギの花が見頃を迎え、約50mのハギのトンネルが登場。

DATA

とうげいのむらこうえん
TEL.0838-25-3139(萩市観光課)
住所/山口県萩市大字椿東1284-4 
営業時間/園内自由

山口県立萩美術館・浦上記念館

萩市出身の実業家・故浦上敏朗氏のコレクションを中心とした、浮世絵版画とやきものの専門美術館。増築された陶芸館では、萩焼をはじめとする陶芸・工芸の名品を紹介するほか、約400年の歴史を有する萩焼を資料や映像で解説。

DATA

やまぐちけんりつはぎびじゅつかん・うらがみきねんかん
TEL.0838-24-2400
住所/山口県萩市平安古586-1
営業時間/9:00~17:00(最終入場16:30)
定休日/月(祝の場合、翌休)、年末年始 ※臨時休館あり
入館料/普通展示300円 ※特別展は内容により異なる

【EVENT INFORMATION】
期間限定ポップアップ!大手町に萩焼ランチ&ショップが登場

「TOKYO TORCH 常盤橋タワービル」の3階「MY Shokudo」に、萩の食材を使ったおにぎり&豚汁セットが数量限定で登場! 2022/10/3(月)~10/28(金)の平日11:00~14:00、萩焼の器で提供します。この記事で紹介した萩焼の器の展示販売も。詳細は「MY Shokudo」の公式Instagramをチェック

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PHOTO/MANABU SANO WRITING/MIE NAKAMURA(JAM SESSION)

※記事は2022年9月20日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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