“たたら”里山ごはん vol.01 神社の境内で味わう名物の出雲そば

“たたら”里山ごはん

かつて“たたら製鉄”で栄えた島根県東部の安来市・雲南市・奥出雲町。日本遺産「出雲國たたら風土記~鉄づくり千年が生んだ物語~」の魅力を知るとともに、おいしい旅を満喫してみよう。

更新日:2018/03/13

知っておきたい豆知識

出雲地方に今も残る田園風景。こんもりとした小山は鉄穴残丘(かんなざんきゅう)と呼ばれ、山から砂鉄を採取する際、鎮守の杜や墓地など大切なものがあった箇所を削らずに残したもの。

日本遺産とは

文化庁が2015年度に創設。文化財や自然などを保護する世界遺産とは異なり、地域の歴史的経緯や特色を通してはぐくまれた、日本の文化・伝統を伝える“ストーリー”を日本遺産として認定。現在は、全国各地の54のストーリーが日本遺産となっており、2020年までに100件程度の認定をめざしている。

出雲空港までのアクセス

羽田空港より出雲空港まで約1時間半。空港よりJR木次線宍道駅まではタクシーで約15分
※各スポットをめぐるにはレンタカーが便利

たたら製鉄とは

映画『もののけ姫』の題材にもなった、木炭を燃焼させ、砂鉄を溶かして鉄を作りだす日本古来の製鉄技法。このたたら製鉄で有名なのが、島根県東部の出雲地方。約1400年前から鉄づくりが始まり、江戸時代後半から明治にかけての最盛期には、出雲地方と周辺の地域で全国の約8割を占める鉄が生産されていたという。

日刀保たたら 提供:(公財)日本美術刀剣保存協会

奥出雲町に移住した白山さんご夫妻にその魅力を聞きました

(上)「奥出雲は日本の原風景が残る地」と話す白山さん夫妻 (上から2番目)清流・斐伊川もこの地に残る恵み (上から3番目)夫妻が栽培したオーガニックコットン (下)一年中、火を焚き続ける白山家の囲炉裏 

2016年、"たたら製鉄"で栄えた出雲地方の「出雲國たたら風土記 ~鉄づくり千年が生んだ物語~」が日本遺産に認定された。その物語とは、たたら製鉄がただ単に鉄を生産するだけでなく、人と自然が共生し、さまざまな恵みをもたらしたというもの。砂鉄を採るために切り崩した山を棚田にし、大量の土砂を川に流したことで広大な平野を作った。そうした中から、この地域の人々は仁多米や出雲そばなど地域を代表するおいしいものを生み出した。そんなたたらの文化に魅せられ、奥出雲町に移住したのが、千葉県出身の白山洋光さんと里香さんご夫妻。「千葉にいたときは常に走り続けているような毎日でした。自分たちの食も暮らしももっと大切にしたいと思い始めたときに、映画『もののけ姫』で奥出雲のたたらを知ったんです。しかもちょうどその頃、たまたま食べた仁多米のおいしさにとても驚いて。奥出雲で米を作りながら暮らしたいと思い立ちました」と洋光さん。

そして約10年前に島根県に移住。5年ほど前から、奥出雲町の築約300年の古民家で暮らし始めた。田畑では肥料や農薬を使わずに米や野菜を育て、住まいでは冷暖房を使わないという、囲炉裏中心の日本古来の暮らしを実践している。「こういう暮らしを後世につないでいけたらと思い、民泊を始めました。囲炉裏でお客さんと食事を作ったりしています」。さらに衣食住の"衣"も見直したいと、オーガニックコットンの栽培にも取り組む。「綿花は亜熱帯で育てるのに向いた植物なので、冬が極寒の奥出雲町は栽培に不向き。でもなんとか成功させて、奥出雲からメイドインジャパンのオーガニックコ
ットンを発信していきたいですね」。未来を見据えながら、自然と共存して暮らす白山さんご夫妻。まさにこの地に根づくたたら文化を体現しているようだった。

囲炉裏サロン「田樂荘」(奥出雲町)

TEL.090-4848-0284
島根県仁多郡奥出雲町中村1458
民泊体験料1泊2食付き8800円~(1週間前までに要予約)
カード不可
アクセス/JR木次線出雲横田
駅よりタクシーで約5分※送迎あり(要予約)

たたら文化にはぐくまれた名物を味わおう

<割子そば>
丸い器に盛られたそばにつゆと薬味をかけて味わう。江戸時代、割子と呼ばれる重箱にそばを入れて野外で食べたことが名前の由来だとか。

<漬物などの保存食>
野菜の栽培も盛んな奥出雲。ただし寒い季節は野菜が収穫できないため、漬けたり、干したりした野菜が並ぶ。暖かい時期は旬の野菜が登場。

<仁多米>
つややかでコシと甘みの強い奥出雲産コシヒカリ・仁多米。この店では仁多を自家栽培。天日干しした米はより甘みが増し、うまみたっぷり。

割子そばに日替わりのお惣菜や季節のスープ、デザートなどが付いた横田小そばのそば御膳1400円。数量限定
(左上)石臼で自家製粉したそば粉を丁寧に手打ち (右上)農作物を干して使うなど、里山ならではの食材も (下左右)スサノオノミコトの妻・イナタヒメを祀る稲田神社の社務所が店舗になっている

神社の境内で味わう
名物の出雲そば

約400年前から、そばが栽培されていたという奥出雲。そんな昔ながらのそばを味わうなら、稲田神社の境内にあるこの店へ。おすすめは、自家栽培する奥出雲の横田地区で古くから生産されていた在来種・横田小そばの十割そば。のど越しよりも濃厚な味わいと豊かな香りを楽しんでほしいというそばは、かむほどにうまみが増す。

姫のそば ゆかり庵(奥出雲町)

TEL.0854-52-2560
島根県仁多郡奥出雲町稲原2128-1 
営業時間/11:00~14:30(L.O)
定休/火・第3水
予約不可(そばの取り置きは前日まで可)
カード不可
アクセス/JR木次線出雲横田駅よりタクシーで約3分

おいしい日本旅島根県安来市雲南市奥出雲町

おいしい日本旅“たたら”里山ごはん 
vol.02 ふっくらとした安来どじょう鍋

どじょうすくい踊りが有名な安来市ではどじょう料理がおすすめ。全国2位の生産量を誇り、やわらかくふっくらとした身を楽しもう。

PHOTO/NORIKO YONEYAMA WRITING/MIE NAKAMURA(JAMSESSION)

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※記事は2018年3月13日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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