オズマガジン編集長のトリメキカメラさんぽ 5歩目

オズマガジン編集長の古川が、写真に撮ることで日常のトキメキを記録する「トリメキ」さんぽを始めました。「トリメキ」というのは、カメラマンの川島小鳥さんが日常のキラキラしたものやことを撮影するオズマガジンの連載でした。その「トリメキ」を小鳥さんから引き継いで復活させたのがこの連載。編集長は、愛機の「OLYMPUS PEN E-PL8」(ブラック)を片手に、今日はどこで「よりみち」をしているのでしょうか?

更新日:2017/11/28

ずっと行きたかった「町家 葵 KYOTO STAY」に宿泊。窓の外は鴨川です

 旅が好きで、しょっちゅう旅に出ています。仕事でも、プライベートでも。ときどき「どうしてそんなに忙しそうにしているのに、旅に行く暇があるんですか?」と聞かれるのですが、「忙しいからこそ(実際はそんなに忙しくもないですし)旅に出るといいんです」と答えるようにしています。僕らは週末の2日間があれば結構遠くまで行けるものだし、旅をしているあいだは自分が自分のいろいろから自由でいられる。日常のすぐ近くで中途半端に休むより、身軽に日常を離れてその日常のことを遠くから考える方が気持ちの切り替えにもなり、また続いていく日常に正面から向き合うこともできるなぁと感じています。

 そういう意味では、僕にとって旅はもう人生において欠かせないものと言えると思います。そして最近は、同じ場所になんども行くことが多くなってきました。そのうちにその場所に知り合いが増え、それがまたそこに行く理由になっていく。

 そして最近僕の旅のパートナーになったのがカメラ(PEN)です。今までは旅に出てもあまり写真を撮ろうとは思わなかったのですが、この(PEN)の軽さと手軽さを知ってからは、いつもカバンの中にこの相棒が入っています。

 同じ場所に何度も、のひとつに京都があげられます。そして京都はひとり旅にぴったりの場所です。おいしいものもかわいいものもそこかしこにあるし、なにより大好きなカフェがたくさんある。ひとりの時間を持て余すことがほとんどありません。そして町も店もたくさんの観光客を受け入れ続けているので、ひとりの人に対する接し方も上手だと思います。実際ここ数年でひとり旅の女性を今まで以上に見かけるようになりました。

 今回の京都の旅の目的はずばり宿。泊まるためだけに僕は京都まで来ました。

「町家 葵 KYOTO STAY」は、その名の通り、町家を改装した宿です。町家というのは京都などに多く残る日本の伝統的な建築で、簡単にいうと商売のための家のことを指していてます。それは間口が狭くて奥行きが深いのが特徴的な造りとなっています。
 しかし今、この町家の数は加速度的に減っています。というのも、町家を維持するのはとてもお金がかかることで、その古い家を壊してその土地に新しい建物を建てる方が経済的なのだそうです。

 葵 KYOTO STAYの特徴は、その古い町家にモダンなセンスを加え、新しい価値観を表現しているところです。室内にアンティークの北欧家具が置かれていたり、骨董とも呼べる古いものがセンスよく配されています。BOSEのスピーカーからは静かにジャズが流れていて、窓の外には鴨川が悠然と流れています。とにかく全てが清潔で、古い家の不便さはまったく感じられません。

おしゃれな間接照明と、日が沈んだ後の京都の町=写真のウデが問われます

 居心地のいい部屋で鴨川を眺めながら持ってきた本を読んでいると、いつのまにか少しずつ日が傾きはじめました。窓の外に大きな鷺が飛んでいるのが見えて、ビールを飲みながらその様子を眺めていると、とても豊かで自由な気持ちになることができました。京都まで来てどこにも出かけないで宿の中で過ごす。想像以上に贅沢な時間です。

 ふと、まだ明るいうちにこの時間を写真に撮っておこうと思い、カバンからカメラを取り出して構えてみます。そこでふと気がつきます。

「明るさが足りない・・・」

 僕がいま見ているこの居心地よくてちょうどいい明るさと、カメラに写っている明るさは少し違っていて、露出を変えながら何枚か撮ってみます。窓の外の景色を見せようとすると室内が暗くなりすぎる。室内のいい雰囲気を活かそうとすると、窓の外の鴨川の素敵な雰囲気がうまく伝わらない。そのバランスを取りながら試行錯誤していると、人間の目というのはもしかしたらすごいものなのかもしれない! と、急に思いました。

 外に出て散歩をしながらも、同じことを繰り返します。露出を変えながら何枚かパシャリ。そしてだんだんこう思うようになりました。

「あれ? そういえば、目に見えているそのものを再現する必要ってあるんだっけ?」と。

 実際、写真を撮りはじめて僕が感じたことは、僕は目で見えているよりも暗めの写真の方が好きだということでした。

 そう考えてみると、写真家の蜷川実花さんの写真は僕たちが目で見ているよりはずっと鮮やかに写っているように思えるし、市橋織江さんの写真は夢のように薄い幕がかかったようになっています。

 人間は同じ色でも、見る人によって実は微妙に違う色に写っているということも聞いたことがあります。僕たちが今見ているものは、自分というフィルターを通じて、自分という経験を経て、自分が見たいように見ているものなのかもしれません。

 いずれにせよ、この明るい暗いの露出の補正も、僕のようなメカ音痴でも簡単にできる相棒に感謝です。

カメラはもしかしたら、世界を良くしていく道具かもしれない

 いつもよりぐっすり眠ってパワーチャージ。朝は鴨川にせり出したテラス(柵なし)で熱いコーヒーを淹れて飲みます。スピーカーからいい音で朝の音楽が流れています。清潔な宿というものは、目が覚めたときの気持ちよさが違うものです。

 目の前の鴨川では、犬の散歩をする人やランニングをしている人、ぼんやり座り込んで何かを考えている人。それぞれの人がそれぞれの過ごし方をしています。これも僕の京都の好きな景色のひとつで、こうやって好きに過ごせる場所があるということは、なんと素敵なことだろうと思います。

 今日は日曜日。僕自身もなんの予定もありません。お昼は、昨日の夜に居酒屋で教えてもらった京都ラーメンの隠れた名店を初体験。ラーメンを食べるとコーヒーを飲みたくなるので、そのあとは行きつけの喫茶店まで歩きます。休日は始まったばかり。どこに行くのも自由です。

 心を開いていれば、日常の中にときめきのかけらは溢れています。下を向いて心を閉ざしていると、わたしたちはそれをキャッチすることができません。もちろんうまくいくことばかりではないのが毎日です。わたしたちはもう経験的にそれを知っています。でも誰かが言っていました。「悲観は気分、楽観は意思」です。その通りですね。

 この連載は今回で最終回ですが、毎日のトキメキを、これからも一緒に探していきましょう。#トリメキ にも、いつのまにか3000を超える写真が集まりました。投稿して下さったみなさま、本当にありがとうございました。こうしてみんなで写真の話ができたことは、とても楽しかったです。これからも#トリメキ で、みなさんと毎日のちょっとしたトキメキを共有していけたら嬉しいです。そしてその小さな「意思で生まれる楽観」が、この世界のことをよくしていく一歩なんじゃないかなと、そんな風に思ったりします。カメラって、写真を撮るだけじゃないですね。それは世界をよりよくしていく道具なのかもしれません。ではまた。どこかで。

撮影協力/葵 KYOTO STAY

How to Enjoy たのしくおしゃれな写真を撮ろう 「ADVICE」

僕が写真を撮るときに参考にしているADVICE(ページ)です

 僕が写真を撮るときに参考にしているのがこのADVICE。なかなか難しくなりがちな写真の撮り方の説明を、本当にわかりやすく説明してくれているんです。そしてなによりサイトのデザインやイラストも本当にかわいいから、勉強している感覚はゼロ。すごく「気分よく」カメラを使えます。このサイトを見ていると、ついPENを持って外に飛び出したくなっちゃいますよ。それから、撮りたい写真のイメージをレンズごとに紹介してくれている「RENS RECIPE」もとっても便利で使えます。でも、どんどん新しいレンズが欲しくなっちゃって「その前に腕を磨かなきゃ」って気持ちになっております・・・

みなさんの #トリメキ 投稿。今月の4枚

左上:@elicat27、右上:@beamini.meu2、左下:@misarin22、右下:@snoopy.cafe.0426

「みなさんの日常の中のトキメキを写真にして、#トリメキ をつけて投稿してください」と呼びかけたところ、本当にたくさんのすばらしい写真が集まりました。どうもありがとうございます。みなさん本当に写真が上手で僕なんて当然足元にも及びませんし、編集部でもセレクトが難しいほどの力作が揃いました。今回選ばせていただいた4名の方にはプレゼントをお送りさせていただきます。僕もがんばります。

 みなさんも日常の中で撮影した #トリメキ写真を、インスタグラムでぜひアップしてみてください。#トリメキ をつけて投稿していただければと思います。11月の最終回には、なんと「OLYMPUS PEN E-PL8」を1名様にプレゼント。。オリンパスの公式インスタグラムsweetphoto_olympusもフォローしてみてください。オリンパスのカメラで撮影された写真が投稿されています! 

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※記事は2017年11月28日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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