オズマガジン古川編集長の「F太郎通信2017」Vol.03 2012年6月12日発売7月号「下町」特集

更新日:2017/04/09

25周年記念号。デザインが今よりもカラフルな色使いの時代でした

オズマガジンのバックナンバーを少し楽しく読むためのコラム

こんばんは。オズマガジン編集長の古川です。

 5月11日までの限定で、毎週日曜日にオズモールにコラムを書かせていただいています。今年の6月に、オズマガジンは創刊30周年を迎えます。それを記念して、過去約8年分のオズマガジンのバックンバーを期間限定で読み放題にさせていただきました。どなたでも無料でお読みいただけます。ぜひ読んでいただけたらと思います。

 このコラムでは、その100冊近い過去のオズマガジンから6冊を選んで、その号の思い出を書かせていただいています。オズモールの記事としては少し長い文章ですが、たとえば眠る前の少しの時間だけ、おつきあいいただけたら嬉しいです。

 3回目の今回は2012年7月号。オズマガジン創刊25周年記念号です。もう5年も前の話なんですね。

 この号の特集は「下町」特集。ちょうどこの年は東京スカイツリーが完成して、東京の東側が大きな変貌を遂げるタイミングでした。清澄白河や蔵前、馬喰町などのイーストトーキョーエリアは、ご存知の通りこの5年間でずいぶんと変わりました。

 東京は変化を続ける町です。変わることで新しい刺激が生まれ、町は活性化していきます。でも個人的には、変わることで過去を塗り替えるような変化はあまり好きではありません。そういう文脈でいうとこの10年くらいのイーストトーキョーの変化は、「変えるものは変えるけど、変えないものは変えない」というしなやかな意志のある変化だったように思います。そして僕はその塩梅がとても好きだなあと思います。だから今でも変わらずこのエリアは居心地がよく(お店の人も気持ちいい人たちばかり)僕はついこのあたりの町にさんぽに出かけたくなります。

 25周年の記念号をどんな特集にするのか、当時ずいぶん考えました。出版業界を巡る環境は年を重ねるごとに難しいものになっていました。書店の数は減り、スマートフォンの普及で日々のなかで人が本を読む機会もずいぶん減りました。当然、雑誌の休刊、廃刊も多くなっていきました。
 
 25周年の節目。記念の号ですし、そういうときは肩に力も入りがちです。「とにかく売れるものを」という無言のプレッシャーもあったように思います。

 でも25周年を迎えたときに僕が思ったのは「ああ25年も本が続くなんてありがたいなあ」ということでした。編集長というバトンを受け取って、それをなんとか繋げてこられたことに対する少しの安堵のようなものもあったように思います。
 そんな記念すべき状況の中で、編集部が考えていたことは「6月12日に発売する通巻483号をいい本にしよう」という、シンプルなことだったように思います。

 その号のオズマガジンの巻頭文に、僕はこう書いていました。こういう機会もなかなかないので、もういちどご紹介させていただきます。今読むとずいぶん肩に力の入った文章ですが、その時の気持ちは書けていたんじゃないかなと思います。

いつもオズマガジンを読んでいただき、ありがとうございます。
オズマガジンは今号で、25周年の節目を迎えることができました。

たくさんの時が過ぎて、いろいろなものたちが通り過ぎていきました。
強い風が吹いてあたりの景色を変えてしまうように、
世界ではたくさんのことが変わりました。
そんな世界の中でわたしたちは、本を通して静かになにかを交換し、
変わらない約束をそっと胸にしまいながら、
今日までやってくることができたように思います。
わたしたちは大きな力に向かって本を作ってきたわけじゃなくて、
あなたに届けたくて、本を作ってきたから。

誰かが「紙の本はもう時代遅れだ」と叫んだ日もありました。
誰かが「雑誌はもう死んだよ」と、したり顔で語るのを、隣で聞く日もありました。
それでもわたしたちが今ここにいられるのは、
いまこれを読んでいる、あなたがいてくれたからです。
耳障りのいい一般論じゃなくて、正しく聞こえがちな批判じゃなくて、
手のひらの上でめくられるページを、あなたが信じてくれたからです。

25年目の節目の号に、わたしたちが思いを託したのは、東京の下町でした。
変わらないことの大切さや、変わることを受け入れる懐の深さ、
誰かのことを思いやる優しい心が、今も変わらずに交換されている町から、
わたしたちもあなたにいつもと同じことを言いたいと思いました。
日常を丁寧に。
Life is beautiful.
今月も、いつもと同じオズマガジンです。

こんにちは、さようなら。ありがとう。また会いましょう。
本の力を信じてこられてよかったです。

そしてこれからもここで会えたら、それがいちばん嬉しいです。

 あれから5年が過ぎて、オズマガジンは無事に30周年を迎えることができそうです。あらためて、これまで関わってくださったすべての方に対する感謝の気持ちでいっぱいです。そしてなにより、読んでくださったすべての方に深く感謝しています。
 
 30年を迎えて思うことは、25周年のときとあまり変わっていませんでした。「次に出るオズマガジンをいい本にしよう」ということです。いくつかのイベントや企画は温まっていますが、とにかく毎月12日に書店さんやコンビニに並ぶオズマガジンを、まずはていねいに作ろうということです。

 そういう意味合いにおいては、あらためて僕に「平常心」という心持ちを教えてくれたのは、この25周年を記念した「下町」特集だったと思います。ハレとケで考えたら、オズマガジンは「ケ」を大事にしていくんだ。そういう決意のようなものもあらためて胸に刻まれたように思います。

「日常」と呼ばれる、くり返す日々の中で、読んでくれる方の毎日によりそうように存在できるか。手紙を書くように本を作ることができるか。極論すれば、僕らが毎日考えているのはほとんどそれだけです。

 そして100というのは数字にすると大きな数字ですが、僕らにとっては毎月の1の積み重ねでしかありません。その過去に残した足跡を、こうやってみなさんに読んでいただく機会をいただけたことはほんとうに幸せで、ここに並べられた100冊の本たちも喜んでいると思います。そしてそれを一緒に作ってきた、たくさんのたくさんの仲間たちも喜んでいると思います。

 ぜひ多くの方に読んでいただけたらと思います。ではまた、来週お会いしましょう。

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※記事は2017年4月9日(日)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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