【婦人科医監修】更年期・高血圧を改善する方法とは?|原因や対処・治療法を徹底解説
ずっと低血圧だったのに、健診で血圧が上がっていてびっくり。何かの病気なのでは・・・。そんな、更年期に見られる「高血圧」について悩む人へ、兵庫県西宮市にある「直レディースクリニック」の院長・竹村 直也さんに聞いた、更年期症状のひとつである高血圧の原因や対策をご紹介。
更新日:2021/12/16
更年期・更年期障害による高血圧の症状とは
そもそも「血圧」とは、ポンプの役割をしている心臓から血液が勢いよく流れ出ていったときの“血管の壁にかかる圧力”のことをいう。この圧力が、最高血圧140mmHg以上、最低血圧90mmHg以上、この基準値のどちらか一方、または両方の血圧値が慢性的に超えていると高血圧と判断される。
女性は、若い頃は低血圧の人が多いけれど、50代になると2人に1人が高血圧とも。胸がドキドキする、息苦しい・・・。そんな症状が40代半ばくらいで起きるようになったら、更年期による高血圧を疑って。また、検診などで血圧が上昇してきたら、自分の体が変わってきたという自覚を持とう。
更年期・更年期障害による高血圧の症状の原因
血管の柔軟性がなくなる
女性が若い頃に低血圧の人が多いのは、女性ホルモンのエストロゲンに血管の柔軟性を高める作用があるから。柔らかくしなやかな血管は少ない力でも血液をスムーズに巡らせることができる。ところが、40代に入ってエストロゲンが激変しだすと、血管の柔軟性が低下し、硬くなっていくため、血液を送るのに強い力が必要となって血圧が上がってしまう。
自律神経が乱れやすくなる
自律神経の乱れも高血圧の原因になる。更年期になると、女性ホルモン分泌の司令塔である脳の「視床下部」がいくら指令を出しても増えないため、視床下部はパニック状態に。「視床下部」は自律神経の中枢でもあり、自律神経は血圧をコントロールしているため、結果的に血圧の不安定さに繋がってしまう。この時期は、ちょっとした不安やストレスで血圧が“乱高下”することも珍しくない。
男性ホルモンの割合が増える
閉経によって、体の中で女性ホルモン(エストロゲン)に対する男性ホルモンの割合が増えることも高血圧の要因となる。もともとエストロゲンは男性ホルモンが変換されてつくられている。そのため、閉経によって男性ホルモンがエストロゲンに変換されなくなると、相対的に男性ホルモンが多くなる。男性ホルモンは交感神経の働きを活発化にし、血圧上昇を促すレニンというホルモンの産生を増やすため、更年期になると血圧が上がりやすくなる。
今までの生活習慣が影響する
エストロゲンのおかげで、女性は閉経まで心疾患や脳血管疾患などが少なく抑えられている。けれど、閉経後はその恩恵が受けられなくなる。塩辛いものが好きだったり、ストレスを溜めやすかったり、睡眠不足だったり、運動習慣がなかったり・・・。それまでの生活習慣が影響し、更年期を機に一気に高血圧に転じてしまうこともある。
高血圧になりやすいタイプ
とにかく、塩辛いものが好きな人は要注意。食塩を多くとると、血液中の塩分濃度が下がるため、身体中の水分が血液中に集まってしまう。結果、血液の量が増え、血圧が上昇する。この他、両親から体質を受け継いでいるケースも多い。家族の中に高血圧の人がいる場合には、自分もリスクが高いと自覚し血圧や生活習慣に気をつけたい。肥満気味の人も血圧が上がりやすいので、しっかり対策を。
更年期・更年期障害による高血圧の症状の対処法
食事の工夫
第一にしょっぱい食べ物を減らすこと。料理にも食塩を多用せず、なるべく、わさび、生姜、ニンニクなどの香辛料で風味付けをしたい。また、雑穀ご飯、海藻類、キノコ類、ゴボウなど根菜には、ナトリウム(食塩)を吸着して体外へ排出してくれる“食物繊維”が多く含まれているので積極的に摂取しよう。血圧を下げてくれる栄養素の代表格はカリウム。野菜、果物、海藻類などに多く含まれていて、水に溶けやすいので、生で食べるか煮汁ごと食べられるメニューがおすすめ。他にも、青魚のサンマやブリ、サバなどは血液をサラサラにしてくれるので意識してとるようにしよう。
質のいい睡眠
質のいい眠りも大切。一般的に健康な人の血圧の1日における変化は、起床時から上昇し、80~120mmHgあたりで日中を過ごして、夕方から少しずつ低下し、眠っている間は低くなるのが自然な流れ。ところが、睡眠不足だったり夜中に何度も目が覚めると、交感神経優位となり、日中同様の血圧の高さが続いてしまうため、これが高血圧の原因となる。
有酸素運動
定期的な運動習慣も血圧を下げるのに効果的だ。運動をすると、一時的に血圧が上がってしまうけれど、血管が広がったり、交感神経の緊張が和らいで血圧が下がっていく。目安は、軽いジョギング、水泳、水中歩行、サイクリングなどの有酸素運動を週3日以上。忙しければ、通勤時に一駅手前で降りて会社まで歩く、駅のホームなどで積極的に階段を使うというように日常生活の中で工夫したい。
ストレス解消
精神面では、なるべくイライラやストレスを溜め込まないようにしよう。怒ったり、イライラすると、交感神経が刺激され、血管が収縮し、血圧が上がってしまう。また、副腎から血液を固まらせるホルモンが分泌されて、血液がドロドロになり、血栓の原因に。普段から、たくさん笑ったり、泣ける環境を作って、ストレスを発散しよう。
血圧測定の習慣
自分の血圧を正しく把握することも高血圧を予防する対策となる。ダイエットでも体重計に毎日乗るといいというように、血圧測定も、測ることで自分の血圧を意識することができて、上昇するきっかけやタイミングを知ることにつながり、客観的に生活習慣を見直すヒントを得ることができる。
更年期・更年期障害による高血圧の症状のQ&A
更年期に入ってから血圧が上がったり下がったりしています。これは一過性のものでしょうか?
起床時から上昇し、夕方から少しずつ低下し、眠っている間は低くなるというように、1日の中でも変化します。まずは血圧測定の習慣をつけてみましょう。>高血圧の症状を詳しく見る
更年期の高血圧が原因で引き起こす可能性がある病気を教えてください。
動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中といった病気を引き起こすリスクが高まります。まずはふだんの生活で改善を心がけましょう。>詳しく見る
お話をお伺いしたのは、医師 竹村 直也さん
直レディースクリニック・院長、産婦人科専門医。神戸大学病院他で産婦人科専門医として勤務したのち、2020年に直レディースクリニックを開業。「患者さんの身近にあり寄り添い、安心できるクリニック」をモットーとしていて、患者さんからの信頼も厚い。
WRITING/KANO NUMATA、ILLUSTRATION/HARUKA OSHIMA