冷え性[冷え症]とは?鍼灸師に聞いたタイプ別の特徴や原因と対策
冬に限らず、暖かい日や夏にも感じる手足の冷えや全身の冷え。冷え性とはいったいどういう症状なのか「漢方鍼灸サロン ナチュラルオリエント」の鍼灸師・山野朋英先生に教えてもらいました。タイプ別の冷え性の特徴や、体が冷える原因と対策をチェックして、冷え性の改善をめざして。
更新日:2021/05/11
鍼灸師に聞いた!冷え性[冷え症]のタイプ別 原因
「冷え性」は、血流やホルモンバランス、ストレスも影響
冷え性とは、手足の毛細血管の血流が悪くなったり、体の新陳代謝が低下したりすることで、体に冷えを感じる状態のこと。女性の場合は、ホルモンバランスの乱れも冷えを起こす一因となり、“手足は冷えているけれど頭はのぼせる”といった「冷えのぼせ」の症状が起きるケースもある。
「冷えは万病のもと」と言われているように、肩こりやむくみ、疲れを感じやすくなったり、胃腸の働きが悪くなったり、また、免疫力の低下から風邪を引きやすくなることもあるそう。さまざまな病気を引き起こす原因になるだけでなく、肌の乾燥や顔のくすみなど美容面にも悪影響が。「現代医学では特定の疾患を除いては、冷えに対してこれといった治療薬はありません。」と山野先生。重大な病気を引き起こしたり、肌悩みを悪化させたりしてしまう前に、積極的にセルフケアをすることが大切。
冷え性にはさまざまなタイプがあり、また本人の体質によっても冷えの症状が変わる。代表的な4つのタイプの冷え性と、それぞれの特徴や原因をチェックして、セルフケアの参考にしよう。
【1】四肢末端冷え(手足冷え)
手足の冷えは、普段からストレスを抱えている人に多いのが特徴。ストレスによって自律神経が乱れることで、手足など末端の毛細血管が収縮し、血流が悪くなり冷えを引き起こします。また、クーラーが効いた寒い部屋に長時間いたり、頻繁に水仕事をしたりすることでも手足末端の血流は悪くなりやすく、四肢末端冷え性を引き起こしてしまうそう。思い当たることがない場合は、自分でも気付かないうちにストレスをためているかも。
【2】内臓冷え
内臓が冷えている場合、本人には冷えを感じている自覚があまりなく気付きにくい。お腹が張る、下痢や軟便、生理痛といったお腹周りの不調のほか、疲れがとれない、のぼせといった症状が特徴なので、気を付けてみて。内臓の冷えの主な原因は、生活習慣の乱れや不摂生。寝不足などによりサーカディアンリズム(体内時計)の乱れが起きると、自律神経に影響し、内臓の血流が悪くなって冷えを引き起こし、内臓の働きが低下する。
【3】下半身冷え
下半身が冷えるタイプの主な原因は、食生活の乱れ。普段から冷たいドリンクやお酒をよく飲んでいたり、生野菜のサラダや冷たい麺など体を冷やす食事を好んでいたりする人は注意が必要。胃腸の調子が悪くなることで体内の水分代謝も悪くなるので、冷えのほかにむくみの症状も現れる。また、長時間のデスクワークなどでよくない姿勢を続けていたり、運動不足だったりすると血流が悪くなり、冷えやむくみにプラスして腰痛を伴うケースも多くある。
【4】全身冷え
全身の冷えは、体の新陳代謝が悪くなり、熱生産が低下することが原因。このタイプの人は普段からとても寒がりで、クーラーの冷たい風が苦手と感じたりします。生まれつき病弱で体が弱い人に多く見られますが、食生活の偏りによる栄養不足によっても引き起こされます。そのほかにも、年齢などによりホルモンバランスが乱れると、体は冷えるが顔はのぼせるといった「上熱下寒症状」が現れることがある。のぼせの方が気づきやすいケースもあるので、のぼせを感じた時は同時に体が冷えていないかどうかも確認してみて。
冷えのタイプはこのほかにも、複合してさまざまなタイプが現れる場合がある。「冷え性が気になっている人は、鍼灸師や漢方薬局など東洋医学の専門家に相談することをおすすめします」と山野先生。
冷え性[冷え症]の対策、ケア、治療院
漢方薬を飲む
一般的に、四肢末端の冷えには「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」や「加味逍遥散」などを処方し、経過をチェックしながら長期的に服用して様子を見ていくそう。また、内臓の冷えは主に自律神経を調整する漢方がよく処方される。そのほか、下半身の冷えには「真武湯」や「芎帰調血飲第一加減」、全身の冷えには「八味地黄丸」や「附子理中湯」と、冷えのタイプによって処方される漢方薬はさまざま。
さらに冷えの病因病機(原因)はとても複雑で、1人ひとりの体質を細かく分析して漢方を提案するため、これらの漢方に当てはまらない場合も多い。漢方を購入する際は、漢方の専門家がいるお店で相談しながら購入するのがおすすめ。
リラクゼーションサロンでの施術を受ける
血行不良による冷えを応急処置するには、リラクゼーションサロンなどで手軽に受けられるメニューもおすすめ。低周波で体の深部を温めるインディバや、温めた石を滑らせながらアロマトリートメントを行うホットストーンは血行をよくして冷えを改善へ導いてくれる。また、漢方やハーブを煎じた蒸気を浴びて体を温めるよもぎ蒸しやハマム浴には、サウナで汗をかくようなリフレッシュ効果も。プロによる心地よいリラクゼーショントリートメントはストレス解消にもぴったり。
鍼灸院での施術を受ける
冷え性ときちんと向き合い根本改善をめざすなら、鍼灸院・鍼灸サロンでのケアは特におすすめ。血行不良や自律神経の乱れ、ホルモンバランスの乱れなどが複雑に影響しあって起こる冷え性は、自分ではどうケアすべきか判断しにくいもの。手足が冷えているとそのほかの冷えに気付きにくく、のぼせが気になってさらに体を冷やしてしまう可能性もある。鍼やお灸を専門に扱う鍼灸院や鍼灸サロンでは、問診時に脈や舌の状態、お腹の張りなど、体に現れるさまざまなサインをチェックしてから施術に入るので、より適切な処置を受けられるのがポイント。冷え性に対しての施術は、鍼とお灸を併用して治療することも多く、鍼とお灸が合体した灸頭鍼もよく用いられる。
冷え性[冷え症]の予防
血行不良を改善して冷え性を予防する
「血行不良の改善には運動が重要です」と、山野先生。軽いジョギングやスクワットがおすすめだけれど、通勤の際に少し早足で歩くだけでも効果があるそう。オフィスワークなどで長時間イスに座っていると、お尻から伸びる血管や神経を圧迫して下半身の冷えにつながるため、前屈やピジョンポーズなどでお尻の筋肉(梨状筋)をストレッチするのも効果的。
体を締め付けるような服装やストッキングなどは血行不良の原因となるので避けるほうがベター。足首や首回りは動脈が通っていて冷えやすいので気を付けて。ハラマキなどでお腹を冷やさないようにし、夏でも足首や首回りを冷やさないような服装を心がけて。
冷たい飲み物や体を冷やす食べ物を避ける
冷たい飲み物や食べ物はなるべく控えるのが鉄則。生野菜は体を冷やすので温野菜を選ぶようにして。ネギや生姜などの香味野菜は気の巡りをよくし、血の巡りを改善するので積極的に取るとよいそう。飲み物は、紅茶やプーアル茶などがおすすめ。「朝起きたら白湯を1杯ゆっくり飲んで内臓を温めることも大切です」と、山野先生。そのほか、卵などタンパク質を多く含む食材を食べることも重要だそう。
お灸でホームケアをする
今回、山野先生が教えてくれたツボは、「関元」(おへそから指4本分下)と「太谿」(内くるぶしとアキレス腱の間)。いずれも冷えに有効なツボなのでぜひトライしてみて。お灸がないときは、カイロでおへそを温めるのもおすすめだそう。おへその位置には「神闕」というツボがあり、冷えに効果てきめん。ただし、これらのケアはのぼせの症状がある人には適さないので注意して。
冷え性[冷え症]Q&A
特に手足に冷えを感じることが多いのはなぜですか?
もしかすると普段から強いストレスを抱えていませんか? イライラすることや、緊張することが多いと交感神経が高まり、手足の末梢血管が収縮して血流が悪くなり、それが冷えにつながります。普段から強いストレスがある、緊張しやすいなど、思い当たることはあるでしょうか。もしなければ、運動不足の可能性も高いです。
冷え性が女性に多いのはなぜですか?
女性は男性と比べて筋肉量が少なく、熱の産生や伝達が悪いので冷えやすいと言われています。そのほかにも、無理なダイエットなどで栄養が偏ったり不足したりすると、熱の生産できなくなり体が冷えてしまいます。女性はホルモンバランスの乱れから冷えを引き起こすケースも多いので、「栄養・睡眠・メンタル」に注意して、普段から体調を調えておくことが大切です。
男性も冷え性になりますか?
男性でも冷え性の方はいます。男性が冷えを感じる原因としては、運動不足のほかに、体質的にストレスに弱く胃腸が弱いタイプだったりしますね。冷え性でお悩みの男性も女性同様に、「栄養・睡眠・メンタル」に注意して普段から体調を調えておくといいでしょう。特に心がけてほしいことは飲食に関してです。冷たい飲食物をなるべく控え、消化の良いものを食べて胃腸をいたわってください。
お話をお伺いしたのは、鍼灸師 山野朋英先生
鍼灸師・登録販売者・国際中医専門員。漢方薬店併設の鍼灸院「漢方鍼灸サロン ナチュラルオリエント」代表。「東洋医学で人々を健康にする」をモットーに、漢方と鍼灸を併用した治療を提供している。YouTubeにて「yojo君の暮らしと東洋医学」を配信中。
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ILLUSTRATION/HARUKA OSHIMA