腸活は何から始めるのがいい?専門家に聞いた方法やポイントを紹介
腸内環境を整えるために行う腸活。健康のために始めたいけれど、腸活によいとされる方法はいくつもあり、何から始めればよいのかわからない人も多いのでは? そこで今回は、腸活をするならまず何をすべきか、何に注意すればよいかを管理栄養士の神原李奈さんにインタビュー。効果的な腸活で、健やかな生活をめざそう。
更新日:2024/08/06
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今回お話を聞いたのは・・・管理栄養士 神原 李奈さん
株式会社Luce・健康検定協会所属。大学卒業後、日系航空会社の客室乗務員として働く中で、不規則な食生活から健康と食の強い結びつきを実感、食の世界に興味を持つ。退職後、大手料理教室の講師の経験を経て、得意だったパン作りの経験と技術を活かし、自宅パン教室を開く。食についてより深く学び、仕事の幅を広げたいと思い、栄養士養成専門学校へ入学。その後、管理栄養士免許を取得。 現在は、外資系航空会社で客室乗務員をしながら、管理栄養士として、さまざまなメディアで健康や美容・食に関する情報発信や、栄養指導などを行っている。
1.そもそも腸活とは?
まずは、腸活がどのようなものなのかについて詳しく解説。
腸活とは何をするもの?
腸活は、日々の生活を見直すことで腸内の環境を整えること。腸内環境を整えることは排せつをスムーズにするだけでなく、全身の健やかさにつながる。
近年、健康への意識が高まっていることから腸活に取り組む人は増加する傾向に。食事や日々の習慣にちょっとした工夫を取り入れるだけで、誰でも気軽に始められる。体を内側から整えて健やかな生活をめざしたいなら、ぜひ始めてみよう。
よい腸内環境とは、腸内で多様な善玉菌がバランスよく活発に存在する状態
腸内にはさまざまな細菌が約100兆個も生息していて、それらが種類ごとに集団を形成したものを「腸内細菌叢(そう)」または「腸内フローラ」と呼ぶ。
腸内細菌は、大きく分けて善玉菌、悪玉菌、いずれにも分けられない日和見(ひよりみ)菌の3種類があるとされる。善玉菌は腸の動きを活発にして排便をスムーズにしたり、体の免疫力をサポートしたりして、健康維持に役立つ。代表的なものに、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などがある。悪玉菌は一般的には病気や食中毒の原因になることもある細菌で、ウエルシュ菌や一部のサルモネラ菌などを指す。
よい腸内環境とは、腸内でさまざまな種類の善玉菌が豊富に存在し、悪玉菌よりも優勢な状態のこと。善玉菌は乳酸菌や酢酸を作り、腸内を酸性にすることで、悪玉菌の増殖を抑えてくれる。
2.腸活に期待できる7つの効果
腸活を行うことで期待できる、7つの効果を紹介。腸活を始める前にチェックしておこう。
便秘や下痢の予防
腸内環境を整えると、便秘や下痢になりにくくなる効果が期待できる。大腸の中に悪玉菌が増えた場合、菌から体を守りにくくなったり、波のように動いて便を先へ送り出すぜん動運動を鈍らせたりする原因に。
さらに、便秘で大腸に便が溜まると、悪玉菌が増えて悪循環に陥ってしまう。腸活によって大腸のぜん動運動を促す善玉菌を増やせば、理想的な排便をキープしやすい。
免疫力のサポート
腸には、体全体にある免疫細胞のうち半数以上が集まっているとされる。免疫細胞は、病原菌やウイルスなどを体から排除するために欠かせない存在。免疫を維持するには、腸内環境を整え、免疫細胞のはたらきをサポートすることがカギとなる。
善玉菌の中でも「酪酸菌」が産出する酪酸は、病原菌やウイルスの侵入を防ぐ抗体「免疫グロブリン A(IgA)」の増加を促すはたらきを持つ。体のバリア機能を維持したいなら、酪酸菌を積極的に摂る腸活もおすすめ。
肌トラブルが起こりにくくなる
腸内の環境がよくなることで、肌トラブルの予防も期待できる。食事中のタンパク質に由来するアミノ酸(チロシン)を腸内細菌が代謝し、フェノール類が産出されると、吸収され血流を介して皮膚に蓄積。皮膚のくすみや乾燥の原因となる。
腸内フローラのバランスを整えることで、フェノール類の産出を抑えれば皮膚を健やかに保ちやすい。また、腸内細菌の中には、美肌によいとされるビタミンを腸内で生成するものも。
肥満の予防
腸活には、肥満を防ぐ効果も期待されている。腸内環境を整えると、酢酸や酪酸などの「短鎖脂肪酸」がきちんと作られる。短鎖脂肪酸には、脂肪蓄積を抑えつつエネルギー消費量を増加させ、エネルギー代謝をコントロールする役割も。
腸活が肥満の解消に直結するわけではないが、ダイエットを考えているなら腸活にもあわせて取り組むのがおすすめ。
ストレスの緩和
脳と腸は、自律神経系や液性因子(ホルモンやサイトカインなど)を介して密に関連している。神経伝達物質であるセロトニンは、腸内環境を整えることで合成が促進されるといわれている。気分の落ち込みやストレスを緩和させたいなら、腸からアプローチするのもひとつの手。
睡眠の質の向上
腸内環境は睡眠の質にも影響しやすい。脳腸相関といい、脳と腸は密接に関わっていることから、腸活により腸内環境を整えることでストレスが緩和され、睡眠の質向上につながる。
老化防止
腸活による免疫機能の維持やストレス緩和、睡眠の質の向上は、老化予防にもつながると考えられる。年齢を重ねることだけでなく、細胞や組織に起こる炎症も老化の原因のひとつ。腸内環境が整えば免疫細胞をよい状態に保ちやすく、またストレスの緩和による睡眠の質向上にもつながり、若々しい体や肌をめざせる。
3.腸活は何から始める?すぐに取り組める方法を紹介
腸活を始めるにあたり、まず何からすればいいのか悩む人は多いはず。ここでは、今日からでも取り組める腸活の方法をご紹介。
【食事】善玉菌を増やす食べ物を取り入れる
腸活の基本ともいえるのが、バランスのとれた食事内容。食べるものによって腸内環境は大きく左右されるため、まずは食事の内容を変えてみよう。
基本的には、善玉菌を含む食品と、善玉菌のエサとなる食品をあわせて摂り、善玉菌の増殖をめざすのがポイント。自炊する時間が取れない人でも、調理なしで食べられるものなら手軽にプラスできる。
善玉菌を多く含む発酵食品
発酵食品には体にいい善玉菌が多く含まれていて、「プロバイオティクス」とも呼ばれる。代表的なものとして挙げられるのはチーズ、ヨーグルト、納豆、キムチ、ぬか漬け、味噌など。中でも納豆や漬物類、ヨーグルトは、普段の食事にそのままプラスするだけでよいので、簡単に腸活を始めたい人にはおすすめ。
ただし、発酵食品は塩分が高いものも多いため、食べすぎには注意が必要。食事内容によっては、1日あたりの食塩摂取量の目標量を超える可能性がある。
また、善玉菌を含む食品を数回食べたからといって、そのまま菌が腸に定着するわけではない。毎日続けて摂取することで、少しずつよい腸内環境をめざそう。食品から摂りにくい「ビフィズス菌」「酪酸菌」などを摂取するには、サプリメントを活用するのもひとつの手。
善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖
食物繊維やオリゴ糖には、善玉菌のエサとなり善玉菌を増やすはたらきがある。「プレバイオティクス」とも呼ばれていて、発酵食品と組み合わせながら積極的に取り入れるのがおすすめ。
食物繊維が豊富な食べ物は、野菜、豆類、海藻類、きのこ類、果物など。中でも、海藻類などに含まれる水溶性食物繊維は、善玉菌のエサになりやすい。ゴボウやイモ類などに含まれる不溶性食物繊維は、便の量を増やして排便を促すのに効果的。
オリゴ糖を豊富に含むのは、大豆、タマネギ、ゴボウ、バナナなど。手軽に食べられるバナナは、1日1本を目安に、ほかの果物と組み合わせながら計200g(※)程度摂るとよい。なお、オリゴ糖を摂りすぎるとお腹の張りや下痢を引き起こすこともあるため、体の調子を見ながら量を調節して。
※出典:健康日本21(第二次)厚生労働省
【運動】軽いエクササイズで体を動かす
適度な運動も、腸の動きをサポートするには有効。腸を刺激することで便秘の解消につながるほか、自律神経を整えて腸の活動を活発にさせる効果も期待できる。
これから腸活を始めるなら、日常的に取り入れやすい軽めのエクササイズがおすすめ。とくにハードなトレーニングは必要ないので、1回30分以上の運動を週2回以上行えるように、無理なく始めよう。
忙しくてエクササイズのための時間を取れない人は、以下のような運動を取り入れてみて。
階段の上り下り
普段エレベーターやエスカレーターを使う機会が多い人は、意識して階段を使うだけでもエクササイズになる。ただ歩くよりも負荷がかかるため、腸によい刺激を与えやすい。腹筋を意識しながら、姿勢を正して上り下りするとより効果的。
椅子に座って行うエクササイズ
デスクワークをする人には、椅子に座ったままできるエクササイズがおすすめ。正しい姿勢をキープしたまま、片方ずつ足を上げたり、椅子に座ったまま足踏みをしたりすることで、腸の運動に必要な筋肉を刺激できる。座ったまま体を捻る、手をまっすぐ上に挙げて体を伸ばすといった動きも織り交ぜてみて。
【睡眠】質のよい睡眠のための環境を整える
生活リズムが乱れて睡眠不足になると、腸内環境が乱れやすい。できるだけ規則正しい生活を心がけ、しっかりと睡眠をとろう。質のよい睡眠をとるために、以下のポイントを意識してみて。
昼夜のメリハリをつける
ぐっすり眠るためには、昼夜のメリハリをつけることが大切。日中はしっかりと体を動かし、寝る前には静かな部屋でリラックスしながら過ごそう。
寝る前は青白い照明のもとで過ごさず、普段より暗い環境で過ごすのがおすすめ。起床後はできるだけ早く太陽の光を浴び、体と脳のモードを切り替えて。
就寝前にスマホやパソコンを使わない
スマホやパソコンの画面から出るブルーライトを浴びると、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌が抑制されるといわれている。就寝する1時間前になったら、スマホやパソコンの使用は控えて。どうしてもスマホを見てしまいがちな人は、寝室にスマホを持ち込まない習慣をつけるとよい。
4.腸活におすすめな3食のメニュー例
腸活によい食材を理解しても、それらをどう取り入れればよいのか悩む人も多いはず。ここでは、腸活におすすめなメニューの例を朝食、昼食、夕食別に紹介するので、食事を見直す際の参考にして。
【朝食】手軽に食べられるサンドイッチやヨーグルト
朝食は、身支度で忙しい中でも手軽に食べられるものがおすすめ。例えば、ツナサンド、サラダ、フルーツ、ヨーグルトなどは、時間をかけずに用意しやすい。ヨーグルトにオリゴ糖をかけるなどのひと手間を加えれば、善玉菌の増殖を助けられる。
また、尿で排泄される塩分量は夜のほうが多いため、朝や昼の食事は塩分を控えめにするとよい。腸活には和食がよいと思われがちだが、和食は味噌汁や漬物、煮物などで塩分摂取量が多くなりやすいため、健康維持に配慮するなら洋食がおすすめ。
【昼食】忙しくても食べやすいおにぎりをメインに
仕事や家事の合間のランチタイムは、忙しさでしっかり時間を取れないことも。どこでも食べやすいおにぎりなら、腸活に配慮しつつ必要な栄養素を摂れる。オメガ3系脂肪酸を含む鮭や、水溶性食物繊維が豊富な昆布など、腸によい具を選んでみて。
自分で作るのが面倒なときは、コンビニなどで買ってもOK。おにぎりだけでなく、インスタントの味噌汁や納豆巻きなど、腸活によい食べ物を手軽に揃えられる。また、インスタントの味噌汁やコンビニのサラダに糸かんてんや乾燥わかめなどをプラスすると、食物繊維の摂取量が増え、善玉菌の増殖につながるのでおすすめ。
外食の場合も栄養バランスがよくなるよう、できるだけ主食、主菜、副菜の揃った内容を意識して。時間があるときは、できるだけ品数が豊富な定食メニューなどをしっかり食べて、腸内の菌の多様性をキープしよう。
【夕食】消化にいいメニューで胃腸の負担を抑える
夕食に脂質の多いメニューを取り入れると、消化に時間がかかり睡眠に影響を与えやすい。消化にいい食べ物を摂ったり、量を軽めにしたりして、胃腸の負担を抑えよう。
脂質が少なく消化のいいたんぱく質は、鶏胸肉やささみ、白身魚など。鶏胸肉には心身の疲労回復にいいとされる「イミダゾールジペプチド」が多く含まれるため、良質な睡眠をとりたい夜の食事にぴったり。
メニューとしては、体を内側から温める汁物や、手軽に作れる鍋料理がおすすめ。食物繊維やビタミン、ミネラル、たんぱく質などをたっぷり摂れるうえ、具を変えればマンネリ化も防げる。豆乳鍋やキムチ鍋なら、腸内の善玉菌を増やす効果も期待しやすい。
夜は塩分の尿排泄が増えるため和食もおすすめだが、塩分の摂りすぎには注意。鍋のスープは飲まないようにする、漬物はごく少量にとどめるなど工夫して。
5.自分の腸内環境を知るには何をチェックすればいい?
腸活を始めたら、気になるのは自分の腸内環境の変化。腸内環境の状態は毎日の便に現れるので、形や色、量、臭いなどをチェックしてみて。
お通じの頻度は、毎日でなくてもOK。週に3日以上、1日おきなど、定期的にお通じがあれば、腸内環境が整っているといえる。1回あたりの便の量はバナナ1~2本程度が目安だが、食事量や排便の回数によっても異なるため、極端に少なすぎなければ気にしなくてもよい。
理想的な便は、なめらかなソーセージ形で、色は黄褐色の状態。腸内環境が乱れていると、硬すぎたり柔らかすぎたり、色が濃いこげ茶になったりする。また、悪玉菌が多いと便の臭いが強くなるので、アンモニア臭や硫黄臭がないかも確かめよう。
また、肌の調子や睡眠の質が改善されていると感じた場合も、腸内環境が整ってきている可能性がある。
6.よい腸内環境は1日にして成らず。継続することが大切
食品などから新たに取り入れた菌は、ある程度の期間は腸内に存在しても、ずっと棲みつくわけではない。腸内環境の変化の仕方には個人差があるが、腸活を数カ月間継続してみよう。
しかし、栄養バランスのため自炊にこだわりすぎたり、毎日欠かさず運動を取り入れたりしようとすると、負担を感じて継続が難しくなることも。必ずしも毎日運動する必要はなく、腸活によい食べ物は外食でも摂れるので、無理のない方法で続けてみて。
今回お話を聞いたのは・・・管理栄養士 神原 李奈さん
株式会社Luce・健康検定協会所属。大学卒業後、日系航空会社の客室乗務員として働く中で、不規則な食生活から健康と食の強い結びつきを実感、食の世界に興味を持つ。退職後、大手料理教室の講師の経験を経て、得意だったパン作りの経験と技術を活かし、自宅パン教室を開く。食についてより深く学び、仕事の幅を広げたいと思い、栄養士養成専門学校へ入学。その後、管理栄養士免許を取得。 現在は、外資系航空会社で客室乗務員をしながら、管理栄養士として、さまざまなメディアで健康や美容・食に関する情報発信や、栄養指導などを行っている。