マグネシウムをとることで肌のバリア機能が回復する?メカニズムや実用化の可能性について紹介【美肌カレッジ②】

常に美肌を目指す人たちに、最新の肌に関する情報を提供する「美肌カレッジ」。2回目は、潤いを保つために大切な働きをしているバリア機能について。バリア機能が乱れると肌の状態が不安定になり多くの女性の悩みになっている。そこで、岐阜薬科大学の五十里彰教授と株式会社資生堂の共同研究で明らかになったマグネシウムと肌のバリア機能の関係についてご紹介。実用化の可能性も解説しているので、気になる人はチェックして。

更新日:2023/04/04

マグネシウムでどうしてバリア機能を回復させることができる?

「ヒアルロン酸」や「コラーゲン」は水分を蓄える性質があり、肌のバリア形成に関与しています。これまでマグネシウムは肌バリアを改善させる働きをもつことが知られていましたが、そのメカニズムは不明でした。

我々は、マグネシウムが肌バリア因子である「ヒアルロン酸」や「ポリアミン」の産生量を増やすことを発見しました。ヒアルロン酸は、「N-アセチルグルコサミン」と「D-グルクロン酸」という糖が多数結合したもので、角質層の水分保持において重要な役割を果たします。ポリアミンは、皮膚表皮細胞のターンオーバーを促進する働きや紫外線などのダメージから細胞を保護する働きがあります。

また、酸化ストレスや紫外線障害に対し、マグネシウムが保護効果をもつことを明らかにしました。マグネシウムは保湿因子の産生量を増やすことにより、肌バリアを増強すると考えられます。

今後の実用化の可能性や一般ユーザーのメリットはありますか?

食生活の変化やストレスなどにより、現代人は慢性的にマグネシウムが不足しています。ヒアルロン酸などの高分子は、皮膚に浸透させることが難しいですが、サイズの小さいマグネシウムイオンは真皮層に移行しやすいと考えられます。

マグネシウムは保湿因子の産生量を増やし、保湿機能を高めることができるため、体の外または内からマグネシウムを補充することにより、肌バリアの強化が期待されます。また、健康のためだけではなく美容にも効果的という結果を得ることができたため、医薬品や化粧品業界だけでなくさまざまな分野で活用されることを期待しています。

マグネシウムとバリア機能の関係性まとめ

・マグネシウムが肌のバリア因子である「ヒアルロン酸」や「ポリミアン」の産生量を増やす
・ヒアルロン酸は肌の水分量の維持、ポリミアンはターンオーバーの促進・紫外線などの外部刺激からの保護の働きがある
・食生活の変化によって現代人はマグネシウムが不足している傾向。体の内や外からマグネシウムを補充してバリア機能を強化していく必要あり

今回教えてくれたのは・・ 岐阜薬科大学 五十里彰 教授

1999年に富山医科薬科大学(現富山大学)で学位を取得後、静岡県立大学薬学部で助教、准教授を経て、2013年に岐阜薬科大学薬学部の教授に就任した。2021年からは副学長を兼任する。上皮膜を介したミネラルや栄養素の輸送に興味があり、生理学、病態生化学、創薬科学などさまざまな分野の研究手法を組み合わせ、分子、細胞、動物レベルの研究を行っている。好きな言葉はセレンディピティーで、アンテナを張り巡らせて、新しい可能性を見出すことを心掛けている。

今回の本研究を通じての想いや伝えたい内容等ありましたら教えてください

マグネシウムはカルシウムに比べるとマイナーな金属イオンですが、骨の形成や神経伝達など、生命の維持に不可欠なミネラルです。また、カルシウムの効率的な吸収にはマグネシウムが必要なため、慢性的なマグネシウム不足である現代人は、食生活を見直す必要があります。

今回、マグネシウムは健康の維持だけでなく美容にも有用である知見が得られ、今後、医薬品や化粧品業界だけでなく、さまざまな分野で活用されることを期待します。

株式会社資生堂との共同研究に至った背景があれば教えて下さい

大学院博士後期課程を修了後、1999年から生活習慣病や遺伝病とマグネシウムの関係について、研究をスタートさせました。

学術イベントでマグネシウムの輸送と生理機能について講演した際に、資生堂の研究員から肌バリアとマグネシウムに関する共同研究のお誘いをいただきました。マグネシウムを肌に塗布することでバリア機能が回復することや、マグネシウムを豊富に含有する海水に浸ることで皮膚の炎症が改善することなどが報告されていたため、マグネシウムの作用メカニズムを細胞と分子レベルで検討することにしました。

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※記事は2023年4月4日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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