皮膚保湿効果が認められている「トマト種子エキス」とは?開発背景や実用化の可能性についても【美肌カレッジ①】
常に美肌を目指す人たちに、最新の肌に関する情報を提供する「美肌カレッジ」。第1回目は、環境や気温の変化で常に悩みとして付きまとう乾燥。乾燥によって肌のバリア機能が低下すると、肌荒れ等の肌トラブルにつながることも。そこで近畿大学の森川教授とオリザ油化株式会社の共同研究で角層のセラミドの増加と抗炎症作用が明らかになった「トマト種子エキス」について紹介。実用化の可能性も解説しているのでぜひチェックして。
更新日:2023/03/07
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トマトが乾燥にいいのはなぜ?
トマト種子エキスの研究を進める中で数多くの含有成分が明らかになったのですが、そのなかに「サポニン」と総称される化合物が数種類得られました。実験を行ったところ、これらの「サポニン」には角層セラミド量の増加に伴い肌表面から蒸発する水分量を減少させ、皮膚を保湿する効果があることが判明しました。
「サポニン」は、トマトの種子だけではなく可食部である果肉部にも含まれています。しかし、トマト由来サポニンのなかでも高い保湿効果が認められた「リコペロシドH(lycoperoside H)」は、果肉部にはほとんど含まれず、種子のみに存在していました。果肉部も含めたホールトマトではなく、種子だけを用いてエキスにする理由がここあります。さらに「リコペロシドH」は、アトピー性皮膚炎モデル(IL-33 Tg)マウスを用いた実験で、皮膚炎症症状を緩和することが明らかとなりました。
これらの結果により、トマト種子に特有の「サポニン」「リコペロシドH」が、角質層でのセラミド合成を促進することで発揮される保湿効果と皮膚の炎症症状を緩和する効果が明らかになりました。
今後の実用化の可能性や一般ユーザーのメリットはありますか?
トマト種子エキスの保湿効果は、皮膚の内側へ働きかける肌の弾力ケアだけでなく、外側の乾燥肌(ドライスキン)改善の両側面をあわせもった食品素材であると考えます。また、塗布することによって皮膚のバリア機能を維持することも期待できるため、肌荒れなどの肌トラブルや乾燥肌向けのスキンケア商材としての展開が期待できます。
トマトの乾燥対策おすすめポイント
・トマト種子エキスに含まれる「サポニン」「リコペロシドH」によって皮膚保湿効果が明らかに
・「サポニン」が角質層のセラミドを増加させ肌表面から蒸発する水分量を減少。トマト種子の中に含まれる「リコペロサイドH」の抗炎症作用によって皮膚を保湿
・皮膚の弾力ケアだけではなく、乾燥肌や肌トラブル改善も期待できる。将来的には乾燥肌向けの化粧品としての展開も期待
今回教えてくれたのは・・ 近畿大学 薬学総合研究所 森川敏生教授
近畿大学 薬学総合研究所/大学院薬学研究科 教授・アンチエイジングセンター 副センター長(兼務).専門は 生薬学,天然物化学,食品薬学,博士(薬学).世界各地の薬用および食用天然資源から,生活習慣病の予防や初期症状の緩和などに役立つ機能性成分を探索している.著書に『スパイス・ハーブの機能と応用』(シーエムシー出版)
本研究を通じての想いや伝えたい内容等ありましたら教えて頂きたいです。
食品業界のみならず、あらゆる産業においてSDGsの掲げる目標に対する取り組みがすすめられています。未利用資源であるトマト種子から高付加価値化に資する機能性成分を発見し、もって、健康や美容に役立つ利用を提案できる、このような環境調和を意識した実学研究を通して持続可能な社会の発展に貢献していきたいとの想いで、日々研究しています。
オリザ油化株式会社さんとの共同研究に至った背景があれば教えて下さい。
私たちは、「くすり」と「食べ物」になる天然資源を研究素材として、生体機能性をもつ化合物を発見する『食品薬学』研究をおこなっています。現在、特定保健用食品や機能性表示食品として市場に出回っている食品素材のなかにも、私たちが(機能性)関与成分を明らかにしたものがいくつもあります。
オリザ油化株式会社さんは、これまでにも独自性の高い新たな機能性素材を精力的に探索されていますが、そのひとつとしてトマト種子エキスに皮膚のバリア機能を維持する機能性があることを発見されました。今回、その機能性を示す活性寄与成分が何であるかを明らかにしたい、いわゆる“モノトリ研究”をお願いされたのが、この共同研究に至った背景です。