保健室ウィーク_婦人科

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パートナーとの大切なコミュニケーションであるセックス。でも、気を付けなければいけないのが、性感染症(STD)。正しい知識を身につけておけばリスクを避けることができるので、自分自身やパートナーを守るためにも、予防法や治療法をきちんと知っておこう。

更新日:2020/05/19

性感染症

性感染症とは性行為によって感染する病気の総称で、主なものにクラミジア感染症、淋菌感染症、HPV感染症、梅毒、性器ヘルペス感染症、トリコモナス膣炎、HIV感染症などが挙げられる。感染してもしばらくは自覚症状がない場合も多いため、知らないうちにパートナーを感染させてしまう可能性もあるのだとか。

産婦人科医の宇津野栄先生は、「膣性交以外の性行為でも性感染症が感染する可能性があります」と話す。
「性感染症は粘膜の接触によって感染する病気です。オーラルセックスやアナルセックスでも感染のリスクがあり、なかにはキスで感染してしまう性感染症もあります」(宇津野先生)

さまざまな感染のリスクが考えられる性感染症。予防のためには性行為時にコンドームを正しく使用することと、パートナーと一緒に検診を受けることがおすすめなのだそう。
「症状が現れたときは病気が進行しているケースが多いので、自覚症状がなくても早期に検査を受けることが大切です。検査は主に、おりものの採取や血液検査などを行います。所要時間は1~2分程度なので、婦人科検診とあわせて受診するのもいいでしょう」(宇津野先生)

性感染症の基礎知識

特に多く見られる「クラミジア感染症」「淋菌感染症」は自覚症状がない

特に多く見られる「クラミジア感染症」「淋菌感染症」は自覚症状がない

性感染症のなかでも最も多いのは「クラミジア感染症」。「クラミジア・トラコマティス」という病原菌が性器、のど、直腸などに感染して炎症を起こす病気で、多くの人は無症状といわれているので自覚しにくい。
「おりものの増加や不正出血、下腹部の痛みなどが現れる場合もありますが、ほとんどは無症状か症状が軽いため見過ごされやすいのです」(宇津野先生)

そのまま放置しておくとパートナーに感染させてしまうだけでなく、子宮から卵管、腹腔内に感染が進行して子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎などを引き起こすことも。子宮外妊娠や不妊症の原因になることもあるほか、感染したまま出産すると、胎児にも感染する可能性があるのだそう。とにかく早めに対処したいところ。
もし感染していた場合でも薬の服用によって1~2週間で治療できるというから、早期発見が大切。

クラミジア感染症についで多いのが淋菌感染症で、男性の場合は激しい痛みが現れることが多いのに対し、女性の場合はクラミジア感染症と同様に症状が現れにくいことが多い。そのため知らないうちに進行する可能性があり、放置すると骨盤腹膜炎を引き起こし、子宮外妊娠や不妊症の原因になることもあるという。

「クラミジア感染症と同様で、自覚症状がなくても早期発見のために検査を受けましょう。治療は注射や点滴などによって行い、1~2週間の治療期間が目安となります」(宇津野先生)

尖圭コンジローマや子宮頸がんを引き起こす「HPV感染症」

尖圭コンジローマや子宮頸がんを引き起こす「HPV感染症」

性行為によって「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が感染して発症するHPV感染症のひとつに、「尖圭(せんけい)コンジローマ」がある。外陰部、膣、子宮頸部に薄茶色の固いイボができる病気で、症状が自覚できるので、発症したら病院でイボの切除や薬の塗布などの方法で治療が行われるという。

「ヒトパピローマウイルスは、尖圭コンジローマの原因となる『低リスクHPV』と、子宮頸がんなどの原因になりやすい『高リスクHPV』に分類されます。高リスクHPVに感染しても多くは自身の免疫力などによって自然消滅しますが、まれに子宮頸がんに進行するケースがあるため、定期健診(がん検診)を受診することが重要です」(宇津野先生)

なお、高リスクHPV感染による子宮頸がんは、性交渉経験がなければワクチンである程度予防することもできる。また、性交渉経験があっても20歳前後の場合は高リスクHPVに感染していない可能性があるので、ワクチン接種が効果的な場合も。医師に相談してみよう。

「梅毒」は感染後3週間、3カ月、3年で病状が変化する

「梅毒」は感染後3週間、3カ月、3年で病状が変化する

古くから知られる性感染症といえば梅毒だけれど、実は近年、梅毒の感染者が20~40代を中心に急増しているのだとか。いったいどんな病気なの?
「梅毒トレポネーマという病原体に感染して起こる病気で、感染からの経過時間によって症状に変化が現れます。感染から約3週間後は『第1期梅毒』と呼ばれ、感染した場所に小さなしこりや足の付け根のリンパ節のはれが現れます。これらは痛みを伴わず自然に消えます。感染から約3カ月がたつと『第2期梅毒』と呼ばれ、身体全体に赤い発疹(バラ疹)が現れたり、肛門周辺や性器などに扁平コンジローマと言われる平らなできものができる。感染から約3年以上経過すると『第3期梅毒』と呼ばれ、ゴム腫といわれる柔らかいできものが皮膚や筋肉にでき、『第4期梅毒』は末期で、心臓、血管、神経、目などに重い障害が現れます」(宇津野先生)

梅毒は粘膜接触で感染するため、膣性交だけでなくオーラルセックスやキスなどでも感染する可能性が。そのため、パートナー同士で感染していないかを確認することが重要なのだそう。
「第1期梅毒の場合は2~4週間、第2期梅毒は4~8週間、第3期梅毒は8~12週間薬を服用して治療します。完治したあとも定期的な検査を行います」(宇津野先生)

どの性感染症も、早期発見と早期治療が大切といえそう。まだ検査を受けてないという人は、クリニックに相談してみて。

教えてくれた人

宇津野栄先生

産婦人科医。宇津野レディスクリニック院長。日本産婦人科学会認定専門医、順天堂大学産婦人科講師、母体保護法指定医、日本性感染症学会評議員。ホームドクターとして日常的な婦人科系治療にあたるほか、検診によるがんの早期発見、婦人の健康意識の向上・啓発に取り組んでいる。

性感染症チェックを受けられる婦人科クリニック

丸茂レディースクリニック

六本木一丁目駅に直結し、アクセスにも便利なクリニック。超音波の専門医でもある院長が、1人の患者を一貫して診察してくれ、お悩みについても気軽に相談できる。

広尾レディース

明るく、広々とした待合には、BGMにジャズが流れるリラックス空間。恵比寿駅から2分、平日は19時まで、土曜も診察をしているので、働く女性も通いやすい。

ポートサイド女性総合クリニックビバリータ

明るいオレンジがテーマカラーの女性専用クリニック。医師、看護師、カウンセラーなど、スタッフは全員女性。漢方やアロマによる治療も取り入れ、女性の健康をサポートしてくれる。

堀産婦人科

70余年続く地元密着の産婦人科。がん検診の専門医でもある院長が患者1人ひとりに向き合って診察してくれる。専門病院とも連携をとりながら最先端技術を取り入れ、一生を通して女性の健康をサポートしてくれる。

はるねクリニック銀座

銀座に婦人科クリニックを開業して15年以上。丁寧な診察はもちろん、患者の小さな不安にも寄り添い 応えてくれる。女性医師が必ず診察してくれる。漢方処方なども可能で、1人ひとりに合った提案をしてくれる。

後楽園ウィメンズクリニック

女性医師の院長が問診から診察、その後のアフターフォローまで丁寧に対応。女性のライフステージに沿って起こる不調や症状にも的確な診断と治療をしてくれる。初めて婦人科を訪れる人にもリラックスして来院できるよう院長はじめ、女性スタッフが細やかな対応で迎えてくれる。

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ILLUSTRATION/CHIKA SHIBA

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※記事は2020年5月19日(火)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります

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