日本で子ども向けの雑誌が創刊されるようになったのは、1910年代。それから約100年がたち、今では個性的な絵本が数多く生まれている。そんな日本の絵本について100年の歩みをたどる展覧会が、練馬区のちひろ美術館・東京で開催される。世代を超えたロングセラーも展示されるから、大好きだった懐かしい絵本に出会えるかも。
いわさきちひろなど各時代を代表する画家58名の約120点が一堂に
2017年11月8日(水)から2018年1月31日(水)まで。練馬区の公益財団いわさきちひろ記念事業団「ちひろ美術館・東京」では、開館40周年記念イベントのひとつとして企画展「日本の絵本100年の歩み」を開催。会場では、1910年代から現在までのさまざまな時代を代表する画家58名による作品約120点を展示して、豊かに広がる日本の絵本表現の足跡をたどる。(同時開催:ちひろの歩み)
「当館のコレクションとあわせ、多くの方のご協力のもと、これほど充実した作品を一望できる機会は、なかなか再び巡ってこないのではないかと思います。絵本のもつ芸術性はもちろん、社会的な意義や果たしてきた役割も合わせて知ることで、絵本の魅力とともに、奥行きの深さを一層実感していただけるのでは」と、ちひろ美術館・東京のシニア・アソシエイト、中平さん。
「童画」が誕生して日本独自の絵本文化が開花する大正時代の作品群
1910年代といえば大正期で、日本では子ども向けの雑誌「子供之友」や「赤い鳥」などが相次いで創刊された時代。民主主義の元となる自由な「大正デモクラシー」の機運が高まる中、芸術性の高い絵雑誌から日本独自の「童画」というジャンルも誕生して、絵本文化の黄金期を迎えたという。写真は、ちひろ美術館コレクションによる岡本帰一の表紙絵。明るく可愛らしい画面から、当時の自由な気風や高いデザイン性が感じられる。右から読む、ちょっとレトロな本のタイトルもどこかおしゃれ。
昭和の戦後に再び花開いた絵本文化。ロングセラーも数多く誕生
絵本文化は、やがて第二次世界大戦という時代の波に飲み込まれてしまうけれど、戦後はそれまで以上に発展。1960年代に入ると、今でも世代を超えて親しまれているようなミリオンセラーの絵本も数多く生まれる。それは、未来を築いてゆく子どもたちに「希望」を託すためだったのかも。瀬川康男の『いないいないばあ』(写真)は、ママ世代から今の子どもたちまで読み継がれているから、知っているという人も多いはず。
個性的で多彩な表現の広がりと時代ごとのテーマの変化にも注目を
さらに、1970年代に入ると本格的に絵本に取り組む出版社が増えて、ことばのない絵本や大人向けのものなど、これまでの絵本の枠組みを超えた表現が多く誕生するようになる。いわむらかずお作の10ぴき兄弟と両親、祖父母によるねずみの大家族のお話「14ひき」のシリーズは、1983年に始まった人気のシリーズ。
その後も多彩な手法の絵本が多く生まれているけれど、21世紀に入ると同時多発テロや東日本大震災などもあり、平和や命の問題、心の絆などがテーマになることも増えたという。時代ごとに変化する絵本の表現やモチーフを見ながら、子どもの歴史に思いを馳せるのもいいかも。
来年、生誕100年を迎えるいわさきちひろの歩みをたどる企画展も
同時開催の「ちひろの歩み」では、いわさきちひろの人生と画業の歩みを、数々の作品や資料からたどる。
また、2018年には、いわさきちひろ生誕100年を記念して、ちひろ美術館・東京と長野県北安曇郡にある安曇野ちひろ美術館で、「Life(ライフ)展」を開催。アート、写真、ファッション、建築などさまざまな分野で活躍する作家とコラボレートして、いわさきちひろの新しい世界を広げる。Life は生命や人生や生活などを現していて、ちひろが大切に描いてきたいのちそのものを意味しているのだとか。かわいらしい子どもの絵を通して、誰よりも平和を守りたいと願ったちひろの、優しさと強さを再認識できる機会になるはず。こちらも合わせてチェックして。
イベントDATA
- イベント名
- 〈開館40周年記念 Ⅳ〉日本の絵本 100年の歩み
- 開催場所
- 東京都練馬区下石神井4-7-2 ちひろ美術館・東京
- 開催日程
- 2017年11月8日(水)~2018年1月31日(水)
- 開催時間
- 10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
- アクセス
- 西武新宿線「上井草駅」より徒歩7分
- 休館日
- 月曜日(祝休日は開館、翌平日休館)、年末年始(12/28~1/1)、冬期休館(2/1~2/28)
- 入館料
- 大人800円、高校生以下無料
- 問い合わせ
- 03-3995-0612(代表)
- 撮影
- 中川敦玲(外観画像)
- ホームページ
- ちひろ美術館・東京 HP
WRITING/NAOKO YOSHIDA (はちどり)