市場を席巻するシャインマスカットのように、愛されるヒット品種を探し求めて全国各地を訪ね歩いた本連載。最終回の主役は、ぷりっとした歯ざわりで舌の上でとろける小さな魚、シラウオ。「日本でいちばんおいしいシラウオが誕生した」といううわさを聞きつけて、全国有数のシラウオ産地である霞ヶ浦を訪ねました。
獲れたての透明感と鮮度を実現!
霞ヶ浦の至宝「暁のしらうお」
霞ヶ浦の東岸に位置する茨城県行方市〈なめがたし〉。12月半ば、夜が明けたばかりの小さな漁港に一隻の漁船が戻ってきました。
船上のカゴの中身は、朝日に白くきらめくシラウオ。それとは別に、小さなカゴには水晶のように透き通った魚が入っています。2024 年秋に誕生した新ブランド「霞ヶ浦 暁〈あかつき〉のしらうお」です。
「種類としては同じ魚で、同時に獲ったもの。約100キロの水揚げのうち『暁のしらうお』として出せるのは3キロほど」
そう話す皆藤勝〈かいとうまさる〉さんは、「暁のしらうお」を生産するための特別な技術を持つ3人の漁師のひとり。鮮度を極めるために長年努力してきたと自負する皆藤さんでさえ、その透明感と食感に衝撃を受けたと言います。生きている間は透明でも漁獲直後から白くなり始める、シラウオ=白い魚というのが常識だったからです。
「暁のしらうお」は茨城県と霞ヶ浦漁業協同組合が共同研究で開発した技術を用いることで、従来にない高鮮度を実現。「詳細は企業秘密」と皆藤さんは笑いますが、船上で生臭さの原因を取り除くなどの処理を施した後に、獲れたての鮮度を保ったままパッケージングして瞬間冷凍しているそう。
解凍後も透明感は変わらず、食感はぷりぷりのコリコリ。通常の冷凍シラウオと食べ比べると生臭さも水っぽさもなく、うまみと風味がむしろ濃厚。爽やかな香りが鼻に抜け、持ち味のほのかな苦みが後を引きます。
「シラウオのイメージを変える存在。一度食べてもらえたらわかるはず」と皆藤さん。
短時間・少量漁獲を守る「暁のしらうお」を選ぶことは、水産資源保護や漁業の未来にもつながります。皆藤さんの言葉に偽りなし。まずは一度ご賞味を。
PICK UP! >> 霞ヶ浦 暁のしらうお
茨城県と霞ヶ浦漁業協同組合が共同研究で開発した品質保持技術を守って生産した高鮮度・高品質シラウオ。
獲れたての透明感と食感を生食で楽しめる。漁期は魚が大きく育つ晩秋~冬のみ、鮮度維持のため網引きの時間を30分以内に限定している。
シラウオ漁が伝統的に未明から早朝にかけて漁に出ることから「夜明けの太陽=新しいブランドの幕開け」をイメージして名付けられた。
1パック100g1200円(税別、送料別)、購入は霞ヶ浦漁協のウェブサイトから。
名称/霞ヶ浦 暁のしらうお
生産地/茨城県
出荷開始/2024年11月
【取材ノート】
左が従来の冷凍シラウオを解凍したもの、右が「暁のしらうお」を解凍したもの。透明感の違いは一目瞭然。実際に食べてみても、「暁のしらうお」のぷりぷりとした食感と清らかな味わいは際立っていた。生臭さは一切なく、口の中で甘くとろけたあとにシラウオ独特の爽やかな苦みが抜けて、もうひと口、あとひと口、と食べ続けてしまった。
PHOTO/KATSUMI SATO WRITING: TOMOMI FUKUDA
※メトロミニッツ2025年2月号「今日もどこかで第2のシャインマスカットが生まれている。」に加筆して転載