秋田県、横手市、お米、新米、サキホコレ、新品種

米どころ秋田の最高傑作「サキホコレ」~注目の新品種はこうして誕生した。No.008

更新日:2023/10/20

「10年に一度の逸材」と呼ばれ、瞬く間に市場を席巻した人気のぶどう、シャインマスカットのように、末永く愛されるヒット品種を―。次世代のスターを生み出そうと奮闘する、日本の農林水産の舞台裏を訪ねます。米どころ秋田県が、名品あきたこまちに続く、新たなフラッグシップとして世に送り出した「サキホコレ」。その気候風土、培われた技術と知恵、生産者の熱意が生んだ最高傑作です。

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サキホコレが育つ水田(2023年9月上旬に秋田県横手市で撮影)

ひと口食べたら笑顔が咲き誇る
最高の秋田米「サキホコレ」

米どころ秋田県が徹底的に“おいしさ”を追求し、約12万株から選んだ大傑作と聞けば期待は膨らむばかり。秋田県横手市の米生産者、柴田康孝(しばたやすたか)さんは2年前、大きな期待に緊張しつつ「サキホコレ」の苗を植えたそうです。

その年の秋に初めて刈り入れて精米した炊きたての新米を、
「今まで食べたことのないおいしさだと思いました。つやつやして粒も大きくて、ほどよくやわらかいけれど適度な芯もある。甘くて風味もいい。うめぇやなぁ!って感激しましたよ」
と振り返ります。

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JA秋田ふるさと 稲作総合部会 部会長で、「サキホコレマイスター」の柴田康孝さん

秋田米の代表といえば全国的に知名度も高く、強い人気を誇る「あきたこまち」。食べ飽きることのない、優秀なお米です。

そのあきたこまちの登場から36年後に誕生したサキホコレは、開発時になによりこだわった“おいしさ”を守るために、県内でも気象条件などが適した地域に栽培を限定。登録制度により高い技術を持つ生産者のみが栽培に携わることができ、厳格な出荷基準も設けられています。

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精米したサキホコレ。色が白くてひと粒ひと粒が大きい

こうしたサキホコレの栽培において、「サキホコレマイスター」として横手市内はもちろん、県内の生産者を先導する立場にいる柴田さん。あきたこまちに続く“新しい赤ちゃん”を一丸となって大切に育て、広めていきたいと意気込みます。

「お米は毎日同じ銘柄を食べているうちに感動が薄れていくんです。だから、あきたこまちが普段のお米としたら、月に数回でいいから、ひとつ上のお米としてサキホコレを食べてみてください。お米って、やっぱりうめぇやなぁ! と思うはずです」

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PICK UP! >> サキホコレ

秋田県が「コシヒカリを超える極良食味品種」をコンセプトに、9年の歳月をかけて開発したお米「サキホコレ」。秋田米の代名詞として全国で愛されている「あきたこまち」(1984年に登場)に続くフラグシップとして、2022年に全国デビューを飾った。

炊きあげたときの際立つ白さとつや、ふっくらとした粒感とほどよい粘り、香りは上品で、噛むほどに甘みと風味が広がる。まさに秋田米の最上位品種というべきおいしさが特長。

品種としての魅力を安定して発揮できるよう、秋田県内でも気象条件などが適した作付推奨地域に栽培を限定。また、高い技術をもつ生産者のみが栽培することができるように生産団体登録制度を設定。さらに、厳しい品質・出荷基準を設けて高品質なお米のみが出荷される体制を維持しているほか、農薬の使用成分回数を慣行農法の半分以下に削減するなど安全・安心や環境にも配慮がなされている。

25万件超の応募があった一般公募を経て決定した「サキホコレ」の名前。そこには「秋田の地力」から生まれた「小さなひと株」が誇らしげに咲き広がって、日本の食卓を幸せにしてほしい、という想いが込められている。

SPECIFICATION

品種/サキホコレ
育成地/秋田県
登録出願/2020年
交配/中部132号 × 秋田97号(つぶぞろい)

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2023年のサキホコレの新米は、10月21日(土)から、東京・高輪にある秋田県アンテナショップ『あきた美彩館』(東京都港区高輪4-10-8 ウィング高輪WEST-Ⅲ 1F)をはじめとして、全国のスーパーマーケットや小売店で販売開始予定。

販売・提供店やキャンペーン情報など詳しくはサキホコレ公式サイトでご確認を!

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【取材ノート】
サキホコレが育つ柴田康孝さんの水田。力強く伸びる稲茎とたわわに実って頭(こうべ)を垂れる稲穂の美しさに目をみはった。

ここ、秋田県横手市は県内最大の平地である横手盆地に位置し、夏の日照時間が長くて寒暖差の大きい気候と、市内を流れる雄物川(おものがわ)水系がもたらす豊かな水、肥沃な土壌という、米作りに適した環境が整っている。豪雪地帯でもあり、厳しい冬に降り積もる雪は、春先に清冽な雪どけ水となって田んぼを満たしてくれる。

おいしい秋田米は、こうした恵まれた「地力」と、柴田さんをはじめとする熱意と生産技術を兼ね備えた生産者の存在あっての賜物(たまもの)。

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【取材ノート】
猛暑や台風など、天候に左右されることも多い米づくりの気苦労をユーモアたっぷりに話してくれた柴田さん。

柴田さんは「サキホコレマイスター」として、サキホコレを栽培しながら気がついた点や工夫するとよい点を率先して見つけて、県内の生産者を指導し、引っ張っていく立場にある。育苗期の温度管理など新しい品種ならではの発見や試行錯誤もあるそう。そのサキホコレのことを愛おしそうに“新しい赤ちゃん”と呼ぶ柴田さんの姿に、秋田の米農家さんがいかに大切にお米を育てているかを感じた。

取材の終盤に、柴田さんにサキホコレに合うメシの供を尋ねたところ、「なにもいらない。それだけでうまい」という答えが即座に返ってきた。

PHOTO/YUJI IMAI
※メトロミニッツ2023年11月号「今日もどこかで第2のシャインマスカットが生まれている。」に加筆して転載

※記事は2023年10月20日(金)時点の情報です。内容については、予告なく変更になる可能性があります